自己破産とは?

借金の解決手続きは次の4つにわけられます。

1.任意整理・・・任意整理とは?
2.特定調停・・・特定調停とは?
3.個人再生・・・個人再生とは?
4.自己破産

しかし、一般の人にとっては任意整理や特定調停、個人再生や自己破産の手続きが具体的にどのような手続きであり、どのようなメリットやデメリットがあるのかといった点は非常に分かり難いのではないかと思われます。

そこでここでは、この4つのうち「自己破産」の手続きについて詳細に説明してみることにいたしましょう。

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自己破産手続きの概要

自己破産は、裁判所に申立を行うことで借金全額の免除が受けられる裁判上の手続きです。

借金が100万円であろうと、1億円であろうと、裁判所で自己破産の手続きが認められれば(自己破産の申立が認められることを「免責」といいます)、一切の借金を返済する必要が無くなります。

※自己破産すると借金がチャラになる(ゼロになる)とよく言われますが、正確には(法理論的には)借金が消えてなくなるわけではありません。

自己破産の免責が認められた場合であっても借金自体は永遠に残り続けます。

少し小難しい話になりますが、自己破産の免責という手続きは、債権者(お金を貸している方)が法的に「お金を返せ」と言えなくなるということ、裏返せば債務者(お金を借りている方)のお金を返さなければならないという「責任」が「免除」されるということ(だから自己破産で借金が免除されることを「免責」といいます)にすぎませんので、自己破産したあとでも返したかったら返してもいいということになります(実際にそうする人はいないと思いますが・・・)。

ただし、無条件に借金の返済が免除されるものではなく、自己破産の申し立てをすると申し立てをした人の財産は全て裁判所の管理下に置かれることになり、資産価値のあるもの(土地や建物、自動車や貴金属など)は売却されてそのお金が債権者(お金を貸している方)に分配されることになります。

 

自己破産のメリット

借金全額の返済が免除される

自己破産の最大のメリットは、借金の全額の返済が免除されることにあります。

任意整理や特定調停では基本的に借金の元本全額、個人再生では借金総額の5分の1を返済する必要がありますが、自己破産が認められれば借金の全額の返済が免除されることになります。

自己破産のデメリット

自宅などの不動産は基本的に売却させられる

自宅などの不動産(土地や建物)などを所有している場合は、基本的に取り上げられることになります。

ただし、全ての不動産が取り上げられるわけではなく、古い建物や田舎の土地など資産的な価値がないような場合には、取り上げられないこともあります。

その土地や建物に資産的な価値があるかどうかは、最終的に裁判所(裁判官)の判断となります。

なお、土地や建物の資産価値は市役所の固定資産税課で発行される「固定資産評価証明書」に記載されていますので、市役所で調べてみても良いでしょう(手数料は1,000円ほど・実際の資産価値は固定資産評価証明書に記載されている金額の1.3倍程度と考えてください)。

住宅ローンは継続できない

個人再生手続きの場合は「住宅ローン特則」というものを使えば住宅ローンの返済を継続することが出来ますが、自己破産手続きに「住宅ローン特則」はありません。

住宅ローンを支払っている人が自己破産の申立てをした場合、住宅ローンの貸付をしている銀行(保証会社)などがその住宅(土地と建物)を売却し、住宅ローンの残額から売却した際の代金を差し引きます。その差し引いた残額が借金の残額となり、自己破産が認められれば残りの住宅ローンの全額の返済が免除されることになります。

住宅は売却されることになりますから当然、そこに住むことはできませんので、引っ越し先を探す必要があります。

ギャンブルや浪費の場合、免責が受けられない可能性がある

自己破産手続きには、「免責不許可事由」というものがあり、借り入れの原因がギャンブルや浪費の場合には、原則として借金の免除(免責)が受けられません。

「原則として」というのは、これとは別に「裁量免責制度」というものがあって、「免責不許可事由」がある場合であっても、裁判官の「裁量」で認められる場合があるためです。

ギャンブルや浪費は「免責不許可事由」に該当するので基本的には自己破産NGなのですが、そうはいっても返せないものは返せないという場合もあるわけで、そういう場合は裁判官の判断で特別に「免責」として差し支えないことになっているわけです。

もっとも、「裁量免責」が認められるためには裁判所で非常に厳しい審査がなされますので注意が必要です。

一定の職業に就けない資格制限がある

自己破産をした人は一定の期間、生命保険の外交員(販売員)や警備員など他人の財産を扱うような職業に就くことが出来ません。

「一定の期間」とは、「自己破産の開始決定がなされ、自己破産の免責許可決定が確定するまで」の期間を指します。

自己破産の申し立てを行うと、裁判所が申立書のチェックを行い、問題がなければ「破産開始決定」を出します。

「破産開始決定」が出された時から、申立した人は「破産者」となりますので、警備員や生命保険の外交員など一定の職業に就くことが出来なくなります。

その後、裁判所が破産者(自己破産の申し立てをした人)の借金や資産を調べ、資産があれば売却して債権者(お金を貸している人)に分配します。

裁判所が、もう調べるものはないと判断すると破産手続きを終了させる「破産廃止決定」が出され、借金の免除も認めて差し支えないと判断すると「免責許可決定」が出されます。

「免責許可決定」には異議申立期間(お金を貸した人がその免責はおかしいんじゃないの?と文句を言える期間)が設けられていますので、1か月後に「確定」するまでは「破産者」の状態です。

「免責許可決定」が出されて1か月経過すると、免責が「確定」し破産手続きはすべて終了します。

申し立てをした人も「破産者」ではなく「一般の人」に戻るので、それ以降は資格制限はなくなり、警備員や生命保険の外交員の職にも就くことが出来るようになります。

信用情報機関に事故情報として登録される

裁判所に自己破産を申し立てると、信用情報機関に事故情報(「この人は自己破産してますから今後お金を貸すのは注意した方がいいですよ」という情報)が通知されます(昔でいうところのブラックリスト)。

自己破産の登録機関は5年となっていますので、自己破産の手続きが終了して5年間はローンを組んだりクレジットカードを作ったりするのはできないと思った方がよいでしょう。

登録内容と登録期間|日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関

ただし、自己破産を申し立てる場合は既に返済が遅れているのが通常と思われますので、借金の返済が滞った時点で既に信用情報機関に事故情報の通知が行われていますからこの点はあまり気にすることもないでしょう。

官報に住所と名前が掲載される

自己破産の申立を行うと「官報」という国が発行する冊子のようなものに住所と名前が掲載されます。

官報は日本全国で販売されており(※官報販売所や官公庁などの売店で買えます。図書館にも置かれています)、自己破産していることは日本国中に公開されることになります。

ちなみに、官報はインターネットでも無料で閲覧することが出来ます。

インターネット版官報

もっとも、官報を毎号チェックしている人はほとんどいませんから、自分の知り合いに知られることはほぼ100%ないでしょう。

ただし、住所と名前が記載されるため、悪質な業者などが官報に記載されている住所にダイレクトメールなどを送ってくる可能性があるので注意が必要です(送られてくるダイレクトメールは無視しておけば問題ありません)。

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