自己破産の申立てをすると、自宅にかけている火災保険はどうなってしまうのでしょうか?
自宅は、持ち家の人と賃貸の人に分かれると思いますが、どちらの場合も火災保険をかけているのが通常だと思いますので、自己破産に際して火災保険がどのような扱いを受けてしまうのか、気になっている人は多いと思います。
そこで今回は、自己破産の手続きをすると火災保険はどのような取り扱いを受けてしまうのか、という点について考えてみることにいたします。
火災保険は原則として解約されない
結論から言うと、火災保険については自己破産の申立をしても原則として解約されることはありません。
生命保険の場合には解約すると解約返戻金というお金が払い戻される場合があり、これが破産手続上「資産」と判断され、裁判所(破産管財人)が取り上げて債権者に分配する必要があります。
しかし、火災保険の場合は解約しても解約返戻金が発生しないのが通常なので、解約するほどの資産的価値がないと判断されますから、自己破産の手続きにおいては解約されないというのが基本的な取り扱いです。
また、火災保険を解約してしまうと、仮に火災が起きてしまった場合には保険が下りず、場合によっては多額の損害賠償を請求されてしまうことになり、生活の再建に支障をきたしてしまいます。
その点でも、火災保険は必要と判断されますので、自己破産の手続きにおいては解約されないのが原則とされているのです。
※火災保険は換価が可能な資産とはみなされないのが一般的ですが、自己破産の申立書の作成上は資産説明書(資産目録)に資産として記載することが求められ、添付書類として火災保険の保険証券の写しを提出する必要があります。
自宅が競売や任意売却される場合は火災保険も解約される
前述したように、火災保険については自己破産の手続き上解約されないというのが基本的な取り扱いです。
しかし、所有している自宅が競売されたり、任意売却されたりする場合は火災保険も解約されることになります。
自宅に資産価値があると判断される場合は、破産管財人が自宅を競売にかけるか任意売却をするかして売却し、売却代金が債権者に分配(配当)することになります。
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そうなると、その自宅に火災保険をかけておく必要はありませんから、火災保険も解約されてしまうことになるでしょう。
もっとも、自宅を競売や任意売却で売却される場合は、賃貸アパートや賃貸マンションを新たに借りて転居することが通常で、その際に火災保険を新しい転居先に移すという方法も可能です。
そのため、解約するか否かは自己破産を依頼する弁護士や司法書士、また裁判所から選任される破産管財人とよく協議して決める方が良いでしょう。
居住用ではない物件の火災保険は解約される(こともある)
前述したように、自宅の火災保険は、競売や任意売却の対象となるものを除いて解約されることはないと考えられます。
ただし、居住用の物件ではない家屋の火災保険については、破産管財人が解約してしまうこともあります。
たとえば、自己破産する人が倉庫の代わりにワンルームアパートを賃貸で借りていたとします。
このような場合、破産管財人が、そのワンルームアパートを借りる必要性がないと判断するようであれば、そのアパートの賃貸借契約は解約され、そのワンルームアパートにかけていた火災保険も解約されることになるでしょう。
また、自営業者の場合も同様で、事業のために借りている物件がある場合には、破産管財人が調査してその物件を利用し続ける必要性がないと判断されればその物件に契約している火災保険も解約されることになると思われます。
以上のように、火災保険については解約されないのが通常ですが、その物件が居住用でなく、必要性がないと判断されるものについては解約されることになるでしょう。
もしも解約されてしまうような火災保険がある場合には、裁判所から選任される破産管財人や、自己破産を依頼する弁護士や司法書士に事情をよく説明して理解を得ることが重要となってくると思います。