自営業者や会社代表者(過去3年以内に自営業者や会社代表者・社長だった者も含む)であったものが自己破産する場合には、確定申告書や決算書、元帳などを自己破産申立書に添付して裁判所に提出する必要があることは、別のページで説明したとおりです。
そして、自営業者や会社代表者(過去3年以内に自営業者や会社代表者・社長だった者も含む)であったものが自己破産する場合には、自己破産の申立書の他に「事業等に関する補充説明書」を作成して裁判所に提出しなければなりません。
これは、自営業者や会社代表者は、事業や会社の資産・負債と個人の資産・負債が混同することが多く、個人の破産手続きであっても事業や会社の営業状態について裁判所が詳細に把握しておかなければならないことから、自己破産の申立書とは別に追加で説明しておく必要があるためです。
そこで、ここでは自己破産の申立時に必要となる、「事業等に関する補充説明書」の作成方法(書き方)について考えていくことにいたしましょう。
なお、自己破産申立書の作成方法についてはこちらの目次ページから必要な書類のページに移動してご確認をお願いします。
「事業等に関する補充説明書」の提出が必要となる場合
前述したとおり、事業等に関する補充説明書の提出が必要となるのは、自己破産する人が「自営業者」や「会社代表者」の場合であり、「自己破産の申立前3年以内に自営業者会社代表者であった者」も含まれます。
事業等に関する補充説明書のひな型
「事業等に関する補充説明書」の様式は、各裁判所によってその様式が異なりますが、ここでは福岡地裁で使用されている様式を参考として挙げておきましょう。
事業等に関する補充説明書 1 申立人の地位 申立人は、 2 営業場所等 上記①が、申立人(又は申立人が代表者をしていた会社)を賃借人とする賃借物件である場合には、次の表を記載してください。 3 経理の状況 ① 会計帳簿(パソコンによる管理を含む)の作成状況 ② 上記①で作成していた帳簿又はメモなどの保存状況 ③ 申告の有無 ④ 上記③で行っていた申告の状況 4 事業の概要 ① 申立人が会社代表者をしていた会社又は申立人がしていた事業の内容 ② 主たる仕入先(買掛先)、仕入代金の決済方法 ③ 主たる納入先(売掛先)、納入代金の決済方法 ④ 事業の現状 5 今も残っている財産 ① 未回収の売掛金 ② 未換金の受取手形、小切手 ③ 保険(生命、年金、学資、障害、火災、自動車保険等) ④ 在庫商品 ⑤ 自動車 ⑥ 売却すれば5万円以上になりそうな銃器、備品 ⑦ リース物件 ⑧ 不動産 ⑨ 仕掛かり工事及び半製品等 ⑩ その他、売却すれば5万円以上になると思われる財産権等
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なお、東京地裁で使用されている申立書では、資産目録(資産説明書)に「事業設備、在庫品等」を記載する欄が設けられており、そこに記載することになっています。
事業等に関する補充説明書の書き方
1 申立人の地位の欄の書き方
申立人の地位の欄には、自己破産の申し立てをする人が現在(又は過去)自営業者または会社代表者であるか(又はあったか)、また、過去に自営業者または会社代表者であった場合はいつごろまで自営業や会社代表者をやっていたかなどを記載します。
2 営業場所等の欄の書き方
営業場所等の欄の「所在地」の項目には、自営業や会社代表していたところの事業所の住所を記載します。
また、その営業所の建物を賃貸している(賃貸していた)場合には、その家主を「物件の所有者」の項目に記載します。
「賃借開始時期」「明渡しの状況・明渡し時期」「賃料」「預入敷金」「返還額又は返還予想額」の欄には、事業所を借りた時の契約書などを見ながら、「賃借開始時期」「賃料」「預入敷金」の項目を埋めていきましょう。
事業所の退去がすでに済んでいる場合は「明渡しの状況」の項目にその退去の日付を記載します。
「返還額又は返還予想額」の項目は、敷金がいくら返還されるかを記載する項目となりますので、契約上に「敷引特約」などがない限り預け入れている敷金の全額を記載しておけばよいでしょう。
