家族や身内に内緒で自己破産することはできるか?

自己破産をするうえで一番気になるのは、自分が自己破産することが家族や身内にバレてしまうのではないか、という点ではないでしょうか?

妻や夫に内緒で借金を重ねた結果返済が行き詰ってしまったというような人の中には、自己破産すると借金したことがバレてしまうから無理をして返済を続けているという人も多いのではないかと思います。

このような人は、自己破産をした場合に本当に家族や身内に知られてしまうのか、実際のところはどのような取り扱いがされているのかとても気になるところだと思います。

そこで今回は、「家族に内緒で自己破産することはできるのか?」という点について考えてみることにいたしましょう。

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家族に内緒で自己破産することも”基本的には”可能

結論から言うと、家族に内緒で自己破産の手続きを進めることも”基本的に”可能です。

自己破産の手続きは、その自己破産の申立をする人個人の「負債(借金)」と「資産(財産)」を清算するものですから、たとえ家族であっても自分以外の家族の「負債」や「資産」は全く別のものとして判断されます。

そのため、仮に同居の家族と家計が同一であったとしても、その家族の「負債」や「資産」は自分の自己破産の手続きには全く関係ないと判断されるのが基本的な取り扱いのため、家族に秘密にしたまま自己破産の手続きを進めることも可能といえるでしょう。

 

家族にバレる可能性がある場合

前述したように、自己破産の申立は”基本的には”家族に内緒で手続きを進めることも可能です。

しかしこれはあくまでも”基本的には”可能というだけであって、家族に内緒で自己破産の手続きを進めるのは実務上困難な場合が多いです。

特に、次に挙げるような事由がある場合には家族に内緒で処理するのは難しいと思った方がよいでしょう。

家族が保証人になっている場合

家族が保証人になっている場合には、自己破産をするとその保証人になっている家族のもとに請求がなされることになりますので、家族に内緒で自己破産の手続きは基本的に不可能と思った方がよいです。

≫ 自己破産すると保証人はどうなるの?

≫ 自己破産で保証人がいる(保証人になっている)場合の注意点

 

同居の家族が働いている場合

自己破産の申立書には過去3か月分の給与明細を添付することが義務付けられていますが、同居の家族が働いている場合には、その家族の給与明細書も提出する必要があります(例えば夫が自己破産する事例で妻や子供がパートやアルバイトをしている場合には、妻や子供の給与明細書も裁判所に提出する必要があります)。

そのため、同居している家族に収入がある場合には、その家族から給与明細書を預からなければならず、そうなると「何に使うの?」と怪しまれるのが通常なので、隠し通すことは難しいでしょう。

なお、同居している家族に内緒で給与明細書を持ち出すことができるのであれば内緒で自己破産の手続きをすることも可能かもしれませんが、道徳的に問題があるのではないかと思います。

≫ 自己破産の添付書類(3)給与明細など収入を証明する書類

 

家族が年金をもらっている場合

前述の給与明細と同様に、同居の家族が年金をもらっている場合にはその年金も収入となりますから、過去3か月分の年金受給証明書を裁判所に提出することが求められます。

そのため、もしも両親と同居していて親が年金を受給している場合には、親から年金受給証明書を預からなければならず、そうなると「何に使うの?」と怪しまれるでしょうから、家族に秘密にしたまま自己破産することは難しいと思います。

≫ 自己破産の添付書類(3)給与明細など収入を証明する書類

 

持ち家又は住宅ローンを組んでいる場合

自宅が持ち家の場合は、競売や任意売却で自宅が売却されるのが通常ですので、家族に内緒で自己破産の手続きを進めるのは不可能でしょう。

また、住宅ローンを組んでいる場合も競売か任意売却で処理されてしまうので家族に内緒というわけにはいかないと思います。

≫ 自己破産すると住宅(家)や土地は処分させられてしまうのか

 

自宅に車がある場合

自己破産する人の名義になっている自動車は、裁判所に取り上げられて売却されてしまうのが原則です。

この点、自分名義ではない自動車は基本的に取り上げられることはありませんが、「実質的に自己破産する人の資産」と判断される自動車についてはたとえ自分の名義でない自動車であっても裁判所が取り上げて競売にかられることがあります。

例えば、夫が自己破産する場合には妻の名義になっている自動車は競売にかけられないのが基本ですが、裁判所(破産管財人)の調査で、妻の名義となっている自動車が夫の資産と判断できるような場合(例えば夫の名義で借りたカードローンで購入している場合など)には、夫の資産と判断され、たとえ妻の名義の自動車であっても競売にかけられる可能性があります。

そうなると、破産管財人からその自動車の名義人となっている妻の方に連絡がなされることになりますので、内緒で手続きを進めることはできないでしょう。

≫ 自己破産をすると車やバイクはどうなるか?

≫ 自己破産で自分の自動車やバイクを他人の名義にしている場合

 

家族からお金を借りている場合

家族からお金を借りている場合には、その家族を「債権者」として自己破産の手続きに含めなければならず、そうなると裁判所からそのお金を貸している家族のもとに自分が自己破産することになったことを知らせる通知書が送付されることになりますので、家族に内緒で自己破産の手続きを進めるのは不可能でしょう。

≫ 自己破産で友人・知人・家族などからの借金がある場合

 

家族にお金を貸している場合

自己破産をする人が、家族にお金を貸している場合にはその貸しているお金は「資産」と判断され、破産管財人が回収することになりますので、家族に内緒で手続きをすることは難しいかもしれません。

たとえば、自己破産するAさんが、同居している父親Bさんに30万円を貸していたとすると、Aさんの自己破産の手続きで裁判所から選任された破産管財人が、父親Bさんに対して「Aさんから借りた30万円を返しなさい」と請求することになり、Bさんから回収した30万円が債権者に分配(配当)されることになります。

そのため、もしも家族にお金を貸しているような状態であれば、その家族に内緒で自己破産の手続きを進めるのは難しいと考えた方がよいでしょう。

≫ 資産目録(説明書)の作成手順(7)貸金・求償金の欄の記載方法

※なお、貸したお金が20万円を下回る場合は破産管財人が「資産」と判断せず回収しないこともありますが、他の資産と合計して50万円を超えるようであればたとえその家族に貸したのが20万円以下であっても破産管財人が回収するのが実務上の取り扱いとなっていますので注意が必要です。

 

その他の場合

家族にバレそうな事由としては上に挙げたようなものが代表的ですが、上記以外でも破産管財人に「提出しろ」と言われた書類は提出しなければなりませんし、裁判所が資産と認めるものは自己破産する人以外の財産であっても取り上げられることになりますから、上記以外にも家族に知られる場合はあると思います。

 

以上のように、家族に秘密で最後まで進めることは可能ですが、絶対に秘密にできるかというとそうではないと思っておいた方がよいでしょう。

そもそも、家族に秘密にしたまま自己破産の手続きを終了させることができたとしても、家族に秘密にしたままでは問題の根本的な解決とはなりません。

≫ 自己破産を家族に内緒でしないほうがよい理由

本来、自己破産の手続きというものは、可能な限り家族に話してから手続きを進めるのが正しい処理方法だということは理解しておいてもらいたいと思います。

 


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