誰かにお金を貸していて、その人が何らかの事情でお金を返せなくなったとします。
その場合、最終的にはそのお金を借りている人は自己破産をすることになるでしょう。
そうなると、お金を貸している自分も、そのお金を借りている人の自己破産手続に巻き込まれることになります。
多くの場合、自己破産の申立をする人は、弁護士や司法書士に自己破産の手続きを依頼するので、通常は弁護士や司法書士から
「あなたがお金を貸している人から自己破産手続の依頼を受任しましたので、あなたがこの人にいくらお金を貸しているか届け出てください」
というような手紙が届くと思います。
この弁護士や司法書士に提出する「その〇〇という人に〇〇円お金を貸しています」ということを記載した書類のことを「債権調査票」とか「債権届出書」と言ったりします。
この「債権調査票(破産債権届出書)」は弁護士や司法書士に提出した後、その弁護士や司法書士がそのまま裁判所に提出することになり、その破産する人に財産がある場合にはその債権調査票に記載されている債権額(貸したお金の額)に応じて配当(破産者の財産を債権者に分配すること)がなされるため重要な書類となっています。
そこで、ここでは自分がお金を貸している人が自己破産することになった場合に作成することになる「債権調査票(破産債権届け出書)」の書き方などについて考えていくことにいたしましょう。
債権調査票のひな形を送ってもらう
債権調査票に法律で定められた書式はありませんので、基本的には各自が好きなように書いておけばよいということになります。
しかし、そうはいっても通常の人は何を書いていいか分からないと思います。
そこで、もし自分がお金を貸している人が自己破産することになり、その人が依頼した弁護士や司法書士から
「債権調査票を出してください」とか「債権届を出してください」
という連絡が入った場合は、その弁護士や司法書士に
「債権調査票(債権届出書)のひな形を送ってください」と伝えるようにしましょう。
裁判所に提出する債権調査票は、ほぼ同一の書式が全国で利用されていますので、弁護士や司法書士はそのひな形を必ず持っています。
なので、弁護士や司法書士から連絡が入ったら、ひな形を送ってもらい、そのひな形に記入していくようにしたほうが手っ取り早いです。
もっとも、弁護士や司法書士の中には「面倒くさい」という理由でひな形を送ってくれない場合もあるかもしれませんので、ひな形を挙げておきます。
裁判所では全ての書類をA4用紙に統一していますので、下のひな形をワードなどでA4用紙に打ち込んで各自作成してください。
債権調査票 債務者氏名 屋号(または旧姓) 1 債務者に対する債権 (1) 債権の種類 (2) 債務者の地位 (3) 取引の内容 (4)債権残高 2 債務者に対する意見(破産の場合には破産又は免責に関する意見)
平成 年 月 日 住所 |
債権調査票(破産債権届出書)の書き方
(1)「債務者氏名・屋号・旧姓」の欄の書き方
債務者氏名の項目には、自分がお金を貸している相手方の氏名を記載します。
例えば、山田花子という女性に100万円を貸していて山田花子氏が自己破産することになったのであれば、「債務者氏名」の項目に、「山田花子」と記載します。
また、もしそのお金を貸している山田花子氏がピアノ教室を営んでおりピアノ教室の名称(屋号)が山田ピアノ教室であるならば、「(屋号または旧姓)」の項目に、「山田ピアノ教室」と記載します。
さらに、山田花子氏がお金を借りた後に結婚し、苗字が旧姓の「鈴木」から現在の「山田」に変更しているような場合は、「(屋号または旧姓)」の項目にお金を貸した当時の苗字を「鈴木」というように記載します。
(2)「債務者に対する債権」の欄の書き方
「債務者に対する債権」の欄には、自己破産する人(債務者)に対する債権(貸しているお金など)が有るか無いかを記載します。
自己破産する人(債務者)に対してお金を貸していたり、売ったものの代金を受け取っていなかったりする場合には「□有(以下の項目へ)」の項目に
「☑有(以下の項目へ)」とチェックを入れます。
弁護士や司法書士から債権調査票のひな形が送られてきたけれども、自分はその人にお金を貸したこともないし売ったものの代金をもらっていないというようなことはなく、その人に対する債権はないという場合は、
「☑無(平成 年 月 日完済)」とチェックを入れます。
自己破産する人に対して過去にお金を貸していたり物を売ったりしてお金を払ってもらっていなかったことはあるが、現時点では全額支払ってもらっているという場合は、「□無(平成 年 月 日完済)」の項目にその全額支払ってもらった日付を記載することになります。
例えば、平成25年に山田花子氏に100万円を貸してその一部を平成26年の年末まで返してもらえなかったが、平成27年の1月31日に借金の残りの全額を返してもらったというような場合には
☑無(平成27年1月31日完済)
と記載します。
(3)「債権の種類」の欄の書き方
「債権の種類」の項目には、自己破産する人(債務者)に対して「お金を払え」と言っているのはどのような理由からなのかということを記載します。
・自己破産する人に「お金を貸している」ときは「□貸付金」に「☑貸付金」とチェックを入れます。
・自己破産する人が何らかの商品を購入し、そのお金を立て替えている場合は「□立替金」の項目に「☑立替金」とチェックを入れます。
・自己破産する人に商品などを販売したもののその代金を未だ受け取っていなかったり、自己破産する人から工事を受注して工事をしているけど未だその工事代金を受け取っていないというような場合は「□売掛金」の欄に「☑売掛金」とチェックを入れます。
・自己破産する人の保証人になっており、保証人として保証債権がある場合は「□保証」の項目に「☑保証」とチェックを入れます。
・自己破産する人に対して貸付金、立替金、売掛金、保証、以外の債権を持っている場合には、「□その他( )」の項目に「☑」を入れカッコの中にその債権の名前を具体的に記載します。
例えば、自己破産する人から殴られて、10万円の医療費と50万円の慰謝料を請求している場合は
☑その他(不法行為に基づく損害賠償金)
などと記載します。
また、離婚して子供の養育費を毎月もらっているような場合は「☑その他(養育費)」と記載します。