自己破産を選択する基準は?

借金の返済が難しくなったときに行う債務整理には

1.任意整理・・・任意整理とは?
2.特定調停・・・特定調停とは?
3.個人再生・・・個人再生とは?
4.自己破産・・・自己破産とは?

の4つの手続きがあります。

自分の借金した金額と、収入(給料など)や資産(土地や車、貴金属などお金に換えられるものがないかなど)の額を考えて、これら4つのうちから一つの手続きを選択することになるのですが、素人にはいったいどの手続を選択すればいいのか分かりませんよね?

弁護士や司法書士に相談に行けば、どの手続を取るのがいいか教えてくれますが、「自分で何とかしたい」とか「弁護士や司法書士に相談に行く前にある程度のことは理解しておきたい」という人は事前に手続きの選択方法について知っておきたいと思いますよね?

ということで、今回は債務整理の手続きを選択する方法を考えてみましょう。

広告

債務整理の手続きを選択する手順

(1)請求書や督促状などを集めて借金の額を一覧にする

まず最初にやることは、自分の借金が本当はいくらあるのか調べて見ることです。

貸金業者から請求書や督促状搉が来ている場合は、それらを債権者(貸金業者)ごとに分け、ノートなどに借金の金額を一覧にして記載していきましょう。

たとえばこんな感じで借り入れのある債権者とその残りの借金額を一覧表にしてみます。

貸金業者請求額
〇〇銀行900,000円
ア〇フル800,000円
武〇士1,300,000円
合計3,000,000円

 

(2)正しい利息に従って借金の額を計算し直す

利息制限法の引き直し計算について

次に、債権者(貸金業者)から請求されている借金の額を、利息制限法に従って計算し直してみましょう(計算しなおすことを「引き直し計算」といいます)。

現在は法律が厳しくなって利息制限法を超える利率で貸付する業者はいませんが、昔(平成16~20年より前ぐらい)は、制限利率を越えた利率(だいたい年利42.9%)で貸付を行っていた業者がたくさんありました。

そのため、利息制限法の制限利率(年利20%以下)で計算し直すと借金の金額が大幅に減額されることがあるのです。

通常の銀行などのローンは元々、利息制限法の制限利率で貸付を行っていたので計算しなおす必要は基本的にありませんが、消費者金融(いわゆるサラ金)で借りたものなどは計算しなおすと借金が減る場合が多いです。

債権者(貸金業者)から取引履歴を取り寄せる

借金の計算をし直す(引き直し計算)には、これまでの取引の履歴を債権者(貸金業者)から取り寄せる必要があります。

「取引履歴」とは、これまで借りたり返したりを繰り返してきた借金の一覧表で、貸金業者によって体裁が異なりますが、だいたいこんな感じになっています。

日付貸付返済残高
平成10年1月1日***円0円***円
平成10年1月15日0円***円***円
平成10年2月10日***円0円****円
平成10年2月27日***円0円****円

 

≪取引履歴を取り寄せる際の注意点≫

貸金業者によっては、取引履歴を取り寄せるだけで信用情報機関に事故情報として通知する(いわゆるブラックリストに載せる)ところもありますので、その点は事前に確認しておいた方がいいかもしれません。

引き直し計算をする

取引履歴を取寄せたら、引き直し計算ソフトを使って利息の再計算を行いましょう。

引き直し計算ソフトは、引き直し計算ソフトのCDROMが添付されている「過払い金請求」関連の本を購入したりしてもいいですが、ネット上にも多く出回っているので適当なものをダウンロードして利用すればいいと思います。

個人的には借金問題に詳しい弁護士さんなどが作っているこちらのサイトで配布している無料の計算ソフトが信頼性が高くオススメです。

名古屋消費者信用問題研究会

引き直し計算した金額を一覧にしてみる

引き直し計算が終了したら正確な借金額が出てきますので、前述の一覧表に正確な借金額(債務額)を記載していきましょう。

前述した例の表を使うとこんな感じになります。

貸金業者請求額引き直し計算後の借金額
○○銀行900,000円900,000円
ア〇フル800,000円460,000円
武〇士1,300,000円800,000円
合計3,000,000円(A)2,160,000円

