陳述書の作成手順(6)破産に至った事情の記載方法

自己破産申立書の報告書(陳述書)の「破産申立に至った事情」の欄には、破産の申し立てをせざるを得なくなった理由を記載することになります。

破産に至る理由は人それぞれですが、その理由を裁判所に分かりやすく伝える必要があります。

そこで、ここでは自己破産申立書の報告書(陳述書)の「破産申立に至った事情」の欄の記載方法について考えることにいたしましょう。

なお、自己破産申立書の作成方法についてはこちらの目次ページから必要な書類のページに移動してご確認をお願いします。

自己破産申立書作成マニュアル(目次)

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「破産申立に至った事情」の欄の概要

自己破産の申立書は各裁判所によってその様式に若干の違いがあることはこれまでも何回も説明してきましたが、「破産申立に至った事情」を記載する欄についても、各裁判所で若干の違いがあります。

一般的な自己破産申立書では、報告書(陳述書)の「第2」のところにチェック方式(☑を入れる方式)で記載する欄があると思います。

具体的な様式は以下のようなものが多いでしょう。

≪様式例・破産申立に至った事情の欄≫

【東京地裁の破産申立書から引用】

第2 破産申立に至った事情(債務増大の経緯及び支払いが出来なくなった事情)
1 多額の借金(以下、特に断らない限り、ここでいう借金には、連帯保証による債務やクレジットカード利用による債務も含む。)をした理由は、次のとおりである(複数選択可)。
□生活費不足
□住宅ローン
□教育費
□浪費(飲食・飲酒、投資・投機、商品購入、ギャンブル等)
□事業(店)の経営破綻(ネットワークビジネス・マルチ商法等の破綻も含む。)
□他人(会社、知人等)の連帯保証
□その他
2 借金を返済できなくなったきっかっけは、次のとおりである(複数選択可)。
□収入以上の返済金額
□解雇
□給料の減額
□病気等による入院
その他
3 支払い不能になった時期は、平成 年 月ころであり、そのころの月々の約定返済額は、計 万 円である。
4 具体的事情(生活費不足の場合には、当時の月収と、1か月当たりの生活費及び債務弁済額等を具体的に記載してください。)。

【引用おわり】

 

「破産申立に至った事情」の具体的な記載方法

自己破産申立書の報告書(陳述書)にある「破産申立に至った事情」は前述の様式のとおり、大きく4つの項目に分かれます。

そこで、この4つの項目について順番に記載方法を解説していくことにします。

「1 多額の借金をした理由」の記載方法

1項目の『多額の借金(以下、特に断らない限り、ここでいう借金には、連帯保証による債務やクレジットカード利用による債務も含む。)をした理由は、次のとおりである(複数選択可)。』の項については、自分が借金をしてしまった主な理由を考えて、選択肢の中から当てはまるものにチェック(☑)を入れます。

例えば、生活費不足が借金の原因であれば、「生活費不足」の項目にチェックを入れます。

☑生活費不足

借金の理由が生活費不足と浪費にある場合には「生活費不足」と「浪費」の項目にチェックを入れてください。

☑生活費不足
□住宅ローン
□教育費
☑浪費等(飲食・飲酒****)
□事業

「知り合いに脅されて借金した」など、上記の項目に当てはまらない場合は、「その他」の項目にチェックを入れて、その内容を簡潔に記載します。

□生活費不足
(省略)
(省略)
☑その他 会社の元同僚に脅されて借金をしてお金を渡していた

 

「2 借金を返済できなくなったきっかけ」の記載方法

2項目の『借金を返済できなくなったきっかっけは、次のとおりである(複数選択可)。』の項は「返済できなくなった理由」を記載します。

「借金をした理由」ではなく「借金を返済できなくなった理由」を記載することになるので間違わないようにしてください。

例えば、パチンコにはまって借金を重ねたとする場合には「借金をした理由」は「パチンコ」となりますが、「返済できなくなった理由」は「パチンコ」ではないはずです。

消費者金融でお金を借りてパチンコをしていたとしても、毎月の給料からその借りているお金を返しているかぎり「借金を返済できない」という状況には陥りません。

「借金を返済できない」ような状況に追い込まれるには、「借金が雪だるま式に増えて行って給料から返せる範囲の額を超えてしまった」とか「会社が倒産して給料をもらえなくなった」とか、「病気で休職して働けなくなった」とかいろいろあるはずです。

そのような「返済できなくなった理由」を選択肢の中から探してチェック(☑)を入れます。

例えば、借金を重ねすぎて雪だるま式に借り入れが膨らんで首が回らないような状況になってしまった場合などは、「収入以上の返済金額」の項目にチェックを入れればよいでしょう。

☑収入以上の返済金額

「両親の介護費用が急激に値上げされたため想定以上に支出が膨らんだ」など選択指に該当するものがない場合は、「その他」の項目にチェック(☑)を入れて、その詳細を記載します。

☑その他  両親の介護費用が急激に値上げされたため

 

「3 支払い不能になった時期」の記載方法

3項目の『支払い不能になった時期は、平成  月ころであり、そのころの月々の約定返済額は、計  円である。』の項は、「支払い不能になった時期」と「その当時の返済額」を記載します。

「支払い不能になった時期」とは?

「支払い不能になった時期」がいつなのかを見極めるのはなかなか難しいですが、おおむね「返済が滞りだした時期」を記載しておけば大丈夫でしょう。

「支払い不能になった時期の約定返済額」とは?

「当時の約定返済額」は、その返済が滞りだした時期に実際に「支払わなければならなかった金額」を記載します。

当時の借金総額ではなく、その当時の月々の返済月額がいくらかだったかを思い出して、そのおおよその金額を記載しておけばOKです。

 

「4 具体的事情」の項目の記載方法

4項目の『具体的事情(生活費不足の場合には、当時の月収と、1か月当たりの生活費及び債務弁済額等を具体的に記載してください。)。』の項目は、借金を始めたころから、自己破産の申し立てをするまでの期間の生活状況を具体的に記載することになります。

作文形式で記載するので、弁護士や司法書士の間では「作文」と呼ばれている項目ですが、この項目は借金を始めてから破産に至るまでの借入と返済の状況を個別具体的に裁判所に説明するためのものですので、自己破産の申立書の中でも最も重要な項目と言っても過言ではありません。

このページで説明すると長くなりすぎるので、「作文」についてページを改めて解説することにいたしましょう。

陳述書の作成手順(7)作文の記載方法

 


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