特定調停とは?

借金の解決手続きは次の4つにわけられます。

1.任意整理・・・任意整理とは?
2.特定調停
3.個人再生・・・個人再生とは?
4.自己破産・・・自己破産とは?

しかし、法律になじみのない一般の人とっては任意整理や特定調停、個人再生や自己破産の手続きが具体的にどのような手続きであるのか、また、具体的にこれらの手続きにどのようなメリットやデメリットがあるのかといった点は非常に分かり難いのではないかと思われます。

ここでは、この4つのうち「特定調停」の手続きについて解説してみることにいたしましょう。

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特定調停の概要

特定調停とは、裁判所で借金額の減額や分割返済の話し合いを行う手続きのことをいいます。

特定調停の手続きを裁判所に申し立てると、本人(債務者)・貸金業者(債権者)・調停委員(裁判所が選任する)の3者間で話し合いが行われることになり、今後の返済金額や返済スケジュールなどを裁判所の関与する形で決めることが出来ます。

裁判所では、法律に従った解決案が出されますので、過去に法律の上限を超えた利息を支払っていたようなことがある場合は借金額の減額が認めれるため返済の負担軽減が望めます。

結果的には任意整理と同じような解決案となることになる場合が多いと思いますので、「任意整理の裁判所版」と考えても問題ないと思います。

 

特定調停のメリット

借金の減額が望めること

特定調停のメリットは基本的に将来利息のカットや過去に発生した遅延損害金の免除などがなされるため、今後雪だるま式に借金総額が膨れ上がること心配がなく、任意整理と同様に「金〇万円を〇回に分けて毎月〇万円づつ支払う」というような調停が整うため今後の返済額が分かりやすくなります。

料金が安いこと

特定調停の申立費用は1社当たり500円です。

※ただし申立費用の他に郵便切手の納付が必要(債権者1社の場合は1,500円分、その後1社増えるごとに256円分加算)。

裁判所|特定調停申立てQ&A

任意整理の場合は弁護士や司法書士の費用が必要(各事務所によって異なる・相場は1社当たり20,000~30,000円)となりますので、それに比べると格安で借金の整理が出来ます。

裁判所が絡むので安心感がある

手続きに公的な機関である裁判所が絡むので、法的に問題がある調停案が示されることはまずないと考えて良いでしょう(※調停委員も人間ですので絶対に間違いがないとは言い切れませんが・・・)。

また、弁護士や司法書士に依頼する任意整理の場合は、依頼する弁護士や司法書士の人柄なども気になりますし、「もしかして悪徳弁護士(司法書士)だったらどうしよう・・・」とか「ぼったくられるんじゃないだろうか・・・」といった心配がありますが、裁判所が絡む特定調停の場合はそれらの心配は全くありません。

 

特定調停のデメリット

裁判所に申し立てなければならないので申立手続きが面倒

特定調停は裁判所(簡易裁判所)に申し立てる必要があり、申立の際には申立書の他に借金の金額やこれまでの返済状況を示す資料(貸金業者から取り寄せる取引履歴など)や自分の資産状況などを示す資料(給与明細など)なども必要となるので、これらをそろえるのは慣れていないと面倒に感じるでしょう。

もっとも、最寄の簡易裁判所に行けば係りの人に教えてもらえますので、事前に電話して相談に行くのも良いでしょう。

裁判所|各地の裁判所一覧

調停委員は借金の専門家ではない

任意整理を行う弁護士や司法書士は通常、弁護士会(司法書士会)の主催する研修を受けたり、実務で多くの借金問題を処理してきた経験がありますので借金の専門家と言って問題ないと思います。

もちろん日本全国の弁護士や司法書士が借金問題に精通しているわけではないと思いますが、依頼するのは自分なので事前に借金問題に詳しい弁護士なり司法書士を選ぶことも可能です(事務所のサイトをチェックしたり、電話で聞いてみるとか)

しかし、特定調停は裁判所の数ある調停手続きのうちの一つにすぎませんので、選任される調停委員は必ずしも借金の専門家というわけではありません。

調停手続きにも離婚や相続などいろいろな調停があるわけで、自分が申立した特定調停に選任される調停委員が必ずしも借金の調停を多く手掛けてきた調停委員となるという保証はありません。

裁判所でも借金問題に詳しい人を選任するとは思いますが、仮に借金問題に詳しくない調停委員が選任された場合には、弁護士や司法書士に依頼する任意整理よりも不利な条件の調停案が提示される恐れもあります。

もし、選任された調停委員が「借りたものは返すのが当たり前だ!」的な思想の持ち主なら、「将来利息のカット」や「過去に発生した遅延損害金の免除」など認めてもらえないこともあるかもしれません。

特定調停後に返済が遅れるとすぐに差押される可能性がある

特定調停で話し合いが行われて協議が整った場合、調停調書が発行されますが、そこに記載されている文言には強制力があります。

通常、調停調書には「金〇円を、〇年○月○日まで、毎月〇日までに支払う」というふうに記載されていると思いますが、この調停調書は普通の裁判で発行される判決書と同じような効力があります。

公的な機関(裁判所)が法的に「あなたはこれだけの借金があるのは認めますね、だからこれからこの金額をこの回数で返済することを約束してくださいね」というお墨付きを与えるですから、今後争う余地のないものとして法的に確定するわけです。

なので、もし特定調停の後に返済が滞るような場合は、貸金業者はすぐにでも調停調書を裁判所に持って行って強制執行の手続き(差押)を申し立てることが出来る状況になります。

この点が裁判所が絡まない任意整理とは異るところで、任意整理の場合はあくまでも自分(実際には代理人となる弁護士や司法書士)と貸金業者間の私的な取り決めなので、仮に任意整理の後に返済が滞ったとしても、貸金業者がすぐに差押(強制執行)をするということにはなりません。

任意整理の和解(書)には裁判所が絡んでいないため公的な証明にはならず、特定調停のような強制力がないわけです。

任意整理の場合には、仮に返済が滞ったとしても貸金業者はいったん裁判所に貸金返還訴訟という裁判を申立てて「金〇円を支払え」という判決を取ってからしか強制執行(差押)をすることが出来ませんから、裁判が終わるまでの期間(早くても半年はかかる)は、すぐに差押されるという心配はありません。

このように、特定調停は任意整理より費用が低額な反面、いったん調停が整った後は強制力が発生することには注意する必要があります。

信用情報機関に事故情報が登録される

これは任意整理など他の手続きと同じですが、特定調停を行うと信用情報機関に事故情報が通知されます(いわゆるブラックリスト)。

特定調停の登録機関は5年となっていますので、5年間は新たな借り入れやクレジットカードの利用はできないと思った方がよいでしょう。

登録内容と登録期間|日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関

ただし、特定調停を申し立てる時点で返済が滞っていると思いますから、既に事故情報として信用情報機関には登録がなされていると思いますので(返済が遅れることも信用情報機関の登録事由になっています)、この点はあまり気にすることもないかもしれません。

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