資産目録の作成手順(17)管財人が回収可能な財産の記載方法

東京地裁で使用されている自己破産申立書の資産目録の最後には「その他、破産管財人の調査によっては回収が可能となる財産」を記載する欄が設けられています。

自己破産申立書の資産目録の記載方法については「資産目録の作成手順」の「(1)~(16)」に記載してきたとおりですが、これらの項目に当てはまらないような資産がある場合には、この「その他、破産管財人の調査によっては回収が可能となる財産」の欄に記載することになります。

そこで、ここでは「その他、破産管財人の調査によっては回収が可能となる財産」の欄の記載方法(書き方)について考えてみることにいたしましょう。

なお、自己破産申立書の作成方法についてはこちらの目次ページから必要な書類のページに移動してご確認をお願いします。

自己破産申立書作成マニュアル(目次)

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「破産管財人の調査によっては回収が可能となる財産」とは?

敷金や過払い金など

「破産管財人の調査によっては回収が可能となる財産」とは、具体的にはマンションを借りたときに支払った敷金や、利息の再計算で発生する過払い金などが該当します。

福岡地裁などで使用されている申立書(資産説明書)では、敷金や過払い金は「貸金、保証・名義貸しによる求償金、敷金、損害金及び過払金等の請求権」の欄に記載すればよかったですが、東京地裁の申立書(資産目録)では敷金や過払い金は「貸付金、売掛金等」の欄ではなく、「その他、破産管財人の調査によっては回収が可能となる財産」の欄に記載することになっています。

資産目録(説明書)の作成手順(7)貸金・求償金の欄の記載方法

このように、裁判所によっては「その他、破産管財人の調査によっては回収が可能となる財産」の欄が存在しない場合もありますので注意してください。

nanakoや楽天Edy、イオンのWAONなどの電子マネー

nanakoやEdy、WAONなどの電子マネーはクレジットカードやスマホなどの携帯端末にお金をチャージ(入金)して、買い物の時などにそのカードや端末をかざして現金を使わずに買い物ができるシステムになっています。

このような電子マネーについては、自分のお金をその電子マネーの運営会社に事前に預けておき、買い物をするたびにその商品の価格に対応する自分のお金を電子マネー会社から引き出すという行為を行っていることになります。

そして、電子マネーをチャージすると、電子マネーの運営会社に対して「チャージしたお金を後日引き出すことが出来る」という請求権を持つことになります。

このような請求権は電子マネーの運営会社に対して「お金を払え」という権利となりますから、資産(財産)となります。

そのため、自己破産する場合に電子マネーをチャージしている場合には、資産として申立書(資産目録)に記載しなければなりません。

東京地裁では、この電子マネーについては「その他、破産管財人の調査によっては回収が可能となる財産」の欄に記載しておけばよいでしょう。

 

「破産管財人の否認権行使によって回収可能な財産」とは?

後述する「その他、破産管財人の調査によっては回収が可能となる財産」の欄の様式を見てもわかるように、「破産管財人の否認権行使によって回収可能な財産」も記載する必要があります。

この「破産管財人の否認権行使によって回収可能な財産」とはどのような財産が該当するのでしょうか。

まず、破産管財人とは裁判所から選任される破産手続きを調査する人のことを言います。

通常は弁護士が破産管財人として選任されますが、破産管財人は、その申立された自己破産に不正な事柄がないか、財産はいくらあるか、などを調査し、財産が有れば売却してお金に換えて債権者に分配したりします。

この破産管財人が財産の調査をする際に、自己破産の申立前に債権者を害するような財産の処分をしたことを見つけた場合には、その処分行為を取り消すことが出来ます。

これを「破産管財人が否認権を行使する(自己破産する人がした行為を否認する権利を破産管財人が行使するということ)」といいます。

具体的な例を挙げると

例えば、時価300万円相当の盆栽一鉢を所有しているXが平成26年1月1日に死亡し、その妻Y・長男A・長女Bの3人が相続人になっているとします。

その後、相続人であるY・A・Bの3人は平成26年2月1日に遺産分割協議を行い、300万円相当の盆栽は長女であるBが相続すると決めました。

そして、平成26年3月1日にAは東京地方裁判所に自己破産の申し立てを行います。

このような事例では、Aは共有状態となっていた300万円の盆栽を持分3分の1の割合で所有していたにもかかわらず、遺産分割協議によってその盆栽の所有権がBとなることを認めており、これは、Aが100万円の財産をBに贈与したということと同じ状態になります。

そうなると、債権者としては「何で遺産分割協議で、盆栽の所有権がBとなることに承諾したんだよ。盆栽を売却して売却代金から100万円を受け取っていれば、その100万円を債権者に分配して借金の一部に充当できたじゃねーかよ」とその遺産分割協議に文句を付けたくなるでしょう。

そのため、このような場合には自己破産の手続きで選任された破産管財人が「その遺産分割協議は問題があるから取り消しますよ」といって遺産分割協議をやり直すことが出来ます(これを破産管財人の否認権行使と言います)。

Y・A・Bの間で行われた遺産分割協議を「否認」する「権利」を行使して、破産管財人とYとBの三者間で遺産分割協議をやり直すわけです。

そうして、やり直した遺産分割協議の中で、Aが100万円以上の取り分が採れるような話し合いをすることになります(たとえば、盆栽はBが相続するけれどもBがAに100万円を支払うとか、盆栽は300万円で売却しY・A・Bがそれぞれ100万円ずつ受け取るとか)。

このように、自己破産の申し立てをした人が行った財産の処分行為をやり直す権利を行使することが出来る財産のことを「破産管財人の否認権行使によって回収可能な財産」といい、そのような財産がある場合は全て資産目録に記載しなければならないことになっています。

 

「その他、破産管財人の調査によっては回収が可能となる財産」の欄の様式

ここでは、東京地裁で使用されている資産目録の「その他、破産管財人の調査によっては回収が可能となる財産」の欄の様式を参考として挙げておきましょう。

● その他、破産管財人の調査によっては回収が可能となる財産
*相手方の名前、金額及び時期などを記載します。
*現存していなくても回収可能な財産は、同時破産廃止の要件の認定資料になります。
*債務者又は申立代理人によって回収可能な財産のみならず、破産管財人の否認権行使によって回収可能な財産も破産財団となります。
*ほかの項目に該当しない財産(敷金、過払金、保証金など)もここに記入します。

相手方金額時期 備考 
~  円 年 月 日
~  円 年 月 日

 

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