自己破産の申し立てをする際に、住んでいるマンションやアパートの家賃を滞納していたり、光熱費や電話料金の支払いがたまっているときはどうしたらよいのでしょうか?
住んでいる場所を立ち退かされたり、電気やガスが使えなくなったりしてしまうのでしょうか?
ここでは、自己破産を申し立てする際に家賃や光熱費などの滞納がある場合についての注意点について考えてみたいと思います。
自己破産で家賃の滞納がある場合
自己破産の申し立てをする段階で家賃の滞納がある場合は、基本的に滞納分の家賃を支払うことはできず、裁判所に家賃の滞納があることを申告しなければなりません。
これは、自己破産の手続きにおいて「一部の債権者に弁済すること」は他の債権者の利益を害することになるため認められていないからです。
家賃の「滞納分」も他の「借金」と同じように「払わないといけないけど払っていないお金」という「負債」になります。
「他の借金」の返済はしないのに「家賃の滞納分」だけ返済することを認めてしまうと他の債権者から「なんで大家さんだけを特別扱いするんだよ、大家さんに払うんだったらうちにも払えよ」ということになってしまうからです。
※ここで言っている「家賃」とは「家賃の滞納分」の話であり、滞納していない家賃は「負債」には当たりませんので、ここは「滞納した家賃」に限定した話となります。
滞納分の家賃を含めて自己破産の申し立てを行い、自己破産の免責(借金の返済が免除されること)が確定するとその滞納分については支払義務を逃れることになります。
例えば、家賃を1月の支払分から滞納している人が3月末に自己破産の申し立てをしたとすると、1月から3月までの3か月分(3回分)の家賃を滞納していることになり、その3か月分の滞納した家賃は自己破産が認められた時点で支払が免除されることになります。
申し立てをした月以降(正確には自己破産の開始決定というものが出た日以降)の家賃については免除されませんので、4月分以降の家賃はキチンと納めなければなりません。
この例を表にするとこんな感じになります。
自己破産の申立準備期間 → | → 自己破産の申立て(開始決定) | ||||||||
~ | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | ~ |
~ | 〇 | 〇 | ✖ | ✖ | ✖ | 〇 | 〇 | 〇 | ~ |
〇:支払った ×:滞納した | |||||||||
※:×の月の家賃が自己破産によって免責になる |
家賃を滞納したまま自己破産するとマンションを追い出されるか?
前述したように、家賃の滞納がある場合は自己破産の申し立ての際に基本的に裁判所に申告する必要がありますが、自己破産が認められて滞納分の家賃の支払いが免除されることになった場合、大家さんは家賃の不払いを理由にマンションの立ち退きを求めてくるのでしょうか?
この辺りは、正直言ってケースバイケースでどうなるか分かりません。
法的に言えば、「自己破産したこと」を理由に大家さんが賃貸借契約を解除することはできません。
ただし、大家さんの全てが法律に詳しいわけではありませんし、法律に反して契約を解除して立ち退きを請求してくることはあり得ます。
前述の例であれば
「3か月分も家賃を踏み倒すなんてけしからん、出て行ってくれ!!」
という大家さんもいれば、
「3か月ぐらいならしかたないか・・・今後ちゃんと払ってくれるならそのまま住んでくれていいよ」
と言ってくれる大家さんもいるでしょう。
「3か月分も家賃を踏み倒すのはけしからんが、今出て行ってもらっても次の店子が入るまで3か月以上かかるだろう、今後ちゃんと払ってくれるんならこのまま住んでもらう方が得かもな」
といって退去までは迫ったりしない大家さんもいるかもしれません。
3か月家賃を滞納したことを原因として賃貸借契約を解除させるのが法律的に問題がないかという議論はここではしませんが、家賃を滞納したことを理由に退去させられる可能性は少なからずあるでしょう。
なお、マンション(アパート・借家)などを借りている人(賃借人)が自己破産する場合は、裁判所から選任される破産管財人がそのマンションなどの賃貸借契約をそのまま継続するか解除するか選択することになりますが(大家さんは管財人に対して自己破産する人の賃貸借契約を解除するか継続するか回答するよう催告することが出来る・破産法第53条、54条)、自己破産する人の住んでいる家の賃貸借契約を解除してしまうとホームレスになってしまうので、普通は解除されることはありません。
※なお、自己破産した場合に賃貸している部屋は裁判所でどのように処理されるかといった点についてはこちらのページで解説しています。
自己破産の申立前に家賃の滞納を解消しておくことは可能か?
通常、自己破産の申し立てを弁護士や司法書士に依頼すると、依頼したその日から借金の返済をストップすることが出来ます。
いったん借金の返済をストップさせて借金額を調査するとともに、生活の再建を始めるためです。
そして返済がストップして生活費に余剰が出てくると、家賃の支払いも滞りなく行えるようになるでしょう。
その場合、生活費の余剰金で家賃の滞納分を支払ってしまうことで、自己破産した場合に家賃の滞納分が免除されることを逃れること(自己破産の申し立て前に家賃の滞納分を解消することで家賃の滞納がないことにしてしまうこと)は可能でしょうか?
家賃の滞納があれば裁判所に「負債」として申告しなければなりませんが、家賃の滞納がなくなれば家賃の「負債」は無くなりますから裁判所に申告する必要もなくなりますから、滞納分の支払いが免除されることによって大家さんの怒りを買いマンションを追い出される恐れもなくなるので、事前に家賃の滞納分だけを返済できないかという点が問題となります。