”名義借り”や”名義貸し”による借金をしてはいけないと聞いたことがある人は多いと思います。
しかし、なぜ”名義借り”や”名義貸し”による借金をしてはいけないのか、その理由を正確に理解している人は意外に少ないように感じます。
そこで今回は、”名義借り”や”名義貸し”による借金をなぜしてはいけないのか、また、”名義借り”や”名義貸し”による借金をした場合にどのような不都合が起こり得るのか、という問題について考えてみることにいたしましょう。
「名義借り」による借金をしてはいけない理由
「名義借り」による借金をしてはいけないのは、他人の名義を借りて銀行や貸金業者からお金を借りてしまうと、その銀行や貸金業者に対する”詐欺”になってしまうからです。
他人の名義を借りるということは、「その他人」に成りすましてお金を借りることになります。
例えば、Aさんが友人のBさん名前を借りて「Bさん」としてX銀行からお金を借りたとしましょう。
この場合、X銀行はAさんのことを「Bさん」と思ってお金を貸すことになります。
X銀行としては、「Bさん」の職業や収入、所有する貯金や財産を審査して「Bさんならお金を貸してもちゃんと返してくれるだろう」と考えて「Bさん」にお金を貸している状態になるわけです。
しかし、実際にX銀行からお金を借りるのはAさんであるわけですから、AさんはX銀行をダマして、X銀行からお金を受け取っていることになります。
すなわち、Aさんは「自分がBさんだ」と偽ってX銀行からお金をだまし取ることになるのです。
この場合、AさんがBさんの承諾を得てBさんの名義で借金をしていたとしても、結論はおなじです。
なぜなら、たとえBさんの承諾を得ていても、X銀行をだましてBさんに成りすまして借金をしているのは同じだからです。
そして「他人をだましてお金を受け取ること」は刑法246条の詐欺罪(wikipedia詐欺罪)に該当しますから、当然ながら犯罪行為となります。
この場合、Aさんがお金を借りた後にきちんとお金を返したとしても詐欺罪であることを逃れることはできません。
詐欺の犯人が警察に捕まった後に被害者にお金を返しても無罪になるわけではないのと同様に考えればわかるでしょう。
このように、他人の名義を借りて借金をする「名義借り」による借金は、詐欺罪という立派な犯罪行為となりますので絶対にしてはいけないのです。
「名義貸し」による借金をしてはいけない理由
「名義貸し」による借金をしてはいけない理由は、詐欺の共犯になってしまうからです。
前述のように、「名義借り」による借金は、お金を貸す側(銀行や貸金業者)に対する詐欺罪となります。
前述の例で説明すると、Bさんの名義を借りてX銀行からお金を借りたAさんはX銀行に対する詐欺罪に該当しますが、Bさんに何らの罪も発生しないかと言ったらそうではありません。
もちろん、Bさんの知らない間に、Aさんが勝手にBさんの名義を使ってBさんに成りすましてX銀行からお金を借りたのであれば、Bさんは何の罪にも該当しません。
しかし、BさんがAさんに自分の名義を貸すことに承諾した場合は事情が異なってきます。
BさんがAさんに対して名義を貸すことに承諾したということは「名義を貸した」ということになります。
BさんがAさんから「Bさんの名義を貸してくれない?」と頼まれて、「いいよ、名義を貸してあげる」と承諾してAさんがBさんの承諾を得た状態でX銀行からお金を借りている場合には、Bさんは「名義を貸すこと」によってAさんの詐欺に協力したことになります。
詐欺罪に協力したことになるのですから、当然BさんはAさんの共犯者となってしまいます。
このように、単に「名義を貸しただけ」であっても、詐欺罪という立派な犯罪の共犯ということになりますので、「名義貸し」による借金は絶対にしてはいけないのです。
「名義借り」や「名義貸し」による影響とは?
名義借りや名義貸しによる借金は、前述したようにそれが「詐欺罪」という犯罪を構成しますので、絶対にしてはならない行為と言えます。
また、知人から「名義を貸して」と頼まれ断れきれずに名義を貸してしまった場合には、結局その借金は「自分の借金」となり、法律的には「自分が返さなければならない借金」となります。
そのため、たとえその友人が「迷惑をかけないから」と言っていたとしても結局その友人が返せなくなった時には自分が返済していかなければなりません。
他人から名義を借りるような人は、自分の名義ではお金を借りれなくなった人(言い換えればこれまで借金を踏み倒し続けてきた人)なのですから、そのような人がまじめにお金を返していくはずがありません。
自分の名義を貸すということは極めて高いリスクを負うことになることを肝に銘じておきましょう。