自己破産の申立を行うと、基本的に自己破産する人が所有する財産のうち、資産価値があると判断されるものは裁判所が取り上げて競売に掛けられることになります。
また、ローンで購入しているもので、ローンの残額が残っているものについては、ローン会社(信販会社など)が引き揚げて売却し、売却して得た代金とローンの残額を相殺することになります。
ところで、もしもペットの犬や猫が高級な種類で価格が高額なものであったりする場合、自己破産すると裁判所に取り上げられて競売に掛けられたりするのでしょうか?
また、犬や猫などをローンで購入し、ローンの返済中に自己破産することになった場合、その犬や猫ちゃんたちは、ローン会社(債権者)に引き上げられて、売却されてしまったりするのでしょうか?
ということで、今回は犬や猫などのペットと自己破産について考えてみることにいたします。
犬や猫などのペットは高額な種類であっても競売に掛けられたりしない
まず、競売に関して言えば、価格が高額な犬や猫であっても自己破産の際に競売に掛けられたりすることはありません。
命の問題ですから、当然ながら裁判所も競売に掛けたりしません。
犬や猫は、債権者(ローン会社)が引き揚げることもない
また、犬や猫などのローンが残っている場合であっても、ローン会社など債権者が引き揚げて売却することはありません。
命の問題ということもありますし、仮に引き揚げて売却しようと思っても、いったん飼われた犬や猫は売却しようとしても買い手が現れにくいことから、引き揚げて売却ということにはならないのでしょう。
なので、自己破産するときにペットが取り上げられるという心配は全くないと言っても間違いではないので安心してください。
牛や豚、羊、馬などの家畜を「ペット」として飼っている場合はどうなるか?
では、牛や豚、羊や馬など、一般的には「家畜」と呼ばれる生き物を飼育している場合はどうなるのでしょうか?
家畜の場合、処分されるのが前提として飼育されていると考えられるためペットとは判断基準が異なるとなるのではないかということで問題となります。
純粋に「家畜」の場合は裁判所に取り上げられる
まず、牛や豚などの生き物が、純粋に「家畜」として飼育されている場合は、「資産」として裁判所が破産管財人に命じて競売に掛けることになるでしょう。
たとえば、酪農や養鶏をやっている人が自己破産する場合には、そこで飼われている牛や豚、鶏などの家畜は「資産」と判断されますから、裁判所が競売などで売却し、売却した得たお金が債権者に分配されることになります。
ペットと違い、家畜の場合は処分されることが前提で飼育されているので、自己破産の手続においては「物」として売却の対象となります。
ペットとして飼われている場合は通常は取り上げられない
一方、牛や豚などの家畜が「ペット」として飼われている場合は、裁判所に取り上げられることはないでしょう。
牛や豚、馬など家畜とされる生き物であっても、ペットとして飼われている場合は、「処分」される前提で飼育されているわけではありませんので、たとえその牛や豚、馬などに資産価値があったとしても、基本的には競売に掛けられたりしないと考えられます。
「家畜」として飼っているものを「ペット」と偽るのはNG
もっとも、「家畜」として飼育している牛や豚などを「これは家畜ではなくペットです」と裁判所に申告して取り上げられるのを防ごうとしても、それは認められません。
裁判所や破産管財人もバカではありませんので、「これはペットです」と返答しても、その牛や馬を購入した経緯やお金の流れ、飼育環境などを調査して判断することになるため、ウソを言って取り上げられるのを逃れようとしても認められないでしょう。
悪くすれば、財産を隠した(隠匿した)ということで詐欺破産罪(破産法265条1項1号)や説明義務違反(破産法268条1項、同271条)などに該当し逮捕されることもありますのでご注意ください。
鯉(コイ)などの魚はどうなる?
例えば、すし屋さんが自己破産する場合に、いけすに泳いでいる魚などがたくさんいて売却すれば20万円以上になる場合には、裁判所が競売に掛けることもあるでしょう。
熱帯魚を自宅で買っている人が自己破産する場合に、その熱帯魚が競売に掛けられたりするかというところは少々微妙ですが、通常の趣味程度に飼育しているだけなら取り上げられることもないでしょうが、熱帯魚マニアの人が何千匹も飼育していて、売却すれば何十万円にもなるような場合には、破産管財人が競売に掛けることもあるかもしれません。
お金持ちの家でよく見かける鯉(コイ)についても同様で、基本的には競売に掛けられるということはないと思いますが、売却すれば20万円以上するような場合には、やはり破産管財人が競売に掛けたりして売却することもあるでしょう。
まとめ
以上のように、生き物に関しては、それが犬や猫など純粋なペットの場合には取り上げられたりすることはありませんが、家畜や商品として飼育しているものである場合には裁判所が取り上げて換価し、債権者に配当されることもありますのでご注意ください。