自己破産で他人の名義で作った借金がある場合の注意点

自己破産の手続においては、自分に関する全ての負債(借金)を債務として届け出なければなりません。

一部の負債を届け出ないことは、その届け出ない負債を特別扱いすることにつながりますし(届け出ない負債だけ返済を継続するとか)、届け出ていない負債は免責(返済の免除)の対象となりませんから、全ての負債を債務として届け出ることが義務付けられているのです。

では、他人の名義で借りた借金があるような場合にはどうなるのでしょうか?

他人の名義で借りた借金の契約上の債務者は、その名義を貸した人になりますから、名義を借りた人が自己破産する場合には自分の負債には該当しないため届け出は必要ないとも思えます。

そこで、ここでは他人の名義で作った借金がある場合の自己破産手続における注意点などについて考えてみることにいたしましょう。

なお、「他人の名義で作った借金」ではなく、「他の人に自分の名義を貸して作った借金」がある場合の注意点については自己破産で名義貸しによる借金がある場合に注意すべきことのページを参考にしてください。

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「他人の名義で作った借金」とは?

「他人の名義で作った借金」とは、一般的に次の2つの態様に分かれます。

1 他人の名義を承諾を得て使用して借金をする場合

2 他人の名義を無断で使用して借金をする場合

 

他人の名義を承諾を得て使用して借金をする場合とは?

他人の名義を、その承諾を得て使用して借金をする場合とは、例えば、借金まみれで追加の融資が受けられないAが、友人のBに「Bの名前で借金させてくれよ」と頼み、Bがそれを承諾してAがBの名前で借金をする場合をいいます。

 

他人の名義を無断で使用して借金をする場合とは?

他人の名義を無断で使用して借金をする場合とは、例えば、借金まみれで追加の融資が受けられないAが、友人のBに無断でBの名前を使用して借金をする場合をいいます。

 

他人の名義を使用して借金をすることは犯罪

ちなみに、他人の名義を使用して借金をすることは、たとえその本人の承諾があったとしても、お金を貸す側に対しては詐欺に該当します。

例えば、AがBの承諾を得て、Bの名義でXからお金を借りたとします。この場合、Xはお金を貸す相手がBだと判断したからお金を渡したのですから、実はそれがBではなくAだったとなると、Aに騙されてお金を渡したということになります。人を騙してお金を受け取ることは詐欺にあたりますから、他人の名義を使用してお金を借りることは詐欺罪となり、刑事罰の対象となる犯罪となります。

他人の名義を使用してお金を借りるという行為は、絶対にしてはいけませんので注意してください。

▶ ”名義借り”や”名義貸し”による借金はなぜダメなのか?

 

他人の名義で作った借金であっても自分の借金となる

他人の名義で作った借金は、いったい誰の借金となるのでしょうか?

例えば、AがBの名前を使ってBの名前で金融機関から借金をしたとします。

この際、Bの承諾があったか、Bに無断で使用したかは構いませんが、このB名義の借金は当然、金融機関との間ではBの借金となります。

しかし、実際にお金を借りて、お金を受け取っているのはAですから、本来はAの借金です。

そのため、お金を貸している金融機関としては、契約上の債務者となっているBに返済を求めることができますが、実際にお金を借りているAに返済を求めることも可能です。

また、仮に金融機関から借金の返済を求められたBが「その借金はBがした借金ではない」ことを確認することを求める「債務不存在確認訴訟」を裁判所に提起し、その裁判で勝利した場合には、その借金がBの借金でないことが確定しますから、このような場合にも金融機関がAに返済を求めてくることもあり得ます。

このように、他人の名義で作った借金は、形式的には名義を使われた方の借金となりますが、実質的には他人の名義を使った方の借金と言えますから、他人の名義で作った借金であっても自分の借金となります。

 

「他人の名義で作った借金」も自己破産手続では「自分の負債」として記載する必要がある

前述のように、他人の名義で作った借金であっても、自分の借金となりますから、自己破産する場合には他人名義で作った借金についても「自分の借金」として自己破産の申立書に記載しなければなりません。

たとえば、AがBの名前を使ってB名義で作った借金がある場合には、Aの自己破産申立書には、「Aの負債」として記載することになります。

※ただし、自己破産の申立書にB名義の借金をAの借金として記載したとしても、裁判所がA名義の借金と認めない(免責の対象と認めない)可能性もあります。Aの借金と認めることはAの債権者が一人増えるということですから、Aの他の債権者の取り分が少なくなっていしまいます。そのため裁判所としてはB名義の借金をA名義の借金として認めることは問題になることもありますので、最終的には裁判官の判断によってAの借金と認めないとされることもあり得るでしょう。

 

「他人の名義で作った借金」の調査方法

他人の名義で作った借金であっても、自分の自己破産の申立書には自分の借金として記載しなければなりませんから、その他人名義の借金の債務額などを事前に調査しなければなりません。

しかし、例えば前述の例で、Bの名前を使ってB名義で金融機関からお金を借りているような場合には、お金を貸している金融機関としては個人情報保護の観点からたとえ本来の借主がAであったとしても契約者であるB以外の調査には応じてくれません。

そのため、このような場合にはBの協力を得て、Bに送付されている請求書などを参考にして債権者一覧表に記載するしかありません。

 

「他人名義で作った借金」の債権者一覧表への記載方法

例えば、自己破産するAが、友人のBの承諾を得て、平成26年7月7日にB名義でX銀行から50万円を借りている場合の債権者一覧表の記載方法は次のようになります。

番号債権社名(省略)債務額借入等の日使途
X銀行(省略)50万円H26/7/7□住宅ローン □購入 □生活費
□返済 □飲食交際遊興費
□保証 ☑その他(名義借り)

※「使途」の欄の「その他」の欄の「カッコ書き」は「名義貸し」としてしまうと「自分が他人に名義を貸している」ことになってしまうので、「名義借り」とした方がいいと思います。

 

※なお、債権者一覧表の「使途」の欄の記載方法についてはこちらのページで解説しています。

債権者一覧表の作成手順(6)使途の欄の記載方法

 

「上申書」の記載方法

前述のように、他人の名義を使用して作った借金がある場合には、債権者一覧表に自分の借金として記載しますが、債権者一覧表に記載するだけでは、裁判所(裁判官)は、「なぜ他人名義の借金を記載しているのか」や「なぜ他人の名義を使用して借金をする必要があったのか」が判然としません。

そこで、他人の名義を使用して作った借金がある場合には、別途「上申書」を作成して、「なぜ他人の名義を借りて借金を作ったのか」を説明する必要があるでしょう。

○地方裁判所破産係 御中

上申書

平成〇年〇月○日

申立人 破産太郎 ㊞

B名義の借入を債権者一覧表に記載している件について

 債権者一覧表の1番にB名義の借入を記載しておりますが、これは平成26年7月7日に私がBの名義を使用してB名義でX銀行から借り入れを行っているためです。

当時、私は生活費の不足からX銀行に融資の相談に赴きましたが、収入の要件が満たせないと理由で融資を断られておりました。

その際、Bに相談したところ、Bから「自分の名義で借りてもよい」との承諾を得たため、いけないこととは分かっていながらも誘惑に勝つことができず、Bの名義でX銀行から借り入れを行ったものでございます。

このように、X銀行に対する50万円の借金は、形式的にはB名義の借金となりますが、事実上は申立人である私の借金でございますので債権者一覧表に記載した次第でございます。

以上

 

※裁判所は基本的に使用する用紙をA4用紙で統一していますので、上申書もA4用紙を使用して作成する方がよいでしょう。

 

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