 

引き直し計算した後の借金額を合計したもの(上の表の(A)の金額)が、現在の正確な借金額(債務額)となります。

 

正確な借金額を3年で返済出来れば「任意整理」か「特定調停」で処理する

正確な借金の総額が出たら、その全額を3年で分割返済できるか考えてみましょう。

前述の表を例にとると、借金額は(A)の216万円ですから、この216万円を3年(36回)で分割可能か考えます。

216万円を36回で割ると、1か月あたりの返済金額は6万円となりますから、毎月6万円返済可能なら、3年で完済することができます。

借金の総額を3年で完済できるかどうかは、債務整理の手続き選択の基準となり、3年で返済可能なら任意整理か特定調停が利用できると考えていいでしょう。

3年で返済できない場合は、個人再生や自己破産の手続きをとるしか方法がないといえるかもしれません。

なお、自分の返済可能な金額を考える際は、ある程度余裕のある金額を出すことが大切です。

例えば、毎月の収入が25万円で毎月の生活費が19万円必要な人が、「毎月6万円余るから6万円返済できる」と考えるのは危険です。

3年間というのはかなり長い期間なので、その返済期間中は様々なことが起こる(冠婚葬祭や怪我病気など)のでギリギリの家計状況で返済することは無理があるからです。

毎月の返済金額は、少なくとも毎月の生活費の余剰金の半分程度に抑えた金額として考えるようにした方が無難です(前述の例でいえば返済可能金額は3万円程度と考えた方がいいです)

 

正確な借金額を5分の1した金額を3年で返済できるなら「個人再生」で処理する

引き直し計算で算出した正確な借金額を3年で返済できないようなら、個人再生か自己破産を検討するべきでしょう。

個人再生手続きは、基本的に総債務額(総借金額)を5分の1した金額(5分の1した金額が100万円未満の場合は100万円)を3年で分割返済する手続きです。

そこで、前述の引き直し計算した正確な借金額(前述の表の(A)の金額)を5分の1にしてみると

2,160,000円÷5=432,000円 となり

100万円より少ないので個人再生した場合の最低返済金額は100万円となりますから、もし個人再生手続きを申し立てるとするならば100万円を3年で返済することになります。

100万円を3年で分割返済すると

1,000,000円÷36=27,777円 となりますので

1か月あたり28,000円程度の返済が可能なら、個人再生手続きを選択してもいいと思われます。

前述の例では、月収25万円で毎月の生活費が19万円、毎月の余剰金が6万円となっていましたから、このような場合には毎月28,000円の返済は可能と思われますので個人再生手続きを利用しても問題ないように思われます。

仮に、この例で月収が20万円しかなかったり、毎月の生活費が20万円を超えるようなら毎月の返済金額をねん出することが困難と考えられますので、個人再生手続きを選択することは非常に難しく、自己破産の可能性が高いと言えるでしょう。

 

3年で返済できないなら「自己破産」で処理する

以上のように、自己破産を選択する手順は

1 まず引き直し計算で正確な借金額を計算する。

2 引き直し計算で計算した正確な借金額を3年で返済できるか?

〇 できる  → 任意整理 or 特定調停

× できない → 個人再生 or 自己破産

3 引き直し計算後の正確な借金額を5分の1した金額(最低100万円)を3年で返済できるか?

〇 できる  → 個人再生

× できない → 自己破産

というふうに考えて差し支えないと思います。

※上記は一般的な考え方であり、個々の借入状況や資産状況などによって当てはまらない場合もあります。実際に手続きを選択する場合は弁護士や司法書士に相談してから決定することをお勧めします。

タイトルとURLをコピーしました