自己破産でオーバーローンになっていない不動産を任意売却する場合

自己破産の申立をする人が自宅を所有している場合には、自宅が競売にかけられるか任意売却されるのが通常です。

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このうち任意売却は、自宅のローン残高が自宅の売却価格(評価額)よりも多い場合とローン残高が自宅の売却価格よりも少ない場合とで若干異なった対応が必要になるので注意が必要です。

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自宅のローン残高が自宅の売却価格(評価額)よりも多い場合

自宅の住宅ローンの残額が、自宅の売却価格(評価額)よりも多い状態を一般に「オーバーローン」といいます。

このオーバーローンの状態になっている自宅を任意売却する場合には、その売却代金は全額住宅ローン会社が取り上げてしまうので特に注意すべき点はありません。

住宅ローン会社は任意売却によって得られた自宅の売却代金の全額を住宅ローンの未払い分に充当し、それでも回収することができない住宅ローンの残額について自己破産の「債権」として裁判所に届け出ることになります。

仮に任意売却で自宅が売れたとしても売却代金は1円も受け取ることはできませんので、任意売却で得られた売却代金について特に気を付ける点はないということになります。

 

自宅のローン残高が自宅の売却価格(評価額)よりも少ない場合

自宅のローン残高が自宅の売却価格(評価額)よりも多い場合、言い換えればオーバーローンになっていない自宅を所有している場合には、任意売却における売却代金について注意しておく必要があります。

なぜなら、オーバーローンになっていない自宅を任意売却する場合には、任意売却で得られた売却代金を住宅ローンの残額に充当した場合でも余剰金が発生することになり、その余剰金は自己破産の「資産」として裁判所や破産管財人に引き継がなけれなならなくなるからです。

自己破産における「資産」は、生活に最低限必要なものを除き全て裁判所に取り上げられて換価され債権者に分配されるのが基本的な取り扱いとなっています。

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そのため、任意売却で自宅を売却した際の売却代金も、住宅ローンの残金に充当した残りの分については債権者に分配されるべき「資産」と考えられますから、そのお金を無駄に目減りさせたりしないように注意する必要があるのです。

もし仮に、その売却代金の残りを使ってしまったり紛失してしまったりすると、「債権者に分配されるべき資産(言い換えれば債権者の資産)」を棄損したということになってしまい、最悪の場合は自己破産の免責(借金の返済が免除されること)が受けられなくなってしまう可能性があります(破産法252条1項1号)。

一番注意しなければならないのは、任意売却の手続きを代行する弁護士や司法書士、不動産仲介業者といった関係者が法外な報酬を売却代金から差し引いたりしないかという点です。

悪質な業者に引っかかってしまうと、任意売却の際の自宅の売却代金から多額の報酬を差し引かれて売却代金が極端に目減りしてしまうこともあり、自己破産の申立後に破産管財人から「なぜこんな売却代金がこんなに少なくなってしまったの?」と問題にされる危険性があるので注意しなければならないでしょう。

 

このように、自己破産の手続きに関連してオーバーローンになっていない自宅を任意売却する場合に、その売却代金が不当に目減りされたりしないように注意することが必要です。

このようなリスクを回避するためには、自己破産の申立前に任意売却するのではなく、自己破産の申立後に選任される破産管財人に自宅を引き継いでもらい破産管財人に任意売却をしてもらうというようにしなければなりません。

破産管財人に任意売却してもらうと、破産管財人は裁判所の管理のもとに任意売却を行うことになりますので、売却代金から多額の費用が差し引かれたりするなど不当に目減りしてしまうことを防ぐことができます。

問題なく自己破産の手続きを終わらせたい場合には、任意売却をしないで自己破産の申立を行い、自宅を含めたすべての財産を破産管財人に引き継いでもらうようにするべきでしょう。

 


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