自営業者の自己破産で仕掛かり中の仕事がある場合の対処法

自営業者が自己破産する場合には、すでに受けてしまった仕事をどのように処理していけばよいのでしょうか?

会社(法人)が破産(倒産)する場合には「破産=会社の清算」という意味合いもありますから、仕掛かり中の仕事がある場合には、自己破産の手続きが決まった段階で即座に取りやめるのが原則です。

しかし、自営業者である「個人」が自己破産を行う場合には「破産=人生の清算」とはなりませんし、仕事は日々の生活費を得る手段にもなっていますから、即座に仕掛中の仕事を取り止めてしまっては、収入の道を断たれることになってしまい不都合が生じてしまいます。

そこで今回は、自営業者が自己破産を行う場合、仕掛中の仕事はどのようにすればよいのか、という点について考えてみることにいたしましょう。

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自営業者が自己破産する場合、仕掛かり中の仕事は「原則として」そのまま継続しても問題ない

自営業者が自己破産する場合において、仕掛かり中の仕事が残っている場合には、「基本的に」そのまま継続して仕掛中の仕事を行っても問題ありません。

自営業者にとって仕事は日々の生活費を稼ぐ手段でもありますから、これを直ちに取り止めてしまっては、生活費に事欠くようになってしまう恐れがありますので、そのまま継続しても問題ないでしょう。

また、自己破産することになった時点で即座に継続中の仕事を停止してしまっては、仕事を発注をした側から契約違反や損害賠償請求をされたりされる可能性も生じます。

そうなってしまうと、仕掛中の仕事を停止したために負債を増大させてしまうということにもなりかねませんので、自己破産をすることにったら即座に仕掛中の仕事を取り止めなければならないということにはならないと考えられます。

ただし、これらはあくまでも「原則として」ということであり、すべての自営業者が自己破産に際して仕掛中の仕事を継続して行ってもよいというわけではありません。

たとえば、仕掛中の仕事の継続に多大な仕入れ費用や高額な経費が必要となる場合には、自己破産を行うに際して直ちに仕掛中の仕事を取り止めなければならないこともありますので注意が必要です。

 

材料の仕入れに多大な出費が必要となる場合

前述したように、自営業者が自己破産を行う場合であっても、直ちに仕掛中の仕事を取り止めなければならないわけではありません。

しかし、仕掛中の仕事について、高額な材料費を購入しなければならなかったり、その仕掛中の仕事の処理に多大な費用を必要とする場合には、自己破産をすることが決まった時点で仕掛中の仕事を取り止めなければならないと思われます。

たとえば、大工さんが建築途中の家を完成させるため高額な材木を大量に購入しなければならない場合や、農家の人が大量の苗木や肥料を購入しなければならない場合などが例として挙げられるでしょう。

これらの大工さんや農家の人が自己破産する場合、その仕掛中の仕事を完遂させるためには、それらの材料などを購入することが必須の条件となっていると考えられます。

しかし、それらの材料を購入することは、現時点で所有する自分の現金(資産)を取り崩してしまうことになりますから、自己の所有する「資産」を目減りさせてしまうことにつながってしまいます。

自己破産の手続きは、自己破産の申し立てを行う人(自己破産の申立人)の借金の返済を免除してあげる代わりに、その所有する資産をすべて取り上げて債権者(お金を貸している人)に分配するという手続きです。

そのため、もし仮に自己破産の申し立て直前に自分の所有する資産(財産)を目減りさせるような行為があった場合には、「債権者を害する行為」として自己破産の手続き上で不利益な取り扱い(免責の不許可※自己破産を申し立てても借金の免除が受けられないこと)を受けてしまう可能性もあるでしょう。

よって、このような高額な材料費や経費の掛かる仕掛中の仕事が残っている自営業者が自己破産をする場合には、自己破産の申し立てに際してその仕掛中の仕事を中止(停止・取り止め)することが必要になると考えられます。

どれぐらいの材料費や経費が「高額」と判断されるのかはケースバイケースですが、10万円以上の支出については、自己破産の手続き上で裁判所(裁判官)から「何を購入したのか」「その購入費用は妥当な値段なのか」「その購入した商品は現在どこにあるのか」など、詳細に調査されますので、おおよそ「10万円」以上するような材料費や経費が必要となる仕掛中の仕事についてはいったん中止して自己破産の申し立てをしてから裁判所にお伺いを立てて継続か取り止めかを判断する方が妥当と思われます。

もっとも、仕掛中の仕事を継続してよいかどうかは、非常にデリケートな問題であり、法律的にも、自己破産の手続き上でもかなり難しい判断が必要となるものと言えますから、自己破産を依頼する弁護士や司法書士とよく打ち合わせをして継続か取り止めかの判断をすることが肝要となるでしょう。

≫ 弁護士と司法書士、自己破産を依頼するならどちらがいいの?

 

なお、自営業者が自己破産する場合に在庫の商品をどのようにすべきかという点についてはこちらのページを参考にしてください。

≫ 自営業者の自己破産で在庫の商品がある場合の対処法

 


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