自己破産の家計表における「繰越金」の計算方法と書き方

自己破産の申立書には家計表(裁判所の様式によっては”家計収支表”)を作成して添付しなければなりません。

この家計表には、自己破産の申立書を裁判所に提出する1か月前(裁判所によっては2か月前)の、収入と支出の内訳を正確に記載することが必要です。

ところで、この家計表には「前月からの繰越金」と「翌月への繰越金」の項目が設けられているのですが、この「繰越金」の計算方法や書き方が分からないという人は意外に多くいます。

私が過去に受任した自己破産の案件でも、下書きの提出を依頼人に求めた際、繰越金の欄が正確に記載されていたという経験は、はっきり言って一度もありません。

そもそも繰越金を毎月計算しているような家計管理のできている人は自己破産などしませんから、繰越金がいくらになるか計算できない人が存在するのはうなずけます。

しかし、繰越金の欄を正確に記載しておかないと、申立書を提出した後で裁判所から補正(申立書の提出を命じられること)を受けてしまうので、正確に計算して記載しておく必要があります。

そこで今回は、自己破産の申立書のうち、家計表の「繰越金」の計算方法と「繰越金」の欄の記載方法について考えてみることにいたしましょう。

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家計表は裁判所に提出が必要な月の前の月の分も作成する必要がある

「前月からの繰越金」は「前月の家計表」を作成しなければ算出することができません。

ですから、家計表を作成するためには、裁判所から求められている家計表の1か月前の分の家計表も作成しなければならないことになります。

たとえば「申立前1か月分の家計表」の提出が求められている裁判所(福岡地裁など)に自己破産の申立を行う場合は、申立書を裁判所に提出するのが8月であれば、7月分と6月分の家計表を作成し、7月分の家計表を裁判所に提出する必要があります。

なぜなら、6月分の家計表を作成しなければ、7月分の家計表に記載する「前月からの繰越金」がいくらになるのか分からないからです。

なので、「申立前2か月分の家計表」の提出が求められている裁判所(東京地裁など)に申立を行う場合は、仮に申し立てをするのが8月と考えると、7月・6月・5月分の家計表を作成し、7月分と6月分の家計表を裁判所に提出することになります。

 

「繰越金」の計算方法

ここでは、8月に申立をするものと想定し、7月分と6月分の家計表を作成したうえで7月分の家計表の「前月からの繰越金」と「翌月への繰越金」を計算し、記載する方法を説明することにしましょう。

① まず、最初に6月の「収入」を6月分の家計表の収入の欄に記載します。

② 次に、6月分の「支出」を6月分の家計表の支出の欄の各項目に記載していきます。

③ ①で記載した6月分の収入の合計額を算出します(これをAとします)。

④ ②で記載した6月分の各項目の支出金額の合計額を算出します(これをBとします)。

⑤ 6月分の収入(A)から6月分の支出(B)を差し引いた金額(C)が「6月分の繰越金」となりますので、「A-B=C」を計算します。

⑥ Cは「6月分の繰越金」となりますので、Cを7月分の家計表の「前月からの繰越金」の欄に記載します。

⑦ 次に、7月の「収入」を7月分の家計表の収入の欄に記載します。

⑧ また、7月分の「支出」を7月分の家計表の支出の欄の各項目に記載していきます。

⑨ ⑦で記載した7月の収入を全て合計し、その合計額”D”とします。

⑩ ⑧で記載した7月分の支出の各項目を全て合計し、その合計額を”E”とします。

⑪ 「前月からの繰越金」であるCと、7月の収入の合計額であるDを合計した金額が7月分の収入額の総額となりますので、CとDを合計した金額を7月分の家計表の「収入合計」の欄に記載します(これをFとします)。

⑫ 7月分の収入合計であるFから7月分の支出の合計であるEを差し引きます(これをGとします。

⑬ このGが、7月分の家計表の「翌月への繰越金」となりますので、Gの金額を7月分の家計表の「翌月への繰越金」の欄に記載します。

⑭ 最後に、7月分の支出の合計金額であるEと「7月分の翌月への繰越金」であるGを合計します(これをHとします)。

⑮ このHが、7月分の支出の合計金額となりますので、Hを7月分の家計表の「支出合計」の欄に記載します。

以上の手順で7月分の家計表が完成します。

なお、家計表の記載方法については、こちらのページも参考にしてください。

陳述書の作成手順(5)家計表の記載方法

自己破産申立書作成マニュアル(目次)

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