陳述書の作成手順(12)一部の債権者への返済の欄の記載方法

自己破産の手続きにおいては、一部の債権者を特別扱いすることを禁じられています。

全ての債権者は平等に扱わなければならないので、一部の債権者にだけ返済するという行為は法律で禁じられており、もしこの法律に反してこれをやってしまうと自己破産の手続きが終わっても借金の返済免除(免責)が受けられなくなったりする場合があります。

この一部の債権者を特別扱いして返済をすることを偏頗弁済(偏った弁済という意味)といいますが、もしこのような弁済をしている場合は自己破産の申立書にその詳細を記載する必要があります。

そこで、ここではこの偏頗弁済の欄の記載方法について考えてみたいと思います。

なお、自己破産申立書の作成方法についてはこちらの目次ページから必要な書類のページに移動してご確認をお願いします。

自己破産申立書作成マニュアル(目次)

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一部の債権者に返済すること(偏頗弁済)の概要

「一部の債権者に返済すること(偏頗弁済)」とは、前述のとおり一部の債権者を特別扱いして偏った返済をしてしまうことを言います。

ただし、「一部の債権者に返済すること(偏頗弁済)」が禁じられているといっても、すべての時期の返済で一部の債権者に返済してはいけないというものではありません。

例えばA社・B社・C社の3社から借金をしているとして、その3社からの借金を自分の収入の範囲内で順調に返済できている状況にある時期であれば、契約上の返済期限はABC社それぞれあるにしてもその返済の順序に法的な制限はありませんから先にA社に返済して次にB社最後にC社と返済していっても偏頗弁済には当たりません。

しかし、自己破産を決意するような「もう返済は不可能だ」と思うようになった時期(支払い不能な状態)以降は、すべての債権者を平等に扱わなければならないので、「支払い不能」の状態になった以降に一部の債権者に返済することは一部の債権者を特別扱いする偏頗弁済となります。

この「支払い不能」になった状態が何時なのかは、自己破産する人の主観的な判断ではなく、裁判所(破産管財人)の客観的な視点で判断されます。

そのため、自己破産の申し立てをする前に一部の債権者に返済をしたことから
「あなたは一部の債権者を特別扱いして返済していますね」裁判所や破産管財人に
と指摘された場合に
「いや、あのときは自分が自己破産するとは思っていなかったから特別扱いするつもりはなかったんです」
という言い訳を言っても、これは通用しません。

自分では偏頗弁済でないと思っても、裁判所(破産管財人)が偏頗弁済だと判断すればアウトになりますので、この一部の債権者を特別扱いする偏頗弁済については十分注意する必要があります。

 

一部の債権者に返済すること(偏頗弁済)の例

偏頗弁済(一部の債権者を特別扱いして返済すること・非本旨弁済ともいう)が見受けられる状況としては、例えば金融機関だけでなく家族や友人からも借金している場合が挙げられます。

このような場合、自己破産をするに際して「家族や友人に迷惑はかけられないから・・・」と考えて自己破産の前に家族や友人からの借金だけ返済してしまうという人がたびたび見受けられます。

ひどい人になると、自己破産を申し立てる直前に一般の金融機関から多額の借入を行ってそのお金で家族や友人からの借金を返済してしまうような悪質なケースもあります。

このように、自己破産の申し立ての前に家族や友人だけを特別扱いして返済を行うことは、一部の債権者への隔たった返済となる「偏頗弁済」に該当しますので、自己破産申立書の陳述書にある「偏頗弁済」の欄にその事実を記載しなければなりません。

 

一部の債権者への返済(偏頗弁済)の欄の様式

自己破産申立書の様式は各裁判所によって若干の様式の違いがありますが、ここでは、東京地裁と大阪地裁で使用されている陳述書(報告書)の「偏頗弁済」の欄の様式を参考として挙げておきましょう。

≪東京地裁で使用されている陳述書の「偏頗弁済」の欄の様式≫

問3 一部の債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、非本旨弁済をしたことがありますか(破産法252条1項3号)。
□有(→以下に記載します) □無     (単位:円)

時 期相手の名称非本誌弁済額
 年 月 日
 年 月 日

≪大阪地裁で使用されている報告書の「偏頗弁済」の欄の様式≫

3 偏頗行為(支払い不能になっていることを知りながら、一部の債権者に偏頗的な行為(非本旨弁済等)をしたことの有無 破産法252号1項3号関係)

時 期相手の氏名等非本誌弁済額
 年 月 日
 年 月 日

≪福岡地裁で使用されている陳述書の「偏頗弁済」の欄の様式≫

なお、一部の裁判所(福岡地裁など)では次のような様式のものが利用されています。

3 借金等の負債を完済できないと思った時期以後に、一部の債権者に支払期限前に弁済したり、担保提供をしたりしたことがありますか。
□ない
□次のとおり(→次の表を記載してください。)

時 期相手方弁済額等内容
 年 月 日□弁済 □担保提供
□その他( )
 年 月 日□弁済 □担保提供
□その他( )

 

一部の債権者への返済(偏頗弁済)の欄の具体的な記載例

例えば、

自己破産の申し立てを行うAさんは、平成20年1月ごろから多数の金融機関から借り入れを行い、平成25年に兄の山田太郎から金100万円を、平成26年に友人の同級生太郎から金50万円を借りていました。

その後、Aさんは平成26年の5月ごろには返済に行き詰り、内心は「もう返済は無理だ、自己破産するしかない」と感じていましたが「家族や友人に迷惑はかけられない」と考えて平成26年6月に兄の山田太郎に金50万円を、同年7月に友人の同級生太郎に金20万円をそれぞれ返済してしまいました。

8月になって弁護士に相談に行ったところ、やはり自己破産するしかないと言われ、また「兄と友人に返済したことは「偏頗弁済」に該当するから自己破産の申立書に記載しなければならない」と注意を受けました。

というような事例における自己破産申立書の陳述書の「偏頗弁済」の欄の記載例は次のようになります。

3 偏頗行為(支払い不能になっていることを知りながら、一部の債権者に偏頗的な行為(非本旨弁済等)をしたことの有無 破産法252号1項3号関係)

時期相手の氏名等非本誌弁済額
平成26年6月ごろ山田太郎50万円
平成26年7月ごろ同級生太郎20万円
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