法テラスとは、全国に設置された法律相談や法的サービスを身近に利用できるようにするための国の機関です。
全国に設置された法テラスの相談センターでは、弁護士や司法書士と連携し、無料の相談や個別の法律トラブルの解決のための弁護士・司法書士の紹介も行っており、法律問題に悩む人の身近な駆け込み寺として多くの市民に利用されているようです。
ところで、法テラスの業務の一つに「民事法律扶助」という制度の運営があります。
「民事法律扶助」とは、弁護士や司法書士の費用を立て替える制度で、一定の収入に満たない所得しかない人であれば、法テラスに民事法律扶助の申請を行うことで、弁護士や司法書士に依頼する場合に必要となる費用や報酬を法テラスに立て替えてもらうことが可能となります。
そして、その立て替えられる弁護士や司法書士の費用は、すべて法テラスの基準で決定されます。
弁護士や司法書士の報酬は自由化されていますので、各事務所によってそれぞれ報酬の基準も異なりますが、法テラスの民事法律扶助を利用する依頼者の相談を処理する場合には、自分の事務所の報酬基準で報酬を決定することはできず、全て法テラスの報酬基準に従って報酬を決めなければならないと決められているからです。
法テラスにおける債務整理の報酬基準
法テラスの民事法律扶助で立て替えられる弁護士や司法書士の報酬は全国一律の金額に定められており、その金額は下記の表に挙げているように極めて低額に抑えられています。
任意整理の場合
≪任意整理の民事法律扶助報酬基準≫ | |||
債権者数 | 実費 | 着手金 | 合計 |
1社 | 10,000円 | 32,400円 | 42,400円 |
2社 | 10,000円 | 43,200円 | 53,200円 |
3社 | 20,000円 | 64,800円 | 84,800円 |
4社 | 20,000円 | 86,400円 | 106,400円 |
5社以上 | 25,000円 | 108,000円 | 133,000円 |
※上記の金額は目安であり審査会によって事案により金額が増減することがある(たとえば、ヤミ金8社で着手金が86,400円になったという事例もあります)。 |
任意整理とは、弁護士や司法書士が借金の債権者と個別に交渉し、利息や遅延損害金のカットや分割返済の話し合いをする債務整理の手続きをいいます。
法テラス(民事法律扶助)における任意整理の報酬は上記のようになっていますので、例えば債権者が1社だけの任意整理を依頼する場合には、実費10,000円と着手金32,400円の合計42,400円が弁護士や司法書士に支払う費用ということになります。
法テラスの民事法律扶助の立て替え制度を利用すると、この42,400円が法テラスから弁護士や司法書士に支払われることになり、その立て替えられた(支払われた)金額を、相談者の方が法テラスに分割で返済していくことになります。
※なお、法テラスへの立替金の返還は、月々5,000円~10,000円が通常ですが、特別な事情がある場合には月々3,000円の分割も認められています。
ちなみに、法テラスへの立替金の返還は全てゆうちょ銀行の口座からの引き落としとなっていますので、民事法律扶助の立て替え払い制度を利用する場合にはゆうちょ銀行の貯金口座が必要となります。
もっとも、この任意整理の場合には、上記の表を見てもわかるように債権者の数が少ない場合には比較的費用が高くなる傾向があります。
一般の弁護士や司法書士の事務所では、1社あたり20,000円で実費は取らない場合が多いので、任意整理の場合は法テラスの民事法律扶助を利用するよりも普通に弁護士や司法書士の事務所の報酬基準で分割払いをさせてもらう方が安上がりかもしれません。
(※ただし、法テラスは債権者が5社を超える場合は、何社増えてもほぼ10万円程度で抑えられますので、債権者が5社を超えるような場合は法テラスの民事法律扶助を利用する方が安上がりな場合も多いです)
なお、この任意整理の報酬基準はヤミ金の事件についても適用されています。
闇金の場合は、通常の任意整理よりもかなり高い金額を報酬としている弁護士や司法書士は多いので、ヤミ金を相談する場合は民事法律扶助を利用する方が断然安上がりとなります。
ちなみに、私が過去に受任した案件では、民事法律扶助の立て替えを利用したところ、ヤミ金30件ぐらいと交渉したにもかかわらず、支払われたのが10万円ちょっとしかなかったものもあります。
なので、ヤミ金から借り入れがある人は民事法律扶助を利用する方がよいと思います(もっとも、依頼を受ける弁護士や司法書士としては「やってられねーよ」と思うかもしれませんが・・・)。
自己破産の場合
≪自己破産の民事法律扶助報酬額≫ | ||||
– | 債権者数 | 手続き報酬 | 実費 | 備考 |
弁護士 | 1社~10社 | 129,600円 | 23,000円程度 (注) | 管財事件(破産管財人が 選任された場合)は手続 報酬が最高で216,000円 になることがある。 |
11社~20社 | 151,200円 | |||
20社以上 | 183,600円 | |||
司法書士 | 20社まで | 86,400円 | 17,000円程度 (注) | 管財事件でも同額。 |
21社以上 | 97,200円 | |||
注)破産管財人が選任された場合は、別途破産管財人の報酬(予納金)が最低でも200,000円程度必要になる。 |
自己破産の場合は、上記のように一般の弁護士事務所や司法書士事務所の報酬基準よりもかなり低額に設定されていますので、自己破産を依頼する場合には積極的に法テラスの民事法律扶助を利用する方がよいでしょう。
上記の表にあるように、債権者が10社までであれば、実費を合わせても弁護士なら154,600円、司法書士なら103,400円しかかかりませんのでかなり安いと思います。
※なお、弁護士や司法書士の事務所では自己破産の報酬について「基本報酬10万円」と謳いながら、「債権者1社ごとに20,000円を追加します」などとして債権者が増えるごとに料金を加算するところが多いですが、法テラスの報酬基準では債権者が増えるごとに金額が加算されるということはありません。
以上のように、法テラスの報酬基準は、任意整理で債権者が極端に少ない場合を除いて、通常の弁護士や司法書士事務所の報酬基準よりかなり低額に設定されていることが分かります。
なので、債務整理を低額に抑えたいという人は、積極的に民事法律扶助を利用していくのが賢い債務整理の方法だと思います。
なお、法テラスの民事法律扶助の利用や実際に弁護士や司法書士に依頼する倍の手順についてはこちらのページでもレポートしています。
≫ 法テラスの法律扶助(立替制度)の収入審査が「ゆるい」って本当?
なお、上記の報酬基準の「実費」とは、任意整理の場合には電話代やコピー代など、自己破産の場合は電話代やコピー代だけでなく官報公告費用や収入印紙の費用をいいます。
実費についてはたとえ実際に使用した実費が立て替えられた実費より少ない場合であっても返還されることはありません。