看板や雑誌でよく見かける「クレジットカードの現金化」の広告ですが、これはクレジットカードのショッピング枠を不正に使用して現金化する行為をいいます。
クレジットカードを管理する信販会社などではこのクレジットカードの現金化を認めていませんので、もしカードのショッピング枠を利用して現金化をした場合には、利用規約違反となってしまいます。
また、クレジットカードの現金化行為は信販会社を欺いてお金を借りることになるため、詐欺罪に問われる可能性があり犯罪になってしまう恐れがあるためやってはいけない行為とも言えるでしょう。
このように、クレジットカードのショッピング枠を現金化する行為は不正な行為と言えますので、自己破産する場合にそのような事実がある場合には当然ながら裁判所の厳しいチェックを受けることになります。
そこで問題となるのが、「クレジットカードの現金化が免責不許可事由になる」かという点です。
免責不許可事由に該当してしまうと、自己破産の申立を行っても借金の返済の免除が認められなくなり、借金の返済をしなければなりませんから受ける不利益は重大です。
ちなみに、免責不許可事由については陳述書の作成手順(15)裁量免責事由を申告する欄の記載方法のページを参考にしてください。
そこで今回は、「クレジットカードの現金化」は免責不許可事由になるか、という問題について考えてみることにいたしましょう。
クレジットカードの現金化の態様
クレジットカードの現金化を行っている業者は概ね次の3種類の業態で現金化行為を行っています。
A | 高額な商品をカードで購入させ、その商品の何割かの金額で買い取る業態 |
たとえば、クレジットカードのショッピング枠を利用してブランド物の30万円のバッグを購入させ、そのバッグを20万円で買い取る業態(差額の10万円は手数料などの名目で差し引かれることが多い) |
B | 価値のない商品を高額な値段で購入させ、その商品を低額な値段で買い取る業態 |
たとえば、クレジットカードのショッピング枠を利用して商品価値が100円程度しかないおもちゃの指輪を30万円で購入させ、そのおもちゃの指輪を20万円で買い取る形をとって20万円の現金を渡す業態 |
C | 価値のない商品を高額な値段で購入させ、商品とともに購入価格の何割かを差し引いた金額をキャッシュバックとして渡す業態 |
たとえば、クレジットカードのショッピング枠を利用して商品価値のない100円の商品(ただし、キャッシュバック20万円が付いている商品)を30万円で購入させ、20万円をキャッシュバッグとして渡す業態 |
クレジットカードの現金化は免責不許可となるか?
結論から言うと、クレジットカードのショッピング枠を現金化する行為は、確実に免責不許可事由となります。
なぜなら、上記で例示したA・B・Cのようなクレジットカードの現金化の態様は、破産法第252条1項に列挙された免責不許可事由に完全に該当することになるからです。
免責不許可事由が規定された破産法第252条1項には免責不許可事由として1号から11号までが列挙されていますが、そのうちの1号と2号には免責不許可事由が次のように規定されています。
【破産法第252条1項1号】
債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
【破産法第252条1項2号】
破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
そして、前述したクレジットカードの現金化のAからCまでの態様を、この条文に当てはめていくと、次のように免責不許可事由に該当することが分かります。
Aの態様
前述のAの態様は「高額な商品をカードで購入させ、その商品の何割かの金額で買い取る」というものでした。
このような現金化では、当初購入した商品の何割かの現金しか受け取ることができませんでしたので(Aの例では30万円の商品を購入したのに20万円しか受け取れない)、10万円分の”不利益な処分”を行ったと言えますし、財産の価値を10万円分”不当に減少させた”ということになります。
そのため、上記の「破産法第252条1項1号」に該当することになり、免責不許可事由になるということが言えるでしょう。
Bの態様
前述のBの態様は「価値のない商品をカードを利用して高額な値段で購入させ、その商品を低額な値段で買い取る」というものでした。
このような現金化の場合は、もともと商品価値のない物を高額な値段で購入し、その立替金を借金として負担する行為となりますから、実際の商品価値に比べて”著しく不利益な条件で債務を負担する行為”といえます。
そのため、上記の「破産法第252条1項2号」に該当することになり、免責不許可事由になるということが言えるでしょう。
Cの態様
前述のCの態様の態様は「価値のない商品をカードを利用して高額な値段で購入させ、商品とともに購入価格の何割かを差し引いた金額をキャッシュバックとして渡す」というものでした。
このような現金化の場合も、Bの場合と同じように、もともと商品価値のない物を高額な値段で購入し、その立替金を借金として負担する行為となりますから、実際の商品価値に比べて”著しく不利益な条件で債務を負担する行為”といえます。
そのため、上記の「破産法第252条1項2号」に該当することになり、Bの場合と同様、免責不許可事由になるということが言えるでしょう。
以上のように、クレジットカードのショッピング枠を利用して現金化する行為は、免責不許可事由に該当することになります。
免責不許可事由に該当するということは、たとえ自己破産の申し立てを行っても原則として借金の返済の免除が認められないことになりますから、絶対にやってはいけない行為と言えるでしょう。
なお、そうとは知らず、既にカードの現金化をやってしまったという場合には、裁判所にその事情を説明し、真摯に反省していることを伝えて裁量免責制度(免責不許可事由でも裁判官の裁量で特別に免責を認める制度)を受けることができるよう、裁判所に働きかけていくことが必要です。
≫陳述書の作成手順(15)裁量免責事由を申告する欄の記載方法