資産目録の作成手順(15)相続財産の欄の記載方法

自己破産の申し立てにおいて、相続した財産がある場合には、その財産の全てを申立書に記載しなければなりません。

これは、相続した財産は全て自分の財産となり、基本的には全てお金に換えられて債権者に分配させられるべきものになりますから、裁判所(裁判官)は自己破産する人が相続財産を引き継いでいる場合は、その財産の全てを把握しておかなければならないためです。

そこで、ここでは自己破産申立書の資産目録(資産説明書・財産目録)にある「相続財産」の欄の記載方法(書き方)について考えてみることにいたしましょう。

なお、自己破産申立書の作成方法についてはこちらの目次ページから必要な書類のページに移動してご確認をお願いします。

自己破産申立書作成マニュアル(目次)

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資産目録に記載すべき「相続財産」とは?

資産目録に記載すべき「相続財産」とは、土地や建物などの不動産だけでなく、貴金属やハンドバッグ、着物など被相続人(亡くなった人)のすべての財産が大将となります。

もっとも、たとえば被相続人が所有していた食器や衣類、文庫本など比較的評価額(売却する場合の価格)が低額なものは記載する必要はないでしょう。

 

遺産分割未了の相続財産も記載する

「相続財産」の欄には、遺産分割未了の財産も記載しなければなりませんん。

「遺産分割未了の財産」とは、相続したものの遺産分割協議をまだしていない財産のことをいいます。

たとえば、自己破産するAの父親Xが死亡し、Xの所有する時価300万円の盆栽1鉢を母親Y、弟のBと3人で相続する場合を考えてみましょう。

この場合、時価300万円の盆栽はXが死亡した瞬間に自動的にY・B・Cが相続することになり、Y・B・Cの共有状態(Y・B・Cがぞれぞれ1/3ずつの割合で所有権を取得することになる)となります。

盆栽は3つに分けることはできませんから(分けると枯れてしまう)三人の共有となるわけですね。

しかし、これは暫定的なものであって、そのあとにY・B・Cの3人が話し合いをして、そのうちの誰か一人が相続するということにすることも可能です。

この話し合いのことを「遺産分割協議」と言いますが、遺産分割協議は必ずしなければならないというものでもありませんから、この盆栽を3人の共有状態のままにしておいても構いません。

もっとも、盆栽など物理的に分けることが出来ないようなものは、遺産分割協議を行って誰の所有とするかを決めることが多いと思いでしょう。

このように、相続財産については遺産分割協議を行ってその相続財産を誰が相続するかという取り決めを行うことができますが、その遺産分割協議をする前に自己破産するような場合には、相続される財産の全てについて暫定的な所有権を有していることになりますから、自己破産の申立書にも自分が所有する「資産」として計上しなければならないわけです。

≪ワンポイントアドバイス≫

遺産分割協議は相続財産という資産を処分する行為となります。そのため自己破産をする前に遺産分割協議をすることは問題になる可能性が高いので注意が必要です。

たとえば、前述の例でAが自己破産の申し立ての前にY・Bとの間で遺産分割協議を行い、「盆栽はYの所有とする」と取り決めてしまうと、Aは盆栽の価格300万円のうち自分の持ち分であった100万円を放棄するということになってしまいます。

このような遺産分割協議をしてしまうと、自己破産するAは資産である100万円を失うことになってしまいますから、Aの債権者としては「Aから100万円を取り損ねる」ことになり損害を受けてしまいます。

そのため、自己破産を申し立てした後に裁判所や破産管財人から「その遺産分割協議はおかしいから取り消します」と注意されたり、最悪の場合は「Aは相続財産を隠すため故意にYが相続することとした」と判断されて詐欺破産罪(破産法265条)として処罰される可能性もあります。

このような事態を防ぐため、相続財産のある人が自己破産する場合には、遺産分割協議をしないで申し立てを行い、遺産分割協議は裁判所から選任される破産管財人に任せる(遺産分割協議はAの破産管財人とYとBの間で行う)方が良いでしょう。

 

資産目録の「相続財産」の欄の様式

自己破産の申立書は各裁判所によってその様式が異なっています。

ここでは、東京地裁と福岡地裁で使用されている申立書の資産目録にある「相続財産」を記載する欄の様式を参考として挙げておくことにいたしましょう。

東京地裁の場合

≪東京地裁で使用されている資産目録の相続財産を記載する欄の様式≫

● 相続財産
*被相続人、続柄、相続時期及び相続した財産を記入します。
*遺産分割未了の場合も含みます。

被相続人続柄相続時期相続財産
 年 月 日
年 月 日

上記の様式例のとおり、東京地裁で使用されている資産目録では「遺産分割協議の終わった相続財産」と「遺産分割協議の済んでいない相続財産」の双方を記載します。

また、相続財産の種類を限定していませんので、物(動産)だけでなく土地や建物といった不動産も記載する必要があります。

なお、東京地裁の場合には、「相続財産」の欄に記載したうえで、その相続財産が不動産であれば「不動産」の欄に、その他の財産であれば「過去5年間において、購入価格が20万円以上の物」などの欄にも、その相続財産の評価額などを調べて記載しなければなりません。

資産目録の作成手順(12)20万円以上の財産の記載方法

福岡地裁の場合

≪福岡地裁で使用されている資産説明書の相続財産を記載する欄の様式≫

15 遺産分割が済んでいない相続財産
□ない(過去2年以内の遺産分割協議  □ない □ある)
□次のとおり
(添付書類:本人の戸籍謄本、被相続人の除籍謄本、不動産の全部事項証明書、固定資産評価証明書等)

被相続人続柄相続時期相続財産
 年 月 日
 年 月 日

これに対し、福岡地裁で使用されている資産目録には「遺産分割協議の済んでいない相続財産」のみを記載します。

「遺産分割協議の終わった相続財産」については、自己破産する人の固有の財産となっていますので、不動産であれば「不動産」を記載する欄に、その他の財産であれば「現在処分すれば10万円以上になりそうな動産」などの欄に記載することになります。

資産目録の作成手順(14)不動産(土地・建物)の記載方法
資産目録の作成手順(12)20万円以上の財産の記載方法

 

資産目録の「相続財産」の欄の具体的な記載方法

例えば、前述の例で自己破産するAの父親Xが平成27年1月1日に死亡し、Xの所有する時価300万円の盆栽1鉢を母親Y、弟のBと3人で相続する場合にAが自己破産する場合の資産目録の記載例は次のようになります。

被相続人続柄相続時期相続財産
平成27年1月1日盆栽一鉢
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