2回目の自己破産でも免責は認められるか?

自己破産の申し立てが裁判所によって認められると、借金の返済が免除されることになります(これを免責といいます)。

しかし、借金の返済が免除されるということは、お金を貸している債権者にとっては「貸したお金が返ってこない」ことを意味しますので、その損害は計り知れないものがあるといえます。

そのため、裁判所においては厳しい審査が行われますし、自己破産をしなければならなくなった原因を深く反省しなければ、自己破産の”免責”は認められないことになっているのです。

そこで気になるのは、「2回目の自己破産が認められるか」という問題です。

最初の自己破産の際には「二度と同じ過ちを繰り返しません」と誓って免責を受けているにもかかわらず再度自己破産が認められるとすれば、多大な損失を受けながら免責を受け入れた債権者に説明が付きません。

また、2回目、3回目の自己破産を安易に認めてしまえば、モラルハザード(倫理観の欠如)になりかねず、ひいては無謀な借金を蔓延させ、国民経済が破たんするような事態にも繋がりかねないでしょう。

しかし、同じ失敗を繰り返してしまう人は少なからずいるでしょうし、返せないほどの借金を作ってしまった人を救済せずにそのまま放置したのでは、何の解決にもなりませんから、2回目3回目の自己破産を認めてあげることも必要性がないとは言い切れない一面もあるはずです。

そこで今回は、一度自己破産を経験した人が再度自己破産することができるのか、という問題について考えてみることにいたしましょう。

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2回目以上の自己破産をすることは基本的に問題ない

結論からいうと、2回目、3回目といったように複数回自己破産の申立をすることも認められています。

一度自己破産が認められたからと言って、2回目以降の自己破産を制限するような法律は存在しませんから、一度自己破産を経験した人であっても何回でも自己破産の申立を行うことは可能です。

ただし、注意しなければならないのは、前回の自己破産が認められた日から7年が経過しない間は、基本的に自己破産の申立ができないという点です(破産法252条1項10号イ)。

”基本的に”と書いたのは、自己破産をしてから7年以内であっても例外的に再度の自己破産が認められる場合があるためです。

そこで、1回目の自己破産から7年が経過する前と後でどのような違いがあるか、順に説明して行くことにいたしましょう。

 

前回の自己破産から7年以上が経過している場合

一度自己破産の免責が認められた場合であっても、その免責が認められた日から7年が経過していれば、再度自己破産の申立をすることは可能です。

破産法という自己破産の手続きを規定した法律には「免責を受けた日から7年以内に免責許可の申立があったこと」が免責不許可事由として規定されていますから(破産法252条1項10号イ)、一度自己破産の申立をして免責が認められてから7年以内に再度自己破産の申立をした場合には、免責が不許可となってしまいます(免責が認められなくなる)。

これを逆に考えると、前回の自己破産から7年が経過していれば何度でも自己破産の申立をして免責を求めることができるということなので、前回の自己破産から7年が経過していれば、再度自己破産の申立をすることはできるということになります。

ただし、2回目、3回目といった複数回の自己破産の申立については裁判所のチェックも厳しくなることが通常です。

最初の自己破産の場合は破産管財人が選任されずに簡易な手続きで免責が求められることも多いですが、2回目以降の自己破産の場合には、まず確実に破産管財人が選任され、管財人による厳しい調査がなされるでしょう。

実際、私も過去に何件か2回目の自己破産の申立を処理しましたが、その全てにおいて管財人が就きましたし、管財人の調査も厳しく行われたように思います。

管財人が選されると自己破産の手続き費用とは別に管財人の報酬(最低でも20万円)を裁判所に納めなければなりませんから、費用の面でも2回目以降の自己破産は厳しくなるということもできるでしょう。

≫ 破産管財人が選任されると何がどうなるの?

以上のように、前回の自己破産から7年が経過していれば、2回目の自己破産をすることも可能と言えますが、裁判所の調査は1回目よりも格段に厳しくなると覚悟しておいた方がよいといえます。

もっとも、裁判所の調査は厳しくなりますが、2回目の自己破産の申立であっても、よほど不正な行為を行っていなければ自己破産の免責は認められますので、「2回目だから免責は受けられないのではないか」といった心配をする必要はないでしょう(※私が過去に処理した2回目の自己破産の案件も、全て免責をもらっています)。

 

前回の自己破産から7年が経過していない場合

自己破産の申し立てをして免責(借金の返済の免除)を受けてから7年が経過しない間は、再度自己破産の申し立てをしても免責を受けることは、”基本的に”できません。

なぜなら、前述したように破産法という自己破産の手続きを規定した法律に「免責を受けた日から7年以内に免責許可の申立があったこと」が免責不許可事由として規定されているからです(破産法252条1項10号イ)。

そのため、前回の自己破産から7年が経過する前に再度自己破産の申立をしたとしても、裁判所から「あなたは7年以内に自己破産をしているから免責は受けられませんよ」と言われて免責が不許可となってしまうのが通常です。

ただし、これには例外があり、「裁量免責」が認められれば、前回の自己破産から7年が経過しない場合であっても、自己破産の免責(借金の返済の免除)を受けられることが可能です。

 

前回の自己破産から7年が経過していなくても自己破産の免責が認められる「裁量免責」とは?

前述したように、前回の自己破産から7年が経過していない場合には、原則として再度自己破産の免責が認められることはありませんが、「裁量免責」が認められれば、前回の自己破産から7年が経過しない場合であっても、自己破産の免責(借金の返済の免除)を受けられることが可能です。

「裁量免責」とは裁判官の「裁量」で特別に免責を認めることができるという制度です(破産法252条2項)。

自己破産の申立をした人に免責不許可事由がある場合であっても、裁判官が「こいつは原則として免責にはできないけれども、いろいろ事情もあるようだから特別に免責にしてやるか」と判断すれば、裁判官の一存によって特別に免責を認めることが可能となります。

「裁量免責」は例外的な取扱いになりますので、全ての場合に免責が認められるわけではありませんが、自己破産をしなければならなくなった事情や、2回目の自己破産を余儀なくされた事情などを深く反省している姿勢を裁判官に見せることで、裁量免責を受けることも可能でしょう。

陳述書の作成手順(15)裁量免責事由を申告する欄の記載方法

 

以上のように、2回目の自己破産であっても、前回の自己破産から7年が経過している場合には申し立てを行うことは可能ですし、7年が経過する前であっても裁量免責が認められる場合もありますから、「1回自己破産しているからもうだめだ」と悲観する必要は全くありません。

大切なのは、自分がやってしまった過ちを真摯に受け止め深く反省することだと思いますので、もしも2回目3回目の自己破産が必要になった場合には、その点を誠実に考えながら裁判官や債権者に理解を求めることが必要となるでしょう。

≫ 自己破産することが出来ない人っているの?

 


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