(4)「債務者の地位」の欄の書き方
「債務者の地位」とは、自己破産する人がお金を借りている人本人なのか、保証人なのかということを記載します。
お金を貸しているのが自己破産する人本人であれば、「□主債務者」のところに「☑主債務者」とチェックを入れます。
また、その人に保証人が付いている場合には「(保証人 □有:氏名 □無)」の欄に保証人の氏名を記載します。
例えば、自己破産する山田花子にお金を貸しており、その夫である山田太郎が保証人となっている場合には
☑主債務者(保証人 ☑有:氏名 山田太郎 □無)
と記載します。
保証人が付いていない場合は「☑無」とチェックを入れておきます。
一方、自己破産する人がお金を貸している本人ではなく、その保証人である場合には、「□保証人」の欄に「☑保証人」とチェックを入れます。
また、「(主債務者 氏名 )」の欄にお金を貸している本人の氏名を記載します。
例えば、お金を貸しているのは山田花子だが、保証人となっている山田太郎が自己破産することになったような場合に山田太郎の自己破産手続に提出する債権調査票には、
☑ 保証人(主債務者 氏名 山田花子)
と記載します。
(5)「取引内容」の欄の書き方
取引内容の欄には、最初の貸付日とその金額、最後の貸付日とその金額、最後の返済日とその金額を記載します。
これは、自己破産の申立書には「最初の貸付日」「最後の貸付日」「最後の返済日」を記載する欄が設けられているため、その欄を埋める必要があることから記載するようになっています。
例えば山田花子に平成20年の1月1日に10万円を貸したのが最初で、その後平成21年2月2日に20万円、平成22年3月3日に30万円、平成25年4月4日に40万円を貸しており、数か月おきに数万円づつ返済してもらっていたが、平成26年12月31日に3万円を返済してもらったのを最後に、現在(現在を平成27年3月1日とします)まで返済が滞っているというような場合には、
①最初の貸付等 平成20年1月1日 10万円
②最後の貸付等 平成25年4月4日 40万円
③最後の返済 平成26年12月31日 3万円
と記載します。
一度しか貸していない場合には②の項目は空欄にしておいて構いませんし、一度も返済をしてもらっていないような場合には③の欄は空欄のままで提出して問題ありません。
(6)「債権残高」の欄の書き方
債権残高の欄には、今現在いくら返してもらっていないお金が残っているか、その金額を記載することになります。
例えば、山田花子に100万円を貸していて、そのうち70万円は返してもらったが、残りの30万円を返してもらっておらず、その利息が3万円、遅延損害金が1万円になるというような場合には
①残元金 30万円
②利息 3万円
③遅延損害金 1万円
④合計 34万円
というように記載します。
無利息で貸し付けている場合などは利息の欄は空欄で構いません。
なお、利息や遅延損害金の計算方法が分からないという人は利息や遅延損害金の欄は空欄にして提出しても構いませんが、もし債務者(自己破産する人)に財産があり配当がおこなわれる場合であっても、基本的にここに記載した金額しか配当の基礎となる金額に算入されないことになりますので、記載するかしないかは自己責任となります。
(7)「債務者に関する意見」の欄の書き方
「債務者に関する意見」の欄には、自己破産する人(債務者)に何か言いたいことがあったり、裁判所に対して何か要望があったりする場合に記載します。
銀行や信販会社など貸金業を営んでいる債権者は、ほぼ全て空欄で提出してきますが、債権者が一般の人の場合は、ときどき意見を書いてくることがあります。
書き方にルールはないので自分の書きたいことを書いておけば問題ありませんが、書いたからと言って裁判所がその通りに手続きをするといったことはあまり期待できないでしょう。
例えば、山田花子が結婚してくれると言ってくれたから100万円貸してあげたのに、お金を貸した後すぐに別れ話を切り出され、その数週間後に自己破産すると連絡が入ったのは100万円持ち逃げされたような気がして納得いかないというような場合には
山田花子には、私と結婚の約束をした後、親の入院費用が必要ということで100万円を貸してあげたのに、お金を受け取った1週間後には別れ話を持ち出してお金も返してもらえなくなりました。結婚を餌にお金を騙し取られたような状態なので絶対に返してもらいたいです。
などと記載しておけばよいと思います。
(8)「住所・名前・担当者・電話番号・FAX番号」の欄の書き方
住所・名前・担当者・電話番号・FAX番号には、自宅の住所や電話番号を記載します。
電話番号は、連絡がつく状態なら携帯電話でも構いません。FAX番号もFAXがない場合は記載しなくてOKです。
債権調査票を書きたくない場合
面倒だったり、自己破産手続に協力してあげる気持ちもない場合は、債権調査票を提出しなくても特に問題ありません。
ただし、債権調査票を提出しないことで受ける不利益(たとえば配当に参加できない可能性があるとか)は自分が甘受しなければならないので自己責任となります。
たとえば、50万円を貸している友人が自己破産する際に友人の方では40万円しか借りていないと思っている場合には、債権調査票を提出しない場合には自己破産の申立書を作成する弁護士や司法書士としても正確な債権額がわからないため「40万円」と自己破産の申立書に記載して申立を行うことになります。
仮にこの場合にその友人に売却できるような資産を有していたような場合は配当がなされますが、債権調査票には「40万円」としか記載されていないため配当の手続きは「40万円」の債権額を基準にして進められることになりますのでそのまま異議を出さないな場合は受け取る債権額が低くなったりする場合もあり得ることになるでしょう。
もちろん、債権調査票を提出しない場合でも、弁護士や司法書士が債権者として申立書に挙げている場合には、裁判所から「あなたがお金を貸している人が自己破産しましたので意見がある場合は申し出てくださいね」という書類が届くことになりますから、その後や配当手続きの際に債権額を申出ることは可能ですが、何もしないと不利益を受ける場合も有るので注意が必要です。
そのため、債権調査票の提出を求められた場合にはできるだけ協力してあげる方が良いのではないかと思われます。