陳述書の作成手順(16)支払不能の時期などの欄の記載方法

自己破産申立書の陳述書には、「支払い不能に陥った時期」や「自己破産を申し立てることを決意した時期」を記載する欄がある場合があります。

「支払い不能に陥った時期」や「自己破産を申し立てることを決意した時期」は、その自己破産の申し立てに至るまでの経緯に不正な行為などがなかったかを確認するために必要となるので、裁判所によっては独立した項目として記載を求めることになっている場合があるのです。

そこで、ここでは自己破産申立書の陳述書にある「支払い不能に陥った時期」や「自己破産を申し立てることを決意した時期」の欄の記載方法について考えていくことにいたしましょう。

なお、自己破産申立書の作成方法についてはこちらの目次ページから必要な書類のページに移動してご確認をお願いします。

自己破産申立書作成マニュアル(目次)

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「支払い不能に陥った時期」などを記載する欄の概要

陳述書を含む自己破産申立書の様式は、各裁判所によって若干の違いがありますので「支払い不能に陥った時期」や「自己破産を申し立てることを決意した時期」を記載する欄についても、各裁判所の様式によってそれぞれ書き方が異なります。

たいていの裁判所では、「作文※注1」にそれらの時期も含めて記載することになっていますが、福岡地裁などの使用している申立書では独立した項目として記載するようになっています。

注1)作文についてはこちらのページで解説しています

陳述書の作成手順(7)作文の記載方法

陳述書の作成手順(8)作文の記載例

例えば、東京地裁や福岡地裁の申立書では以下のように「作文」に記載するようになっています。

≪東京地裁の申立書の様式≫

5 破産申立に至った事情

□補充あり

*債務発生・増大の原因、支払い不能に至る経過及び支払い不能となった時期を、時系列で分かりやすく書いてください。

 

 

 

                       

≪福岡地裁の申立書の様式≫

※福岡地裁の申立書では、以下の様式のように陳述書に独立した項目として記載欄が設けられています。

第2 借入・返済等の状況について

1 返済のための借金をするようになったのは、いつごろですか。
時   期 (平成   年   月ころ)
借 金 額 (総額約   万円・毎月返済すべき額約   万円)
当時の月収 (約         万円)

2 借金を完済できないと思い始めたのは、いつごろですか。
時   期 (平成   年   月ころ)
借 金 額 (総額約   万円・毎月返済すべき額約   万円)
当時の月収 (約         万円)

3 破産申立てをしようと考えた時期は、いつごろですか。
時   期 (平成   年   月ころ)
借 金 額 (総額約   万円・毎月返済すべき額約   万円)
当時の月収 (約         万円)

なお、裁判所によっては「支払い不能に陥った時期」や「自己破産を申し立てることを決意した時期」を記載する欄自体がないものもありますので、その場合は作文などに適宜に記載しておくと裁判所としては助かると思います。

 

「支払い不能に陥った時期」などを記載する欄の具体的な記載例

それでは、「支払い不能に陥った時期」や「自己破産を申し立てることを決意した時期」の具体的な記載例を書いてみましょう。

例題として、『陳述書の作成手順(8)作文の記載例』のページに記載した事例を元に記載方法を考えると次のようになります。

「返済のための借金をするようになった時期」の記載方法

まず、「1」の「返済のための借金をするようになったのは、いつごろですか」の項目については、「借金をするようになった時期」ではなく「返済のための借金をするようになった時期」を記載します。

「返済のための借金」なので、例えば「A社からの借金を返済をするためにB社からお金を借りた」というように「借金を借金で返済するようになった」時期を記載します。

陳述書の作成手順(8)作文の記載例』のページに記載した事例では、平成23年の11月頃までは自分の給料から返済を行っていましたが、12月になってから会社の業績が急激に落ち込んでボーナスや給料の支払いが滞ってしまったのを契機にCクレジットからお金を借りて返済に回したことになっていますので、「返済のための借金をするようになった時期」は「平成23年の12月ごろ」となります。

「借金を完済できないと思い始めた時期」の記載方法

次に、「2」の「借金を完済できないと思い始めたのは、いつごろですか」の項目には「借金の返済が出来ないんじゃないか」と「うすうす気づきだした時期」を記載します。

「借金の返済が確実にムリ!」と思った時期になると「3」の「破産申立てをしようと考えた時期」になりますので、それより少し前の「この分じゃ借金の返済は難しいんじゃないかな」と思い始めた時期を記載します。

陳述書の作成手順(8)作文の記載例』のページに記載した事例では、平成26年の11月ごろには「返済の目出がどうにも立たなく」なっており、「インターネットで調べて」「どう考えても自己破産するしかないような状況」であることを「自覚するように」なっています。

とすると、10月ごろには「借金の返済が返済できないんじゃないか」と「うすうす気づいて」いたと思われますので、「借金を完済できないと思い始めた時期」も平成23年の10月ごろであると推定できます。

「破産申立てをしようと考えた時期」の記載方法

「破産申立てをしようと考えた時期は、いつごろですか」の項目には、もう少し進んで「自己破産」を決意した時期を記載します。

陳述書の作成手順(8)作文の記載例』のページに記載した事例では、平成26年11月ごろに弁護士に相談し、「自己破産しか解決の道はないだろう」と言われて「その弁護士さんに依頼しようと思った」のですから、「自己破産」を決意した時期も平成26年11月ごろになります。

実際に「自己破産」という具体的な手続きを選択することを決意した時期を記載すればよいでしょう。

具体的な記載例

上記のような記載方法を踏まえて福岡地裁で使用されている陳述書の様式に記載すると次のようになります。

第2 借入・返済等の状況について

1 返済のための借金をするようになったのは、いつごろですか。
時   期 (平成 23年 12月ころ)
借 金 額 (総額約 150万円・毎月返済すべき額約 3万円)
当時の月収 (約      20 万円)

2 借金を完済できないと思い始めたのは、いつごろですか。
時   期 (平成 26年 10月ころ)
借 金 額 (総額約 260万円・毎月返済すべき額約 6万円)
当時の月収 (約      15 万円)

3 破産申立てをしようと考えた時期は、いつごろですか。
時   期 (平成 26年 11月ころ)
借 金 額 (総額約 260万円・毎月返済すべき額約 6万円)
当時の月収 (約      15 万円)

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