弁護士や司法書士はなぜ無料相談をやりたがるのか?

弁護士や司法書士事務所のウェブサイトを見ていると

「相談無料」とか「無料相談実施中」とうたって依頼人を集めている事務所が多くあります。

「相談料をタダにしてくれるとは、なんて良心的な事務所なんだろう」

と感動する人もいるかもしれませんが、逆に

「相談料をタダにして、どうやって利益を出しているのだろう?」

と怪しく感じる人もいるかもしれません。

しかし、この弁護士や司法書士が「無料相談」を行うのは、なにも慈善事業としてやっているわけではなく、また何か怪しい裏事情があってやっているわけでもありません。

実は、弁護士や司法書士には「無料相談」を行っても国からお金をもらえるシステムが存在します。

そこで、今回はなぜ弁護士や司法書士が「無料相談」をやりたがるのか?について考えてみたいと思います。

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法テラスの法律相談援助という制度

まず、法テラスの民事法律扶助という制度をご存知でしょうか?

法テラスの民事法律扶助制度とは、所得の低い人にも法律サービスが受けられるように整備された制度で、一定の収入に満たない人であれば、弁護士や司法書士の報酬を立て替えてもらえることができます。

そして、この法律扶助の制度の一つに「法律相談援助」があります。

「法律相談援助」とは、一定の収入に満たない人であれば無料で弁護士や司法書士に法律相談をしてもらえるという制度で、1人3回まで無料で相談を受けることができます。

法律相談援助の代表的なのものは、法テラスの相談センターや法テラスの巡回法律相談などで行われている無料相談会です。

この無料相談会に行くと、弁護士や司法書士に無料で相談を受けてもらうことができますが、これは「法律相談援助」の制度を利用している状態になっています。

なので、法テラスの無料相談は3回しか利用できないという決まりになっているのです。

そして、この「法律相談援助」は法テラスの無料相談会だけでなく、「法テラスと法律扶助契約を結んでいる弁護士や司法書士の事務所」でも受けることができます。

たとえば、あなたが相談に行こうとしている弁護士や司法書士が「法テラスと法律扶助契約を結んでいる弁護士・司法書士」であれば、法テラスに足を運ばなくても、その弁護士や司法書士の事務所で法テラスの無料相談をしてもらえるのです。

 

弁護士や司法書士は無料相談をしても5,000円の利益が出る

前述したとおり、「法テラスと法律扶助契約を結んでいる弁護士・司法書士」であれば、その弁護士や司法書士の事務所で法テラスの無料相談(法律相談援助)を行うことが可能です。

そして、この「法律相談援助」を行った弁護士や司法書士は、法テラスに申請書(援助申込書・法律相談票)を送付すれば、法テラスから5,400円の相談料が振り込まれるシステムになっています。

この相談料はすべて税金で賄われていますから、相談を受ける側は1円もお金を払う必要はありません。

弁護士や司法書士の報酬を立て替える法テラスの民事法律扶助の立替制度の場合は、後日法テラスに立て替えてもらった報酬を返済しなければなりませんが、「法律相談援助」は純粋に「無料」となっており「立替」ではありませんから(だから1人3回までという制限がある)、後で法テラスに返済する必要はありません。

このように、無料相談であっても法テラスの「法律相談援助」を利用する場合には、弁護士や司法書士は法テラスから5,400円のお金を受け取れるので、相談を受ける側からすれば「無料」であっても、弁護士や司法書士側から見れば決して「無料」ではないのです。

法律相談援助を法テラスに申請する場合には、弁護士や司法書士が作成する申請書(援助申込書・法律相談票)に相談を受けた人の署名が必要となりますから、もしあなたが無料相談に行った事務所の弁護士や司法書士が申請書(援助申込書・法律相談票)に署名を求めてくるようであれば、その弁護士や司法書士は法テラスから法律相談料として5,400円を受け取っているということになります。

 

あとがき

このように、弁護士や司法書士が「相談無料」と言っていても、実際は法テラスからお金を受け取っている場合も多いです。

もっとも、すべての弁護士や司法書士がこの法律相談援助を利用しているわけではなく、純粋に無料で相談をしている事務所も多くあります。

法テラスの法律相談援助を申請すると、お金をもらう反面、申請書や報告書を作成しなければならないため、面倒な作業を嫌って相談は無料にしている事務所も多いでしょう。

なので、すべての事務所が上記のような法律相談援助を利用しているとまでは言えませんが、弁護士や司法書士が「無料相談」を声高に叫んでいる背景には、このような事情もあるということを知っておくことも、無駄ではないと思います。

 

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