自己破産の申立書を作成している弁護士や司法書士(またはそれらの事務員)は、「不利な事実を極力隠そうとするタイプ」と「不利な事実も隠さず全て明らかにするタイプ」の2つのタイプに分類されると思います。
「不利な事実を極力隠そうとするタイプ」の弁護士や司法書士(またはそれらの事務員)は、自己破産をする人にギャンブルや浪費などの事実があると、極力その事実を隠して申立書を作成しようとします。
一方、「不利な事実も隠さず全て明らかにするタイプ」の弁護士や司法書士(またはそれらの事務員)は、自己破産をする人にギャンブルや浪費など、自己破産の手続き上問題のある事実があったとしても、それらの事実を嘘偽りなく正直に申立書に記載して手続きを進めようとします。
この「不利な事実を極力隠そうとするタイプ」と「不利な事実も隠さず全て明らかにするタイプ」の作成する申立書では、いったいどちらの方が手続きを安全に進めることができるのでしょうか?
自分に不利な事実もすべて嘘偽りなく記載するのが基本
弁護士や司法書士も考え方がそれぞれ異なりますので、一概にどちらのタイプが作成する申立書が優れているとは言い切れませんが、私が申立書を作成する場合は不利な事実もすべて記載するようにしています。
パチンコだろうが風俗だろうが浪費だろうが、たとえそれが少額で数回しか利用していなくてもすべて記載するようにしています。
なぜなら、あらかじめ自分の過ちをすべて告白する方が、より免責(借金の返済を免除してもらうこと)を受けやすくなると思うからです。
自分に不利な事実を最後まで隠し通せると100%言えるのでのであれば、不利な事実を隠して申し立てをするメリットはあるかもしれません。
しかし、この世の中に「絶対」ということはありませんし、裁判官や破産管財人もバカではなく、1年間に何十件何百件と破産事件を処理しているその道のプロなのですから、最後まで隠し通せる保証はどこにもないでしょう。
しかも、手続きの途中で隠していた不利な事実が裁判官や破産管財人にバレてしまった場合、裁判官や破産管財人はどう思うでしょうか?
「このやろう、いろいろ隠しやがって、ずるがしこい奴だな、ほかにも隠していることがあるんじゃないのか?」
と不信感は増大し、あらぬ疑いをかけられてしまうかもしれません。
そうなってしまうと、破産管財人の調査は厳しくなりますし、手続きの期間も長くなってしまうでしょう。
そもそも、裁判官や破産管財人は、申し立てられた自己破産案件の調査を行いますが、その調査は申立した人を振るい落とすためにしているのではありません。
法律上は「免責不許可事由」という借金の返済の免除(免責)を認めない事由が明記してありますが、その免責不許可事由に該当するからと言って、裁判官や破産管財人は免責を不許可にしたいなどとは思っていないのです。
もしも免責不許可事由があるからと言って免責を不許可にしてしまえば、その人は路頭に迷ってしまうでしょう。
自己破産が認められないとなると、借金の返済ができない人が何も救済されないまま世間に放り出されてしまうことになり社会不安を増大させるだけですから、裁判官や破産管財人も免責不許可事由があっても最終的には裁量免責を出そうと考えているのです。
≫ 陳述書の作成手順(15)裁量免責事由を申告する欄の記載方法
自己破産で一番大切なのは、過去の過ちを真摯に見つめなおしたうえで二度と過ちを犯さないと決意するところにあります。
自分に不利なことを隠し通せたとしても、そのような人は反省する機会を失ってしまうことになりますから、2度3度と自己破産を繰り返すことになってしまうでしょう。
たとえ自分に不利な事実であってもきちんと反省した態度を示せば、裁判官や破産管財人も理解してくれるものです。
以上のような理由から、私の場合は自己破産に不利な事実があったとしても、その事実はすべて申立書に記載するようにしています。
もちろん、そのうえで真摯に反省していることも記載し、債権者や裁判官、破産管財人などの理解を受けられるよう努力することも忘れませんが・・・。
ちなみに、不利な事実を申立書に記載したからといって過去に手続き上問題になったことは一度もありません。
裁判官や破産管財人からギャンブルや浪費、風俗などの免責不許可事由をとがめられたことも一切ありませんし、手続きが伸びたこともありません。
なので自己破産を弁護士や司法書士に依頼する場合は「不利な事実を極力隠そうとするタイプ」よりも「不利な事実も隠さず全て明らかにするタイプ」の弁護士や司法書士がいる事務所に依頼する方が「正解」なのではないかと、個人的には思っています。