自己破産すると家や土地は処分させられてしまうのか

自己破産の手続きは「精算手続」ともいえるため、所有している財産(資産)があれば、基本的に裁判所が全て取り上げて売却し、お金に換えてから債権者に分配されることになります。

土地や建物などの不動産を所有している場合も同様で、もし自己破産する人が住宅(家)や土地を持っている場合には、裁判所が取り上げて競売などを行い、お金に換えてから債権者に配当するのが原則です。

※ただし、受託ローンが残っている場合には住宅ローン会社(銀行など)が競売や任意売却を行って売却代金を住宅ローンの残額に充当するのが通常です。

しかし、この取り扱いには例外はないのでしょうか?

ここでは、「自己破産すると住宅(家)や土地は処分させられてしまうのか」という問題について考えてみることにしたいと思います。

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土地や建物は競売にかけられるのが原則

前述したとおり、自己破産する人が土地や建物など不動産を所有している場合は、裁判所が競売にかけ、お金に換えてから債権者に分配されるのが原則です。

これは、自宅として居住している自宅だけでなく、親から相続して放置してある実家や田畑、山なども同様で、すべての所有する不動産(土地・建物)が裁判所に取り上げられるのが通常です。

【競売と任意売却の違い】

裁判所が不動産を処分する方法としては競売の他に任意売却という方法がとられる場合があります。

競売は最も高い購入価格を提示した購入希望者が買い受けるという「せりうり」の方法で行われますが、任意売却は不動産業者を介して購入者を募り、個別に交渉して売却するという方法で行われます。

一般的には競売よりも任意売却の方が高い値段で売れることが多いため、破産管財人が主導して任意売却の手続を行うことも多くあります。

 

土地や建物が共有となっている場合も処分させられる

土地や建物が共有となっている場合に、その共有者の一人が自己破産する場合も裁判所に処分させられることになります。

ただし、処分されるとは言っても、自己破産する人の「持分」が競売に掛けられるにすぎませんので、自己破産しない人の持分については裁判所に取り上げられることはありません。

例えばAとBが各2分の1の持分で所有する家がある場合に、Aが自己破産する場合は、その家の全てが競売(任意売却)にかけられるのではなく、その家の「Aの持分2分の1」が競売(任意売却)にかけられるということになります。

もっとも、家の「持分」を競売(任意売却)したとしても、購入したいと思う人はなかなか現れないと思われますので、通常は破産管財人が共有者であるBやB(またはA)の親族などに買い取ってもらえるよう調整することが多いでしょう。

 

値段のつかないような土地や建物は処分されない

前述したとおり、自己破産する人が土地や建物などの不動産を所有している場合には、裁判所が競売や任意売却をしてお金に換えて、債権者に分配されることになります。

しかし、例外として土地や建物などの不動産を所有している場合であっても、裁判所に処分されない場合があります。

それは、所有している土地や建物の値段が極端に低い場合などです。

田舎の土地や築年数の古い住宅などは、それを買いたいと思うような人は多くありません。

そのため、競売や任意売却をしようと思っても、売却価格を高く設定するのは難しくなるのが通常です。

利用価値がないような山や、改築しても住めない取り壊すしかないような古い住宅などは買い手が付かないことが多いため、資産的な価値がほとんどないと判断される場合も少なくありません。

このように資産的価値がないような土地や建物については、競売や任意売却しても売却することが困難であることが予想されるため、裁判所も「資産」として判断しないことがあります。

裁判所が資産として判断しない土地や建物については、自己破産した後も引き続き所有することが認められますので、裁判所に取り上げられて売却させられるという心配はないのです。

 

土地や建物の価格を調べる方法

自己破産をする人が住宅や土地などの不動産を所有している場合には、その価格を証明する書類を裁判所に提出しなければなりません。

具体的には、市役所で発行される「固定資産評価証明書」と不動産業者で見積もりをしてもらう「査定書」の2つが必要となります。

市役所で「固定資産評価証明書」を発行してもらう

土地や建物などの不動産の価格は、市役所の税務課などで発行してもらえる「固定資産評価証明書」で確認することが出来ます。

発行手数料が1通1000円ほど必要ですが、どのみち自己破産する場合は裁判所に提出しなければなりませんので、不動産がある場合には市役所で発行してもらいましょう。

固定資産評価証明書は、その不動産の所有者に固定資産税を請求するときに基準となる不動産の価格が表示されており、この価格は周辺の地価などから推定される価格が算出されますので、実際の市場価格より低額な価格となることが一般的です。

この価格は、「この土地(建物)は最低でもこの価格であれば売れるだろう」という、最低の金額が記載されていますので、裁判所がその不動産の資産価値を判断する最低の価格として基準となります。

不動産業者で査定してもらう

固定資産評価証明書とは別に、不動産業者に依頼して住宅や土地の売却価格を査定してもらいます。

不動産業者の査定は、周辺物件の価格との兼ね合いなども考慮されるため、一般的には市役所で発行される固定資産評価証明書に記載されている価格の1.3倍程度になることが多いです。

裁判所は固定資産評価証明書と査定書を総合的に判断する

裁判所は、自己破産に際してはこの固定資産評価証明書と不動産業者が作成した査定書に記載されている価格を総合的に判断しますので、裁判所がその住宅や土地の資産価格がないと判断を下すようであれば、所有している自宅や土地であっても裁判所に取り上げられて処分されないという場合もあるでしょう。

 

自宅を取り上げられないようにする方法

上記のように家や土地は自己破産の手続きに際しては裁判所に取り上げられて売却されてしまうのが通常です。

しかし、どうしても自宅を取り上げられたくないというような場合には「自由財産の拡張」という手続きを行うことで自宅を取り上げられないようにすることも、案件によっては可能です。

「自由財産」とは、自己破産をする場合であってもその後の生活に最低限度必要と判断されるために自由に保有することがみとめられた財産のことで、基本的には「99万円までの現金」「生活に必要なタンスや冷蔵庫など」「仕事や勉強に必要な道具」の3種類の財産のことをいいます。

自宅などの家屋や土地は本来この「自由財産」に含まれませんが、その自由財産の範囲を前述の3種類以外の財産に拡張する「自由財産の拡張」の手続きを行うことで自宅の家や土地を「自由財産」として保有することが認められる可能性があります。

ただし、この自由財産の拡張手続きは裁判所(破産管財人)の厳密な審査を通らなければならず、他の財産と合計して50万円を超えるような場合には基本的に自由財産として認められることはありませんので、相当古い家屋や極端に資産価値の低い自宅などしか利用できないと思われますが、それらに該当するような自宅の場合には検討するのもよいのではないかと思います。

もっとも、自由財産の拡張の手続きは小難しいものがありますので、自己破産を依頼する弁護士や司法書士によく相談して対処してもらうことが必要になるでしょう。

≫ 自由財産と自由財産の拡張制度とは

≫ 自由財産の拡張の方法 – 自由財産拡張申立書と上申書の記載例

 


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