自己破産の申し立てにおいては、有価証券を所有している場合は「資産」として裁判所に申告しなければなりません。
これは、有価証券は必要に応じてすぐにお金に代えることが出来るため、その価値の多寡によっては換価されて債権者に分配されることになるためです。
そこで、ここでは自己破産申立書の資産説明書(資産目録・財産目録)の記載事項のうち「有価証券」の欄の記載方法(書き方)について考えてみることにいたしましょう。
なお、自己破産申立書の作成方法についてはこちらの目次ページから必要な書類のページに移動してご確認をお願いします。
資産目録(資産説明書・財産目録)に記載すべき「有価証券」とは?
資産説明書(資産目録・財産目録)に記載すべき「有価証券」とは、具体的に次のようなものが挙げられます。
- 株券
- 小切手
- 手形
- ゴルフ会員権
- 商品券
- プリペイドカード
- 郵便小為替 など
「破産手続上の有価証券」=「税法上の有価証券」とはならないかもしれませんがほぼ同じと考えても間違いではないと思いますので、印紙税法上の有価証券が挙げられている国税庁のサイトを参考にしても良いでしょう。
資産説明書(目録)の「有価証券」の欄の様式
自己破産の申立書は各裁判所によってその様式に若干の違いがあります。
そのため、資産説明書(資産目録・財産目録)の様式も各裁判所によって異なりますが、ここでは東京地裁と福岡地裁で使用されている資産説明書(資産目録・財産目録)の様式を参考として挙げておくことにいたしましょう。
≪東京地裁で使用されている資産目録の「有価証券」の欄≫
9 有価証券(手形・小切手、株券、転換社債)、ゴルフ会員権など
*種類、取得時期、担保差し入れ及び評価額を記載します。
*証券の写しも提出します。
種 類 取得時期 担保差入 評価額 ~ 年 月 日 □有 □無 円 ~ 年 月 日 □有 □無 円
≪福岡地裁で使用されている資産説明書の「有価証券」の欄≫
9 有価証券等(手形、小切手、株式、投資信託、ゴルフ会員権等)
□ない
□次のとおり(添付書類:各種証券の写し、社内持株の証明書等)
種 類 取得時期 担保差入 評価額 年 月 日 □有 □無 円 年 月 日 □有 □無 円
評価額の欄の記載方法
資産説明書(資産目録)の「評価額」の欄には、その有価証券が現在いくらの金銭的があるか、その金額を記載する必要があります。
有価証券の種類によって評価額の調べ方や評価方法にも若干の違いがありますので、以下で個別の有価証券ごとにその評価額の調査方法を説明いたします。
株式(株券)
株をもっている場合は、資産説明書(資産目録・財産目録)の「有価証券」の欄に記載しなければなりません。
「株をもっている」とは、株式を所有しているという意味です。
現在は株式を購入しても株券が発行されないのが通常ですから、たとえ株券を所持していない場合でも、株を買っている場合は「資産」として記載しなければなりません。
株の取得時期や評価額は、証券会社で確認すればすぐに分かると思います(ネット証券ならサイト上で確認できます)。
評価額は自己破産を申し立てる日の前日の終値(大引け値)を記載しておけば問題ないと思いますが、その金額が申立日前日の終値であることを明らかにするため、記載欄の余白や付箋(または上申書)に「申立日前日の終値を記載」などと付記しておいた方がよいでしょう。
なお、ネット証券などで頻繁にトレードしている人(デイトレーダーなど)は、自己破産の申立を決意した後は株の売買をしてはいけません。株の売買をすることは、「自分の資産を処分する」ということになり、「財産の不利益処分」として免責不許可事由(借金の免除が許可されないこと)に該当し自己破産の手続において問題にされる恐れがあるからです。
小切手・手形など
手形や小切手などがある場合も、「資産」として資産説明書(資産目録・財産目録)に記載しなければなりません。
「評価額」はその券面額を記載しておけばよいでしょう。
ゴルフ場の会員権
ゴルフ場の会員権がある場合も有価証券として記載しなければなりません。
評価額は、購入した価格ではなく、「自己破産の申立時点で売却したとするといくらになるか」を調べてその価格を記載します。
ゴルフ会員権を売買している業者などで査定してもらう必要があります。
商品券、プリペイドカード
商品券やプリペイドカードなどがある場合も資産として「有価証券」の欄に記載しなければなりません。
評価額は、金券ショップなどでの買い取り価格を書いておけば問題ないでしょう。
その他の有価証券
その他にも、郵便局でお金を送金するときに使う郵便小為替なども有価証券となります。
また、国債なども有価証券となりますので、自己破産の申立時点の売却価格を調べてその金額を記載しなければなりません。
なお、郵便切手は「有価証券」ではありませんので、切手コレクターなどが大量の郵便切手を所有している場合などは「有価証券」の欄ではなく「その他、破産管財人の調査によって回収が可能となる財産」の欄(東京地裁の場合)などに記載することになります。
「担保の差入の有無」とは
「有価証券」の欄には「担保差入」の有無を記載する項目があります。
「担保の差し入れ」とは、借金が返せなかった時の保証として何がしかを差し入れることを意味します。
たとえば、AさんがBさんから10万円を借りる場合を想定すると、BさんはAさんに10万円を貸すのはいいけれどももしも返してもらえなかった時は10万円を損してしまうことになります。
そのような不測の事態に対応するため、BさんはAさんが所有している何かお金になるようなものを、貸したお金が返ってくるまで預かっておく場合があります。
このように、お金を貸した人が借りている人から金目のものを預かることを「担保にとる」といいます。
BさんがAさんにお金を貸す代わりにAさんの有価証券を担保に取ったとすると、Bさんが借りたお金を返せない場合はBさんはAさんの有価証券を売り払い、お金に換えて自分のものにするわけです。
このように、借金の代わりに有価証券を担保に差し出しているような場合には、「担保差入」の欄にある「□有□無」の欄にチェックを入れて、「☑有□無」のように記載することになります。
資産説明書(目録)の「有価証券」の欄の具体的な記載例
例えば、ネット証券で平成26年5月1日にA社の株を50万円(1株10万円を5株)で購入し(自己破産申立前日の終値は49万円)、平成26年8月1日に懸賞で当たった三越の商品券1万円(金券ショップでの買い取り価格は9500円)がある場合の申立書の記載例は次のようになります。
種類 取得時期 担保差入 評価額 A社株式5株 平成26年5月1日 □有☑無 49万円 三越の1万円分商品券 平成26年8月1日 □有☑無 9,500円