借金問題の解決方法は、大きく分けて任意整理・個人再生・自己破産の3種類があります。
この他に特定調停という手続きもありますが、これは債権者と個別に分割返済や利息のカットを交渉する点で任意整理とほとんど変わりなく、単にそれが簡易裁判所で行われるというだけの話ですから、ほぼ任意整理と同じと考えて良いでしょう。
この任意整理・個人再生・自己破産という3つの手続きはそれぞれ長所も短所もありますし、その人の借金の総額や、収入、所有している財産によって利用できる手続きも異なってきますから、一概にどの手続きが良いということは言えません。
しかし、あえて「どの手続きが良いか」と聞かれたら、圧倒的に「自己破産」の手続きを利用する方が良いと思います。
借金の整理に自己破産が最も適している理由
理由はいくつかありますが、たとえば任意整理では債権者と個別に分割返済や利息のカットを話し合う手続きですが、多くの債権者では利息のカットには応じるものの、分割返済については最長でも3年間しか認めてくれません。
そのため、仮に任意整理で借金を整理したとすると、借金の額が100万円の場合は毎月27,000円以上、借金の額が200万円の場合は毎月55,000円以上の返済が必要となります。
「毎月3万円や5万円程度なら返済できるだろう」と考える人は多いと思いますが、「生活費が足らない」とか言う理由で借金を重ねてきた人が、毎月滞ることなく今後3年間も返済を続けて行くのは正直言って無理があると思います。
毎月決まった金額を計画的に返済できないからこそ借金の返済ができなくなって債務整理することになった人が、債務整理を行ったとたんにキチンと返済できるようになると考えるのは甘すぎるでしょう。
実際、任意整理の案件で消費者金融の人と電話で交渉していた際に聞いた話ですが、任意整理の分割和解を行った顧客のうち、全体の7割程度の人は途中で返済が滞って連絡が取れなくなったり、自己破産の申立をされたりしているそうです。
そのような実情に鑑みれば、債務整理の手続きを行って返済を滞りなく完遂できるのは任意整理で借金の整理をした人のうちわずか2~3割程度であり、それ以外の7~8割の人は任意整理で借金を整理しても結局は借金問題を解決できなかったということになります。
とすれば、これら任意整理を行った人のうち7~8割の人は、任意整理の手続きを行う際に弁護士や司法書士に支払った報酬は無駄になったということもできるでしょう。
また、最初から自己破産を選択しておけば、任意整理後に債権者に返済したお金は貯金することができたということになりますから、最初に借金を相談したときに自己破産を行っておけば、より早く、より楽に生活の再建ができたということもいえるかもしれません。
個人再生の場合も同じです。
個人再生は、基本的に借金の総額を5分の1にして返済を行うという手続きで、たとえば借金の総額が500万円であれば100万円を3年間で返済すれば残りの400万円の返済は免除されることになります。
しかし、前述したように、借金を重ねて返済できなくなった人が、個人再生を行ったからといって、毎月3万円ほどのお金を3年間にもわたって返済していけるものでしょうか?
計画的に返済できないからこそ首が回らなくなるほど借金が増えてしまったのであって、個人再生の手続きをしたからといって、すぐに計画的な返済ができるようになるとは思えません。
もちろん、借金問題に悩む人の中にも、計画的に家計をやりくりする能力があるにもかかわらず、やむを得ない事情や避けることのできない突発的な事情で借金が重なり、どうしようもなく債務整理をするに至った人もいますので、任意整理や個人再生した後にキチンと返済を完遂して生活を再建することができる人も少なからずいるとは思います。
しかし、中には根本的に計画性をもって収入と支出を管理することができない人や、家計の無駄を無くして収入の範囲で生活していくということに疎い人も多くいるのが事実です。
そのような人が、何の反省も、何の改善もしないまま任意整理や個人再生を行っても、途中で返済が滞り、返済に行き詰って結局自己破産することになるのは目に見えています。
そのため、自己破産で処理することができるような案件については、無理をして任意整理や個人再生で解決するのではなく、素直に自己破産の手続きで処理するのが望ましいのではないかと思います。
弁護士や司法書士は単なる仕事として債務整理を行っているので、ほとんどの事務所では生活の改善や指導までは行っていません。
自分が借金を返済できなくなったのはなぜなのか、その原因がわからないまま何の改善もすることなく任意整理や個人再生を行っても、いずれ確実に自己破産することになるということは知っておいたほうが良いと思います。