陳述書の作成手順(13)詐術による借入の欄の記載方法

ウソをついたり相手をだましてお金を借りることは道徳的にも問題はありますが、自己破産の手続きにおいても当然問題になってきます。

自己破産の申し立てをする前に、誰かにウソをついてお金を借りていたりした場合には「詐術」による借入として自己破産による返済の免除(免責)が受けられなくなってしまいます。

そのため、もしも過去に「詐術」を用いて借金をした事実があった場合には、自己破産の申立書にその詳細を記載しなければなりません。

そこで、ここでは「詐術」の借入があった場合の陳述書への記載方法について考えてみることにいたしましょう。

なお、自己破産申立書の作成方法についてはこちらの目次ページから必要な書類のページに移動してご確認をお願いします。

自己破産申立書作成マニュアル(目次)

自己破産における「詐術」の概要

前述したとおり、「詐術」による借入は「免責不許可事由」となり、たとえ自己破産の申し立てを行っても、その詐術による借入以外のものも含めすべての借金について返済の免除が受けられなくなってしまいます。

その「詐術」による借入については、その態様がいくつかありますので、順に説明していくことにいたしましょう。

他人の名前を使って借り入れをすること

まず、他人の名前を使って借金をすることが挙げられます。

例えば、複数の金融機関から借金を重ねて首が回らなくなったAさんが友人のPさんの名前を騙ってX銀行からお金を借り、そのX銀行から借りたお金を自分の借金の返済に使ったとします。

このようなAさんの行為は「詐術」による借入としてAさんが自己破産を申し立てる際に「免責不許可事由」該当することになります。

なお、他人の名前を使う場合は全て詐術となりますので、他人の名前を勝手に使用するだけでなく、名義を借りる人の承諾を受けたうえで借りた場合であっても免責不許可事由となりますので注意が必要です。

生年月日・住所・負債額・収入・財産などを偽って借り入れを行うこと

例えば銀行のローンを組む時に、収入が300万円しかないのに500万円あると嘘をついたり、その銀行以外にも複数の金融機関から借金があるのに他の借金はありませんとウソをついてお金を借りることは「詐術」による借入として「免責不許可事由」に該当します。

生年月日を偽ったり、不動産を持っていないのに土地や建物がありますなどとうそを言ってお金を借りるのも「詐術」となります。

自己破産の申立前「1年以内」にした詐術だけ記載すればよい

破産法という法律で問題となるのは「自己破産の申立があった日の1年前から自己破産の手続きが開始されるまでの期間」による「詐術」による借入です。

そのため、自己破産の申立書の陳述書に記載する「詐術」による借入は、申立書を提出する日から遡って1年前までに行った「詐術」による借入のみ記載すればよいということになります。

ただし、だからと言って申立をする1年以上前なら人を騙してお金を借りても良いということにはなりません。

裁判所は「詐術」による借入については厳しくチェックしますから、たとえ申立の1年以上前に行われた詐術であっても、「申し立てが行われる前の時点で既に自己破産することは明らかであったのだから、詐術の期間も実際に申立が行われるもっと前の日から1年を遡らせるべきだ」と考えて、申し立ての1年以上前の詐術であっても免責不許可事由として問題にする可能性があります。

また、そもそも人(銀行や消費者金融も含みます)をだましてお金を借りることは「詐欺」に当たりますから犯罪です。

「詐術」を用いてお金を借りるようなことは絶対にしてはいけませんが、もし過去にそのような事実があった場合は正直に自己破産の申立書に記載しなければなりません。

キャッシングだけでなくショッピングも対象となる

後述する様式例にも記載してあるとおり、詐術の対象となるのは「借金」だけでなく「信用取引」も含まれます。

信用取引とは、ローンで商品を購入することを指しますので、ウソの申告をしてクレジットカードを作ったり、ウソをついて商品を分割支払いで購入するような場合にも、詐術を用いた取引となりますので記載する必要があります。

 

陳述書の「詐術」を記載する欄の様式

自己破産の申立書は各裁判所によってその様式に若干の違いがありますが、東京地裁と大阪地裁で使用されている陳述書(報告書)の「詐術」を記載する欄の様式を挙げておきましょう。

≪東京地裁で使用されている陳述書の「詐術」を記載する欄≫

問4 破産手続開始の申し立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、他人の名前を使ったり、生年月日、住所、負債額及び信用情報等について誤信させて、借金したり、信用取引をしたことがありますか(破産法252条1項5号)。    □補充あり
□有(→いかに記入します) □無    (単位:円)

時 期相手方金 額内 容

≪大阪地裁で使用されている報告書の「詐術」を記載する欄≫

4 詐術(破産申立前1年内に他人の名前を勝手に使ったり、生年月日、住所、負債額及び信用情報等について誤信させて、借金をしたり信用取引をしたことの有無)。
【□有 □無】

時期相手の氏名等金 額詐術の態様
 年 月 日
 年 月 日
 年 月 日

≪福岡地裁で使用されている報告書の「詐術」を記載する欄≫

裁判所によっては次のような様式のものが使用されているところもあります。

5 今回の破産手続開始・免責許可申立て前1年以内に、他人の名前を勝手に使ったり、生年月日、住所、負債額、収入、財産等を偽ったりして、借金やローン等を組んだことがありますか(架空ローンを含む。)。
□ない
□次のとおり(→次の表を記載してください。)

時 期相手方金 額内 容
 年 月 日
 年 月 日

 

陳述書の「詐術」の欄の記載例

例えば、自己破産の申立を行う半年前の平成26年8月1日に、収入が300万円しかないのに500万円あると嘘の申告をしてX銀行のP支店から金100万円を借りていたという場合の記載例は次のようになります。

4 詐術(破産申立前1年内に他人の名前を勝手に使ったり、生年月日、住所、負債額及び信用情報等について誤信させて、借金をしたり信用取引をしたことの有無)。
【☑有 □無】

時 期相手方の氏名等金 額詐術の態様
H26年8月1日X銀行P支店100万円収入が300万円しかないのに
500万円と嘘の申告をした
 年 月 日
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