破産管財人が選任されると何がどうなるの?

自己破産の申立を行うと、その案件によっては裁判所から破産管財人が選任され、破産管財人によって様々な調査がなされることがあります。

破産管財人とは、裁判所に備え付けられてある「破産管財人名簿」に記載される人(ほとんどは弁護士)のこと言い、裁判所(裁判官)の指示に従って申し立てされた自己破産の手続きに不正な点がないかチェックするのが主な仕事になりますが、自己破産を申立した人に資産がある場合にはそれを回収したり、売却したりしてその代金を債権者に分配する作業も行います。

図でイメージすると下のような感じになります。

裁判所(裁判官)
↓(指示)・↑(報告)
破産管財人

(調査)

(調査)
債権者
(お金を貸した人)
→ × ←債務者
(自己破産する人)

破産管財人は全ての自己破産の手続きで選任されるのではなく、個人が自己破産の申し立てをする場合では、破産管財人が選任されない場合も多くあります。

そのため、自己破産の手続きを考えている人の中には、破産管財人がどのような調査を行うのか、また、破産管財人が選任されるとどのような不利益が及ぶのか、といった点がイマイチわからない人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、破産管財人は具体的にどのような調査を行うのか、また、破産管財人が選任されるとどのような問題が生じるのか、といった点について考えてみることにいたしましょう。

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破産管財人の事務所で事情聴取を受けなければならない

破産管財人は、自己破産の申立が適正に行われているか調査するのが主な仕事となります。

そのため、自己破産の申立を行った際に破産管財人が選任されると、選任された破産管財人は自己破産の申立人と面談して自己破産に至った事情や資産の有無などの聞き取り(事情聴取)を行うことになります。

この破産管財人による事情聴取は、通常は選任された破産管財人の事務所(ほとんどの場合は弁護士が破産管財人となるので、その選任された弁護士の事務所)で行われますが、破産管財人の事務所が手狭だったりする場合には裁判所の会議室を借りて行われることもあります。

破産管財人が選任されなければ、裁判所で裁判官から質問を受ける(これを「審問」といいます)だけで済むのですが、破産管財人が選任される案件では、裁判所で行われる審問とは別に、破産管財人の事務所での事情聴取が行われる点が特徴となります。

もっとも、破産管財人も鬼ではなく、嘘偽りなく聞かれたことに正直に答えておけば何も問題ありませんので、この点についてはそれほど心配する必要はないでしょう。

 

破産管財人が裁判を起こすこともある

自己破産の手続きでは、自己破産の申立をした人の資産は全て売却され、その売却代金が債権者に分配されるのが基本的な取り扱いとなります(自由財産を除く)。

この「自己破産の申立をした人の資産」には、自己破産の申立人が「現在保有している財産」と「現在保有していない財産」の2種類が存在します。

「現在保有している財産」としては、自宅の土地や建物、自宅にある自動車や貴金属類、銀行の預金口座に預けているお金などが代表的な例として挙げられますが、これらの「現在所有している財産」の場合は破産管財人がすぐに取り上げて売却し、お金に換えてから債権者に分配されることになるので特に問題ありません。

しかし、「現在保有していない財産」の場合はそうはいきません。

「現在保有していない財産」とは、「借金のなかに過払い金が発生している場合」が代表的ですが、そのほかにも例えば「友人にお金を貸しているお金」や、「詐欺の被害にあってだまし取られたお金」、「知り合いに貸したまま返してもらっていない車」などが挙げられます。

これらのお金や財産は、自己破産する人の所有する「資産」となりますが、自己破産の申立時点で申立人の手元にないため、そのままでは債権者に分配することができません。

そのため破産管財人は、まず自己破産の申立人に代わってこれらの資産(財産)を所有する人に対して請求を行い、それを回収する必要が生じます。

その場合、もしも相手方がそのお金や財産の支払いや返還を拒んだ場合には、破産管財人は自己破産の手続きとは別に、裁判所に対して民事訴訟を起こして回収することになります。

裁判は早くても半年以上の期間が必要となりますから、もしも破産管財人が自己破産の申立人の資産(財産)を回収するために民事裁判を起こさなければならないような資産(財産)がある場合には、自己破産の手続きが長引くことになります(そのような場合1年以上経っても終わらないことも多いです)。

ちなみに、私が過去に受任した会社の社長さんの自己破産案件では、元従業員の女が会社のお金を持ち逃げした事実があったことから、元社員を相手取って破産管財人が裁判を起こしたことがあり(社長さんが会社に対してお金を貸し付けていたので債権者代位権が使えるという構図)、自己破産の手続きが終わるまでに2年以上かかったことがあります。

 

自分宛ての郵便物は全て破産管財人の事務所に転送される

破産管財人が選任されると、自己破産の申立人の自宅に郵送される郵便物は全て破産管財人の事務所に転送されることになるのが原則です。

これは、自己破産の申立を行った人が資産隠しを行っていないかや、自己破産の申立書に記載したもの以外に借金や負債がないかなどをチェックするために行われます。

郵便物は全て転送されますので、役所からの郵便物であろうが、ラブレターであろうが、年賀状であろうが、すべての郵便物が破産管財人の事務所に転送されることになります。

ただし、破産管財人の事務所に転送されることになるからといって、すべて取り上げられるということではありません。

郵便物が破産管財人の事務所に転送されてある程度貯まると、破産管財人の事務所から郵便物を取りに来るように連絡が入りますので、その時に破産管財人の事務所に取りに行けば渡してもらえます。

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