自己破産すると賃貸しているマンションやアパートはどうなるの?

(2)滞納している家賃が数十万円以上になる場合

滞納している家賃が、自己破産の準備期間に解消できない場合には、自己破産の手続きにその滞納分の家賃を「負債(借金)」として申し立てを行うのが通常です(※この場合、滞納分の家賃は免責によって支払う必要がなくなりますが、住んでいる賃貸物件は解約されて追い出されるのが通常です)。

しかし、このような場合であってもどうしても自己破産の手続きに含めたくないという場合には、「家主を債権者から除外する必要性」や「滞納家賃を支払い続ける必要性」を裁判所に説明して裁判所の理解を得てから自己破産の手続きから除外する必要があります。

裁判所への説明は、上申書を作成して行えばよいと思いますので、下記のような上申書を作成して裁判所に提出するようにしましょう。

自己破産の手続きで他の借金が免責(借金の返済が免除されること)されても解消できないほど家賃の滞納がある場合は別ですが、数か月で家賃の滞納が解消される程度であれば裁判所も問題にしませんので、どうしてもその家に住み続けたいというような場合には上申書を提出してみるのもよいと思います。

○○地方裁判所 破産係 御中

平成○年○月○日

上申書

上申書 破産太郎 ㊞

債権者から家主を除外していることについて

私は、本件自己破産の申立時点で居住しているアパートの家賃を6か月間分滞納しており、その滞納家賃の総額は金○○万円ほどになっております。

この滞納家賃については、家主の○○○○を債権者、滞納家賃の総額を債権額(債務額)として債権者一覧表に記載しなければならないところですが、仮にこの滞納家賃を自己破産の手続きに含めてしまうと、家主に自己破産することが知られてしまうとともに、賃貸借契約を解除され、居住している住宅を退去しなければならない可能性がございます。

そのため、債権者一覧表には、この滞納家賃に関する債務(債権)を記載することなく申立書を作成しております。

この滞納分の家賃につきましては、今後○か月間にすべて解消することができる予定にしておりますので、この滞納家賃については債務(債権者)として扱わずに手続きを進めてくださいますよう上申する次第です。

以上

もっとも、滞納家賃が高額になる場合には、自己破産の手続きに含めて免責(支払いの免除)を得た方が経済的に有利ですし、自己破産したからといって他の物件が借りられないということはありませんので、上記のような上申書を提出するかはケースバイケースで考えてください。

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居住用の賃貸物件でない場合は基本的に解約される

なお、上記の話は全て「居住用」にしている賃貸アパートや賃貸マンション、借家などの話です。

居住用としていない物件、言い換えれば、住むために借りていないような賃貸物件については、家賃の滞納があろうがなかろうが、特段の事情がない限り、すべて解約されるのが原則と考えてください。

賃貸物件を借りる際には敷金を収めていることが通常で、敷金は賃貸物件の契約を解除して退去すれば返還されると考えられていることから、その敷金は自己破産の手続きにおいては「資産」と判断されます。

≫ 資産目録(説明書)の作成手順(7)貸金・求償金の欄の記載方法

自己破産の手続きで「資産」と判断されるものは、全て裁判所から選任される破産管財人が回収して債権者に分配(配当)されるのが原則ですから、敷金についても破産管財人の回収の対象となり、賃貸契約が解除されてしまうのです。

居住用の物件の場合は、その物件に住み続けることが必要となりますので敷金を回収するために賃貸借契約を解除してしまうことはできませんが、居住用の物件でない場合には解約しても支障がないと判断されますので、敷金を回収するために賃貸契約が解除されることになります。

※居住用でなくても、仕事上必要であったり、親の介護などのために借りておく必要性があるような場合には裁判所の理解を得られれば賃貸契約を継続することも可能です(※ただし、その場合には自由財産の拡張という手続きが必要となります)。

≫ 自由財産と自由財産の拡張制度とは

以上のように、自己破産の手続きでは賃貸しているアパートやマンション、借家などがある場合には注意すべき点が存在します。

上記のような問題が気になる場合には、自己破産を依頼する弁護士や司法書士と十分に打ち合わせをして、その案件に最適な方法を探していくことが重要となってくるでしょう。

≫ 弁護士と司法書士、自己破産を依頼するならどちらがいいの?

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