陳述書の作成手順(15)裁量免責事由を申告する欄の記載方法

自己破産の手続は最終的に免責(借金の返済の免除を認めてもらうこと)を得るのが目的ですが、免責不許可事由(これをやると借金の免除が得られなくなるという事由)があると基本的に免責が不許可となってしまい借金の返済義務が免除されなくなります。

ただし、これには例外があって、もし免責不許可事由があったとしても、裁判所の判断で特別に免責を認めるという制度(裁量免責制度)が別に供えられています。

これは、免責不許可事由がある場合であっても、それがきわめて軽微なものであったり、免責不許可事由に該当する行為を行うについて同情の余地があったりする場合もあるので、そのような場合にまで一律に免責を認めないとするとあまりにも申立人にとって厳しすぎる処置となってしまう場合もあるからです。

そのため、自己破産の申立書には「免責不許可事由があるけれども裁量免責が受けられる事情もありますよ」と弁明を書くことが出きる欄が設けられているものがあります。

そこで、ここでは自己破産申立書の陳述書のうち「裁量免責事由があることを申告する欄の記載方法」について考えてみることにいたしましょう。

なお、自己破産申立書の作成方法についてはこちらの目次ページから必要な書類のページに移動してご確認をお願いします。

自己破産申立書作成マニュアル(目次)

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免責不許可事由とは

まず、借金の免除が認められなくなる「免責不許可事由」にどのようなものがあるか、ここでもう一度確認しておきましょう。

免責不許可事由には大きく分けて次の11種類があります(破産法252条1項)。

1 財産を隠したり壊したり、債権者に不利益な処分をしたこと
2 借金を返済できないと知りながらさらに借金を重ねたりすること
3 一部の債権者を特別扱いして返済すること
4 浪費やギャンブルなどをしたこと
5 自分の収入や住所などウソをついて借金をしたりしたこと
6 財産などに関する帳簿や書類などを隠したり偽造したりしたこと
7 ウソの債権者名簿(債権者一覧表)を裁判所に提出すること
8 裁判所の調査に対して説明を拒んだりウソを言ったりすること
9 破産管財人などの職務を妨害すること
10 7年以内に自己破産や個人再生の手続をしていること
11 破産管財人の調査に関し必要な説明をしなかったこと

これらの事由がある場合は自己破産の申し立てを行っても基本的に借金の返済の免除はなされません。

 

裁量免責事由とは

裁量免責とは、前述の免責不許可事由がある場合であっても例外的に裁判所の判断(裁量)で免責を許可する制度です。

破産法という法律には

「(免責不許可事由)のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続き開始決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可すること相当と認めるときは、免責許可の決定をすることが出来る(破産法252条2項)」

としか規定されていませんから、具体的に何が「裁量免責」となる「事由」になるのかは明文上は判然としません。

「破産手続き開始決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して」しか記されていませんので、「破産に至るまでの経緯」や「その他の事情」を自分の言葉で説明して「これこれこういう経緯があったので免責不許可事由に該当する行為をしてしまったのですけど、これこれこういう事情もあったのだから何とか見逃してもらえませんか?」ということを裁判官に理解してもらう必要があります。

 

「裁量免責事由があることを申告する欄」の様式

「 裁量免責事由があることを申告する欄」は各裁判所の申立書によってその様式に若干の違いがありますが、一般的には次のような様式になっています。

≪東京地裁の申立書の場合≫

問8 本件において免責不許可事由があるとされた場合、裁量免責事由として考えられるものを記載してください。

 

                   

≪大阪地裁の申立書の場合≫

7 上記1から6に記載した場合であっても、免責不許可事由に該当しない、又は裁量により免責されうる事情の有無。

 

                  

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