3 経理の状況の欄の書き方
経理の状況の欄には、会計帳簿を付けていたか付けていないかを記載し、その会計帳簿を保存していない場合はその理由も記載しなければなりません。
また、確定申告を青色の白色どちらでしているかなどを記載することになっています。
4 事業の概況の欄の書き方
事業の概況の欄には、
① 事業の内容
② 仕入れ先の名前、仕入品の名前、決済方法
③ 主たる納入先の名前、納入品の名前、決済方法
などを記載します。
また、④の「事業の現状」の項目には、その行っている(行っていた)事業を自己破産後も継続するか否か、また廃業済みの場合はその時期などを記載します。
※なお、自己破産に至った事情が、事業の不振が原因であるような場合は、基本的に裁判所から廃業することを勧められることになります(不振の事業を継続しても借金が増えるだけだから)。
5 今も残っている財産の欄の書き方
① 未回収の売掛金の欄の書き方
「未回収の売掛金」がある場合は、その相手方の名前を「債務者」の項目に、またその相手方の住所を「住所」の項目に、売掛金の金額を「債権額」の項目に記載します。
② 未換金の受取手形、小切手の欄の記載方法
「未換金の受取手形、小切手」がある場合は、「振出人」の名前や、その振出人の住所、手形・小切手の「券面額」や「種類」を記載します。
③ 保険の欄の書き方
事業を行うために加入している「保険」がある場合には、「保険」の欄にその保険の種類や証券番号、契約日、毎月の掛け金、解約返戻金の見込み額を記載します。解約返戻金の見込み額は、保険会社に連絡し解約返戻金の証明書を発行してもらう方が無難です。
④ 在庫商品の欄の書き方
「在庫商品」がある場合には、その「商品名」や「在庫数」、「仕入れ価格の合計金額」を、また現時点で売却すればいくらで売却できるかという「現在の評価額」を記載します。
⑤ 自動車の欄の書き方
事業の為に利用している「自動車」がある場合は、その「車種」や「所有者(その自動車の登録名義人)」「評価額」「購入時期」「年式」や「保管場所」を記載します。
なお、「保管場所」の記載が必要となるのは、申立後に破産管財人がその自動車の処理をしなければならないため、その所在を明らかにしておく必要があるためです。
⑥ 売却すれば5万円以上になりそうな什器、備品の欄の書き方
「売却すれば5万円以上になりそうな什器、備品」などがある場合には、その品名や数量、などを記載し、現状で売却すればいくらになるかという「評価額」も記載します。
⑦ リース物件の欄の書き方
コピー機など事務用品をリースしている場合は、「リース物件」の欄に、「物件名(そのリースしている物の名前)」「リース会社」「残リース料」「数量」「保管場所」などを記載します。
「保管場所」の記載が必要となるのは、自動車の場合と同様に申立後に管財人がその処分を引き継がなければならないためです。
⑧ 不動産の欄の書き方
事業の用に供している土地や建物を所有している場合は「不動産」の欄に記入します。
「課税標準額」の項目には、市役所で発行される固定資産評価証明書に記載されている評価額を記載します。
また、その土地や建物のローンが残っている場合は「被担保債権総額」の欄にローンの残額を記載します。
「使用状況」の項目には、その土地や建物の現状を記載します。たとえば、いまだ事業を継続中で使用している場合は「事業のため使用中」と記載したり、他の人に賃貸に出している場合は「賃貸に出している」などと記載しておけばよいでしょう。
⑨ 仕掛かり工事及び半製品等の欄の書き方
事業の仕事で、途中まで行っている工事(仕掛かり工事)や、途中まで製品を製作している(半製品)などがある場合には、その「品名」や「評価額(途中までの仕事で受け取ることができそうな金額)」、「保管場所」などを記載します。
⑩ その他、売却すれば5万円以上になると思われる財産等の欄の書き方
上記①~⑨までのもの以外に、売却すれば5万円以上になると思われる財産がある場合には、その「品名」「評価額(今売却すればいくらで売ることができるか)」「保管場所」を記載します。