自己破産直前に生命保険の解約返戻金を受取るのはNG?

自己破産の申立をすると、解約返戻金のある生命保険については、原則として裁判所(破産管財人)が解約し、その解約返戻金は債権者に分配(配当)されることになるのが通常です。

これは、解約返戻金はその生命保険を契約している本人が確実に払い戻しを受けることができるものであり、その保険の契約者本人の固有の財産(資産)と呼べるものだからです。

≫ 自己破産で生命保険の解約返戻金はどうなるの?

自己破産の申立をする人の資産(財産)については、すべて裁判所が取り上げて売却し、お金に換えてから債権者に分配されるのが基本的な取り扱いとなっていますから、生命保険の解約返戻金についても同様に取り上げられて、債権者に分配(配当)されることになるのです。

破産申立直前の生命保険の解約は無意味

ところで、自称「コンサルタント」と名乗っていたり、弁護士もしくは司法書士の資格を持っていない「○○士」の開設しているウェブサイトの中には、このようにして財産が取り上げられることを防ぐため、自己破産の申立直前に生命保険を解約して解約返戻金を現金化しておくように指南しているものが散見されます。

自己破産の手続きでは現金は最高で99万円まで自由財産として保有することが認められていますから、『現金化すれば、それは「解約返戻金」ではなく、ただの「現金」だから取り上げられない』という理屈なのでしょうが、本当に自己破産の申立直前に生命保険を解約して解約返戻金を現金化すれば裁判所に取り上げられないのでしょうか?

答えは×です。NGです。

自己破産の申立直前に解約して解約返戻金を現金化したところで、裁判所(破産管財人)が取り上げると決めれば取り上げられます。

 

自己破産を申立する場合には、現在契約している生命保険だけでなく過去に解約した生命保険についても裁判所に報告する義務があります。

そして、過去に解約された生命保険については、その生命保険にいくら解約返戻金があったのか、その受け取った解約返戻金は「いつ」「何に」使ったのかというところを裁判所から詳細に調査されることになります。

仮に過去に解約した生命保険を隠そうとしても、裁判所や破産管財人の調査によって確実にバレますし、そもそもそのような隠ぺい工作は詐欺破産罪(破産法265条1項)や説明義務違反(破産法268条)という立派な犯罪行為となり逮捕される危険もあるのでするべきではないでしょう。

また、裁判所の調査によって申立の直前に生命保険を解約し解約返戻金を受け取っていることが判明した場合は、裁判所はそれを純粋な「現金」として取り扱うことはありません。

その直前の解約がなければ、「解約返戻金」として債権者に分配することができたと考えられますから、裁判所は解約して受け取った解約返戻金を「現金」ではなく「解約返戻金」とみなして手続きを進めます。

裁判所(破産管財人)に「解約返戻金」とみなされる場合は、たとえ自己破産の直前に保険を解約して解約返戻金を現金化したとしても、裁判所(破産管財人)がその現金化された解約返戻金を取り上げて、債権者に分配(配当)することになります。

この場合、受け取った解約返戻金をすでに使ってしまっている場合には、その受け取った解約返戻金と同額の金額を積み立てさせることになります。

例えば、自己破産の申立の直前に解約返戻金が30万円になる生命保険を解約し、その受け取った解約返戻金のうち20万円をすでに使ってしまっている場合には、裁判所(破産管財人)から、その使ってしまった20万円を積み立てるよう指示が出されることになり、30万円を用意できた時点でそれを取り上げて債権者に分配することになります。

 

このように、たとえ直前に保険を解約して解約返戻金を現金化しても、裁判所や破産管財人が「現金」ではなく「解約返戻金」とみなす場合には、その解約返戻金は取り上げられることになります。

そのため、自己破産の申立直前に保険を解約して解約返戻金を現金化する行為は、まったく意味がない行為ともいえるでしょう。

 

資産(財産)を現金化する行為は、散逸する可能性を高める行為となりますので、裁判所や破産管財人も厳しくチェックしています。

なにより、申立直前に解約返戻金を受け取ってしまうことは、本来債権者に配当するべき財産を不当に棄損したと判断される恐れがあり、裁判官や破産管財人の心証を悪くしますので絶対にするべきではないのです。

※資産は、「現金(紙幣や硬貨)」の状態にあればすぐに費消することができますので、「物」や「債権」の状態にあるよりも「現金」の状態にある方が散逸しやすくなるといえます。

保険の解約返戻金についても同様で、それが「解約返戻金」の状態にあるよりも、解約して「現金」にしてしまう方が散逸の可能性が高くなることになります。

そのため解約返戻金が「現金化」されてしまうと、たとえそれを1円も使っていなかったとしても、「散逸しにくい解約返戻金という資産」から「散逸しやすい現金という資産」に「換えてしまった」という点が裁判官や破産管財人の心情を悪くしてしまいますから、その意味でも自己破産の申立直前の解約返戻金の現金化はするべきではないといえます。

そもそも、解約返戻金を取り上げられたくない場合には、「自由財産の拡張」という手続きを取ることもできるのですから、このような姑息な手段をとらなくても解約返戻金を取り上げられないようにすることは可能です。

≫ 自由財産と自由財産の拡張制度とは

≫ 自由財産の拡張の方法 – 自由財産拡張申立書と上申書の記載例

なので、どうしても取り上げられたくない解約返戻金や、解約されたくない生命保険がある場合には、申立直前に解約したりするのではなく、自由財産の拡張手続きを利用するようにしてください。

 


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