自己破産の手続きは、その自己破産をする人個人の「借金(負債)」と「資産(財産)」を清算するものであるため、家族に内緒で手続きを進めることも場合によっては可能です。
なお、家族などに秘密にして自己破産することができるかという点についてはこちらのページで解説しています。
ただし、これはあくまでも「内緒ですることもできる」というだけの話であって、実際には家族に内緒で自己破産をすることは好ましいことではありません。
なぜなら、借金問題というものは、その家庭の家計に問題があることが多いからです。
家族に内緒で自己破産しても根本的な解決にはならない
借金の原因で一番多いのは「生活費の不足」というものですが、「生活費の不足」という原因の根本的な問題は、その家庭の「家計」が破たんしてしまっているという点にあります。
その家計の収入でその家計の支出を賄うことができないから借り入れに頼ってしまったわけですから、その根本的な家計の問題を改善しない限りたとえ自己破産が認められたとしても本当の解決にはなりません。
自己破産することは、家計の無駄を除いて家計の改善するために最適な機会であるにもかかわらず、家族に内緒にして自己破産の手続きを終えてしまうと、このせっかくの機会を失ってしまうことにもつながります。
そうなると、借金の根本的な解決がなされないまま借金の問題だけが解決してしまうことになりますから、たいていの場合、数年が経過するとまた借金を重ねるようになります。
その結果、このような人は2回、3回と自己破産を繰り替えしてしまうことになるのです。
このように、家族に内緒で自己破産などの債務整理を行うことは根本的な解決にならないと思いますので、基本的にはするべきではないのではないかと思います。
ところで「家族に内緒で処理します!」と謳っている弁護士や司法書士事務所のホームページや広告をよく見かけますが、個人的にはこの手の事務所には賛同できません。
「家族に内緒で処理します!」といっておけば依頼人は増えて儲かるでしょうし、家族に知られないまま秘密にして債務整理をすることもできるのでしょうが、果たしてそれで根本的な解決は望めるのでしょうか?
もちろん、私が過去に依頼を受けた債務整理の案件でも「家族に内緒で手続きをしたい」という希望を持った依頼人はたくさんいます。
しかし、私が債務整理を受任する場合には、どうしてもやむを得ないというような場合を除いて必ず同居の家族に話をしておくようにと指導してから受任するようにしていました。
こうしないと根本的な解決にならないからです。
たいていの依頼人は家族に話すのを躊躇しますが、家族に内緒で処理しても根本的な解決にならないことを説明すると、たいていの場合理解して家族に話をしてくれます。
「夫に話すと怒られる」とか「妻に話すと離婚されてしまう」と心配する人も多くいましたが、実際に話してみると案外自然と受け入れてくれます。
手続きが終わるころには「先生に言われたとおり、夫(妻)に話をしておいてよかったです」といわれることも多くありました。
中には、怒りっぽい夫におびえながら「夫に話すと怒られる」といっていた依頼人が夫に債務整理のことを話したら「そんなに家計が大変だったなんて知らなかった、家計をお前にまかせっきりにしていた俺も悪かった」と逆に謝られて、かえって家族の結束が深まったというケースもあります。
なので、家族に話すのをためらっている人も、勇気をもって話してみる方がよいのではないかと思います。