自己破産を依頼した弁護士が過払い金を回収したがる場合の注意点

自己破産をしなければならないほど借金が膨れ上がっている場合であっても、利息の再計算をしてみると一部の債権者に過払い金(利息の払い過ぎ)が発生しているという事案は多くみられます。

「過払い金」は、債権者から返してもらえるお金ですから、債権者に過払い金の返還請求を行うことで、そのお金を返還してもらうことが可能です。

そのため、弁護士や司法書士に自己破産の申立を依頼している場合には、自己破産の申し立てをする前に過払い金を回収し、その後で改めて自己破産の申立を行うという段取りで借金の整理が行われることも多いでしょう。

しかし、このように弁護士や司法書士に自己破産の申立を依頼するのと並行して過払い金の返還請求を依頼している場合には、必要以上に過払い金の返還請求をされないように注意しなければなりません。

なぜなら、自己破産の手続とは別に過払い金の返還請求手続が行われるということは、その過払い金請求を行った弁護士なり司法書士なりが、過払い金の返還請求手続きについても報酬や手数料を取ることになり、自己破産の申立をする人の資産を目減りさせてしまう結果となり、免責不許可事由として自己破産による借金の免除が認められなくなる可能性があるからです。

(免責不許可事由については陳述書の作成手順(15)裁量免責事由を申告する欄の記載方法のページを参考にして下さい)

広告

過払い金の回収を弁護士や司法書士に依頼した場合、報酬を差し引かれることによって資産としての過払い金が目減りすることになる

過払い金の返還請求を弁護士や司法書士が行う場合には、手続き報酬(成功報酬)として回収された金額の20%~30%に当たる金額が回収された過払い金から差し引かれることになります。

例えば、借金の総額が1000万円あり、その借金とは別に150万円の過払い金が発生していた場合であっても、過払い金返還請求の報酬(ここでは30%と仮定します)として45万円(150万円×0.3=45万円)が差し引かれることになりますから、150万円全額の回収がなされたとしても実際に帰ってくるお金は105万円ということになります。

そのため、過払い金の返還請求をした場合には、返還請求に際して生じた弁護士(司法書士)報酬の分だけ「過払い金」という資産が目減りするということになってしまうのです。

もちろん、自己破産の手続き報酬を弁護士や司法書士に支払うことができないため、過払い金を回収して、その回収したお金を自己破産の申し立て費用に充てるという行為は問題とならないでしょう。

しかし、自己破産の申し立て費用を大幅に超えた金額の過払い金を弁護士や司法書士が回収する場合には、はたしてその過払い金の回収が必要不可欠なものなのか考えてみる必要があると思われます。

たとえば、借金の総額が1000万円で、過払い金が貸金業者3社に対してそれぞれ50万円ずつ発生しているとしましょう。

この事例で、弁護士の自己破産報酬が30万円、過払い金の返還請求の報酬が回収された金額の30%と考えると、過払い金が発生している1社から50万円の過払い金を回収すれば、自己破産の費用は賄えることになります。

※50万円の過払い金を回収すればその報酬は50万円×0.3=15万円となり、自己破産の報酬30万円と合計しても45万円にしかなりませんから、過払い金を50万円回収すれば残りの2社に対する過払い金100万円は回収する必要がない(裁判所に選任された破産管財人が回収すればよい)ということになります。

ここでもし、残りの2社の過払い金100万円も回収してしまうと、さらに30万円が報酬として差し引かれることになりますから、30万円分必要以上に資産が目減りするということになってしまいます。

このように、自己破産の費用をねん出するために過払い金の返還請求をすることは資産を目減りさせることにはなりませんが、その範囲を超えて過払い金の返還請求をすることは、資産を目減りさせることになってしまうのです。

過払い金の返還請求は、マニュアル化された手続であり、弁護士や司法書士にとっては手っ取り早くお金を儲けることができる仕事の一つとなっています。

そのため、自己破産の手続において必ずしも必要としないにもかかわらず、必要以上に過払い金の回収を行い、過払い金の手続き報酬を多く稼ごうと考える弁護士や司法書士も少なからず存在します。

なので、自己破産の申立を弁護士や司法書士に依頼する場合には、自己破産の手続き費用以上に過払い金の返還請求をしていないか、よく注意しておく必要があるでしょう。

自己破産の申立を依頼したのに、やたらと過払い金の返還請求をするよう勧めてくる弁護士や司法書士には注意した方がいいかもしれませんね。

 


タイトルとURLをコピーしました