自己破産で自分の自動車やバイクを他人の名義にしている場合

自己破産の手続においては、自動車やバイクを所有しているときは、原則として裁判所に取り上げられて売却され、売却代金が債権者に分配されることになります。

≫ 自己破産をすると車やバイクはどうなるか?

この「自動車やバイクを所有している」とは、通常は「登録された名義」が「自分」になっている場合を指しますから、自分以外が登録名義人となっている自動車やバイクについては、裁判所に取り上げられることは基本的にありません。

しかし、自分のが購入した自動車やバイクであっても、便宜上自分以外の名義にしていたり、何らかの事件に巻き込まれて勝手に名義を変えられているなどという場合もあり得ます。

このように、自分の所有する自動車やバイクがあるにもかかわらず、その登録名義が自分になっていないような場合は、自己破産における取扱はどのようになるのでしょうか?

ここでは、このように自分の所有する自動車やバイクを他人の名義にしている場合の自己破産のおける取扱いなどについて考えてみたいと思います。

なお、「自分の自動車やバイクを他人の名義にしている場合」ではなく「他人の自動車やバイクを自分の名義にしている場合」の注意点などについては自己破産で他人の自動車やバイクを自分の名義にしている場合のページを参考にしてください。

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「自己の所有する自動車やバイクを他人の名義にしている場合」とは?

「自分の所有する自動車やバイクを他人の名義にしている場合」の態様は、おおむね次の2とおりがあると思います。

1 自分の自動車やバイクを便宜上自分以外の人の名義としている場合

2 自分の自動車やバイクが何らかの事情で勝手に(あるいは無理やり)自分以外の人の名義とされている場合

1は、たとえば税金対策などで自分以外の人の名義にしている場合が挙げられます。

2については、たとえば何らかの事件に巻き込まれて脅迫されて名義を書き換えている場合や、ヤミ金などでお金を借りる代わりに名義を書き換えさせられている場合などが挙げられます。

 

自分以外の人の名義が登録されている自動車・バイクでも、自分が所有者であれば「資産」として申立書に記載しなければならない

自分以外の人の名義で登録されている自動車やバイクであっても、自分が所有者であると認識している場合には、自己破産の申立書に「資産」として記載しなければなりません。

たとえば、自己破産するAが購入した自動車があるが、税金対策上の理由で自営業をしているBの名義として登録していたというようなケースが挙げられます。

このような場合には、自動車の名義人としてBが登録されていますから、本来ならばAの自己破産の手続き上は問題にはなりません。

しかし、この自動車購入資金はAが出しおり実質的な所有者はAであるのですから、これをAの資産として処理しないとすると、Aの債権者にとっては納得のいかない結果となってしまいます。

そのため、このように自己破産する人が登録名義人となっていない自動車やバイクであっても、実質的には自己破産する人が所有者であると言えるような場合には、その自動車やバイクも自己破産する人の資産として裁判所に申告しなければなりません。

 

「上申書」で自分の所有する自動車・バイクであることを説明する

前述したとおり、自分の所有する自動車やバイクであれば、たとえ自分以外の人が名義人となっている場合であっても自己破産申立書の資産目録に記載をする必要がありますが、ただ記載だけでは裁判所は「何で自分以外の人の登録名義になっている自動車・バイクを記載しているの?」と疑問に思ってしまいます。

そのため、他人名義の自動車やバイクを資産目録に記載する場合は、「なぜ自分以外の人の名義が登録されているのか」ということを裁判所(裁判官)に説明するために、「上申書」を別途作成して提出しておく方が良いでしょう。

「上申書」は必ずしも提出しなければならない書面ではありませんが、このような場合には説明しておかないと、裁判官も良く理解できないと思います。

上申書の記載例

例えば、前述の例で、自己破産するAが購入した自動車があるが、税金対策上の理由で自営業をしているBの名義として登録していたというようなケースの上申書を作成すると、次のようになります。

○地方裁判所 御中

上申書

平成〇年〇月○日

申立人 破産太郎 ㊞

申立人以外の名義の自動車を資産として記載している件について

資産目録に破産仙太郎名義の自動車(トヨタハイエース)を資産として記載しておりますが、この自動車の実質的な所有者は申立人である私でございます。

この自動車は、平成26年○月に私が購入することを考えていたところ、自営業をしている父の仙太郎に「経費として処理すれば所得税の軽減が出来るから俺(仙太郎)が購入したことにさせてくれ」と頼まれたため、購入代金を父に渡し、父が父仙太郎の名義を使用して自動車販売店で購入したという経緯があります。

これは、この自動車のために使用している駐車場の契約者が私の名義になっていることや、私が加入する自動車の任意保険の保険証券にも使用する自動車としてこの自動車(トヨタハイエース)が記載されていることからも明らかでございます。

以上のような事情がありますので、資産説明書に記載してある自動車(トヨタハイエース)につきましては、申立人である私の資産げ間違いでございませんので念のため上申いたします。

≪添付書類≫

・申立人名義で契約している駐車場の契約書の写し 1通
・申立人の加入する自動車保険の保険証券の写し 1通

以上

 

 

≫ 資産目録(説明書)の作成手順(11)自動車・バイクの記載方法

 

自己破産の前に自動車やバイクの名義を変更することは認められるか?

まれに、「自己破産をする前に自分名義の自動車やバイクを家族や友人の名義に変更しておけばいいんじゃないか」という話を耳にします。

裁判所に取り上げられないよう、自己破産する前に自動車やバイクの名義変更をしておき、自己破産が終わってから自分の名義に戻すというずる賢い方法を考える人が結構います。

しかし、このような不正行為は絶対にしてはいけません。

このような資産隠しは、免責不許可事由として借金の免除が受けられない原因となりますし(破産法252条1項1号)、詐欺破産罪という犯罪行為(10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金)に該当します(破産法265条1項)。

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