(2)自由財産拡張の「上申書」を提出する方法
もう一つは、自己破産の申立書を提出するのと同時に、自由財産の拡張が必要となる事情を記載した「上申書」を提出する方法です。
前述したとおり、自己破産の申立書を提出する時点ではその手続きが「同時廃止型」で進められるか「破産管財型」で進められるかは分かりません。
自由財産の拡張は破産管財人の意見を聴く必要があるため「破産管財型」の自己破産でしか行うことはできませんが、「破産管財型」で進められるかいまだ不明な自己破産の申立書を提出する段階では、裁判所に自由財産の拡張を求めることはできません。
しかし、自己破産をする人にとっては、自己破産の申立書を提出する段階であっても、「この財産は本来自由財産ではないけれども、自由財産に含めてもらわなければ生活が困難になる」と認識していることも少なくありません。
そのような時は、自己破産の申立書を提出するのと同時に、「自由財産の拡張に関する上申書」を作成して提出し、申し立ての段階で裁判所に自由財産の範囲を拡張するよう促すことも可能です。
自由財産の拡張の申立書の記載例
前述のとおり、自由財産の拡張は申立書を提出して求めることが可能です。
そこで、ここでは自由財産の拡張申立書の記載例を参考として挙げておくことにいたしましょう。
なお、下記の記載例は自動車と生命保険の2つの財産について拡張を求めるという事例を基に作成しています。
平成〇年(フ)第○号 ←開始決定書に記載されている事件番号を書く
破産者 破産太郎
自由財産拡張の申立書
○地方裁判所第○民事部 御中 ←開始決定書に記載されている部署名を書く
申立人 破産太郎 ㊞
1 申立の趣旨
別途添付する財産目録記載の財産のうち、同財産目録の自由財産拡張申立欄にて☑を付した財産について、破産財団に属しない財産とする。←この文章は丸写しでOK
2 申立の理由
(1)通勤及び親の介護のため自家用車が必要であること
申立人が居住しているのは電車やバスの利用が極めて不便な地域であり、通勤や生活必需品の購入には自家用車の利用が欠かせない存在となっている。また、同居している父親は認知症を患い下半身も不自由であることから車いすで生活しているため、病院への送迎は自家用車の利用が不可欠といえる。そのため、所有している自家用車が破産財団に組み込まれるとなれば、通勤や通院が事実上不可能となり、その生活に著しい困難を招くことが予想される。
(2)医療保険の継続が必要であること
申立人は幼少の頃よりぜんそくを患っており、成人してからも併発される合併症にたびたび悩まされている。そのため、通常の人よりも病気に罹患する確率が極めて高くなると想定されることから、そのリスクを軽減するためにも医療保険の継続が必要不可欠と考えられる。仮に現在契約している医療保険を解約し自己破産後に改めて契約するとなれば、保険料が高くなり経済的負担が増大する可能性が予想され、生活再建に著しい困難を招く恐れがある。
以上
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自動車等目録
No |
車名 |
年式 |
購入時期 |
回収見込額
(評価額) |
所有権留保 |
自由財産
拡張申立 |
1 |
トヨタプリウス |
H26 |
平成○年〇月○日 |
35万円 |
有□・無☑ |
☑ |
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|
有□・無□ |
□ |
※自動車ローンが残っている場合は所有権留保を(有☑)としてください。 |
保険目録
No |
保険会社 |
証券番号 |
解約返戻金 |
備考 |
自由財産
拡張申立 |
1 |
〇〇医療保険㈱ |
****-****** |
金〇万円 |
なし |
☑ |
2 |
㈱〇〇生命 |
**-*****-** |
金〇万円 |
契約者貸付金〇万円 |
□ |
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|
□ |
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注)上記の記載例は当サイトの管理人が独断と偏見で作成したものです。上記の記載例を参考にして申し立てをした場合であっても、当サイトの管理人は一切責任を負いませんのでご了承ください。
自由財産拡張の上申書の記載例
次に、自己破産の申立書と同時に提出する場合の「自由財産拡張の上申書」を考えてみると、このような記載例になります。
○地方裁判所破産係 御中
上申書
申立人 破産太郎 ㊞
自由財産の拡張に関する上申書
1 所有する自動車について
申立人である私が居住しているのは電車やバスの利用が極めて不便な地域であり、通勤や生活必需品の購入には自家用車の利用が欠かせない存在となっています。また、同居している父親は認知症を患い下半身も不自由であることから車いすで生活しているため、病院への送迎は自家用車の利用が不可欠といえます。そのため、所有している自家用車を失うことになれば、通勤や通院が事実上不可能となり、その生活に著しい困難を招くことが予想されます。
以上の理由から、仮に本件申立が破産管財型の手続で処理されるような場合は、所有する下記自家用車については自由財産として処理してくださいますよう上申いたします。
2 医療保険について
申立人である私は、幼少の頃よりぜんそくを患っており、成人してからも併発される合併症にたびたび悩まされております。そのため、通常の人よりも病気に罹患する確率が極めて高く、そのリスクを軽減するためにも医療保険の継続が必要不可欠と考えていますが、仮に現在契約している保険を解約し自己破産後に改めて契約するとなれば、保険料が高くなり経済的負担が増大する可能性があることから、生活再建に著しい困難を招く恐れがあるものと思料いたします。
以上の理由から、仮に本件申立が破産管財型の手続で処理されるような場合であっても、現在契約している医療保険については自由財産として処理してくださいますよう上申いたします。
記
– |
財産の種類 |
備考 |
評価額 |
1 |
トヨタ〇〇 |
H26年式 |
35万円 |
2 |
㈱X生命の生命保険 |
|
30万円 |
以上
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注)上記の記載例は当サイトの管理人が独断と偏見で作成したものです。上記の記載例を参考にして申し立てをした場合であっても、当サイトの管理人は一切責任を負いませんのでご了承ください。