自己破産で友人・知人・家族などからの借金がある場合

自己破産の申し立てを行う際に、友人や知人、家族などからの借金がある場合にはどのように扱えばいいのでしょうか?

返済が厳しくなってくると、つい家族や友達からも借金したりしてしまう人も多いでしょう。

しかし、友人や知人といった身近な人々は、自己破産の後も長い付き合いが予想されるため、消費者金融や銀行などと同じように扱わなければならないとすると、今後の交友関係にひびが入りそうで不安を感じる人も多いと思います。

そこで、ここでは、このように貸金業者以外の家族などから借金している場合の自己破産申立に際する注意点について考えてみたいと思います。

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友人・知人・家族などからの借金も全て自己破産の申し立てに含まなければならない

結論から言うと、友人・知人・家族といった個人からの借入も全て貸金業者などと同じように扱う必要がありますので、自己破産の申立書に「債権者」として記載しなければなりません。

≫ 友人や家族からの借金しかなくても自己破産できる?

これは、たとえ同居している親や兄弟からの借入であっても同じですし、結婚している妻や夫からお金を借りている場合でも同様です。

例えば
「車を買う時の頭金として親から10万円借りている」
「高校時代の同窓会に出席した際、二次会のカラオケ代金が足りなかったので友人に立て替えてもらった」
「恋人とデートに行った際、財布を忘れてしまったので恋人に今度のデートの時に返す約束をして映画代を出してもらった」
「出張に行ったとき、帰りの電車賃が足らなかったので同僚に立て替えてもらった」
「婚約者と結婚式場を予約したがその後別れることになった。結婚式場のキャンセル料を折半して支払うことになったが、お金がなかったので元婚約者に自分の分を立て替えてもらった」

これらは全て「借金」となりますので、自己破産の申し立ての際に裁判所に「債権者」として申告しなければなりません。

「立て替えてもらう」ということは「後で返す」ということなので、「返さなければならないけどまだ返していないお金」という意味で「借金」になります。

自己破産の際に裁判所に「債権者」として申告すると、自己破産の申し立てが受理されたのち裁判所からその「債権者」に自分が「自己破産することになったこと」「借りているお金は返せなくなったこと」などが書面で通知されますので、上記のようにお金を借りている(または立て替えてもらっている)友人・知人・家族などがいる場合には、事前に自分が自己破産をすることになったことを伝えておかなければならないでしょう。

 

友人・家族・知り合いからの借金を自己破産前に返済してしまうのはOKか?

前述のように、友人・家族・知り合いからの借金であっても、全て他の貸金業者と同じように自己破産の申立書に「債権者」として記載しなければなりません。

そうなると、お金を借りている友人・家族・知り合いなどに「自分が自己破産すること」がバレますし、借りているお金を踏み倒すわけですからその友人・知人・家族・知り合いとの今後の付き合いがギクシャクしてしまいそうです。

そのようなことを避けるため、自己破産の前にこれら友人・家族・知り合いからの借金だけを先に返済してしまうのは認められるでしょうか?

結論はNGです。

友人・家族・知り合いからの借金であっても、他の貸金業者などと同じように扱わなければならないのが自己破産の大原則です。

たとえそれが1,000円、2,000円といった少額であっても同様です。

もし、事前に友人・家族・知り合いからの借金だけを返済してしまうと「免責不許可事由」というものに該当することになり、自己破産の最終目的である「免責(借金の返済義務が免除されること)」が受けられなくなってしまう可能性があります。

※)ただし、友人などに対する借金が数千円程度と比較的少額の場合は、自己破産の申立をする一つのテクニックとして、その借金だけ事前に返済し、自己破産の申し立て時に裁判所にその旨を説明して裁判官や債権者の理解を求めていくという方法もあります。

この方法は当然免責不許可事由になるリスクがありますが、金額が少額の場合は裁判所も特に問題にしない場合もありますので、事案によっては有効な場合もあります。

もっとも、これは本来やるべきではない行為ですので、友人や親族などから借り入れがある場合には、自己破産を依頼する弁護士や司法書士とよく相談して対処する必要があるでしょう。

 

友人・知人・家族などからの借金を事前に「免除」してもらうのはOKか?

前述のように、たとえ友人・知人・家族などからの借金であっても自己破産の申立においては「債権者」として扱わなければなりません。

もっとも、友人・家族・知り合いのうちには、「自己破産の手続きに巻き込まれたくない」と思う人がいる可能性もあります。

「巻き込まれる」といっても、裁判所から「あなたがお金を貸している人が自己破産することになりましたよ」とか「この人の自己破産に文句がある時は裁判所に言ってくださいね」とかいう書類が自宅に送付されて来るだけですが、友人・家族・知り合いの中には「裁判所からの通知書なんて受領したくない」という人もいるかもしれません。

そんな時、その友人・家族・知り合いからに自分が自己破産することになったことを伝えて、借金を免除してもらうことは認められるでしょうか?

友人・家族・知り合いに頼んで借金を免除(チャラ)にしてもらえれば、自己破産の申し立てに際して裁判所に申告する必要がなくなるので、友人・家族・知り合いなどに裁判所から通知書が郵送されることもなくなります。

この点、借金を「免除」してもらうことは問題ありません。

借金が免除されれば、財産がある場合に他の債権者(貸金業者など)が受け取る分配金の割合が増えるので、他の債権者にとっても利益となりますから、友人・知人・家族・知り合いからの借金を免除してもらうのは問題がないでしょう。

ただし「自己破産したあとでお金返すから、とりあえず免除したことにしておいてよ」などと後で返済する約束をしてウソの免除をしてもらうのはNGですので注意が必要です。

なお、友人・知人・家族・知り合いからの借金を免除してもらった場合は、裁判所からあらぬ疑いをもたれないようにするために(また、友人などとの後日の争いを避けるうえでも)、免除してもらったことを証明書にしたためたうえで、上申書という書面を作成して裁判所にその旨を申告しておいた方がいいでしょう。

念のため、借金を免除してもらったことを証明する「債権放棄書」とその旨を裁判所に申告する「上申書」のひな形を作ってみましたので参考にしてください。

≪債権放棄書の例≫

平成○年○月○日

債権放棄書

氏名 友達太郎 ㊞

私は、下記の者に対する一切の債権を放棄いたします。

住所 東京都品川区〇〇町〇〇1-1〇〇マンション101号

氏名 自己破産する太郎

以上

 

≪友人からの借金を免除してもらったときの上申書の例≫

〇〇地方裁判所 御中

平成○年○月○日

上申書

申立人 自己破産する太郎 ㊞

友人からの借入につき全額免除を受けたことについて

私は、平成△年△月△日ごろ行われた高校の同窓会の際、二次会のカラオケ代金を支払うことが出来なかったため、同窓会に同席していた友人の友達太郎氏より金〇〇円を借り受けましたが、平成○年○月○日、同氏より債務全額の免除を受けましたので上申いたします。

添付書類:平成〇年○月○日付け友達太郎氏の債権放棄書

以上

 

なお、裁判所の申立書類はA4用紙で統一されていますので、債権放棄書や上申書はA4の用紙で作成するように心がけてください。

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