「自己破産すると身ぐるみはがされる」は本当?

「自己破産すると、すべての財産が取り上げられてしまう」といった話を聞くことがありますが、それは本当なのでしょうか?

自宅にある冷蔵庫や洗濯機までも取り上げられてしまっては、次の日からどうやって生活していけば途方に暮れてしまいますよね。

そんなことお構いなしに、裁判所や裁判官は鬼となってすべての財産を没収したりするものなのか、自己破産をする前はすごく不安になるでしょう。

そこで、ここでは自己破産した場合自分の財産がどうなるかなどについて考えていきましょう。

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生活に必要な家財道具は取り上げられない

自己破産手続きは「清算手続」ですから、原則として持っている財産は全てお金に換えて債権者(お金を貸している貸金業者など)に分配しなければなりません。

とはいえ、衣類から冷蔵庫、洗濯機まで全て取り上げられたら最低限の生活もままならなくなってしまいます。

そのため、生活に最低限必要な衣類や家具(タンスや冷蔵庫・洗濯機・テレビなど)、台所用品などといった「いわゆる差押禁止財産」は自己破産しても取り上げられないようになっています。

また、学習用具や仕事で使用する道具(大工さんのノコギリやカンナ、料理人の包丁、美容師のハサミ、音楽家の楽器など)も自己破産によって失うことはありません。

もっとも、売却すれば何百万円にもなるような超巨大テレビや、何億円もするバイオリンを持っている音楽家が自己破産するような場合には、取り上げられて売却させられる可能性はあるかもしれません(こういう人が自己破産するかは別として・・・)。

憲法で「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が保証されていますので、その文化的で最低限度の生活が出来る範囲での財産の所有も認められています。「身ぐるみはがされる」というような事態にはなりません。

 

自動車は全て取り上げられるか?

自動車についてはローンが残っているかいないかで大きく対応が分かれますので、個別に考えていきましょう。

車のローンが残っている場合

まず、車のローンが残っている場合は車の所有権がローン会社や販売店に残されていることが多いので、通常は自己破産の申し立てをする段階で車を引き揚げられ、ローン会社の方で売却されることになるでしょう(ローンの残額から売却された金額を差し引いた残りが最終的なローンの残額となる)。

車のローンが残っている場合は、ほぼ無条件に取り上げられると思って間違いないと思います。

車のローンを完済している場合

車のローンが残っていない場合(一括で購入したかローンを既に完済している場合)は、その車の資産価値がおおむね20万円以上あるかないかで判断が分かれます。

車の価値がおおむね20万円以上ある場合は資産価値があると認められるのが通常ですから、基本的に自己破産の申し立てによって取り上げられることになり、売却されて代金が債権者(お金を貸している貸金業者)に分配されることになるでしょう。

逆に、車の価値が20万円にとどかないような、下取りにも取ってもらえないようなボロ車である場合には、資産価値がないと判断されて取り上げられることもないと思います。

この「20万円」という基準は各裁判所や個別の自己破産の案件で異なってくることがありますので一概には言えませんが、だいたいそんな感じといっていいのではないかと思います。

ちなみに、車がある場合は「車の査定書」が2通以上必要となりますので、中古車販売業者など2か所で車を査定してもらう必要があります。

なお、車の資産価値が20万円以上あったとしても、仕事の通勤にどうしても必要であるとか、親の介護に欠かせないなどの特別な事情がある場合は裁判所の方でもある程度考慮に入れてもらえると思いますので、依頼する弁護士さんや司法書士さんに相談して車の所有を認めてもらえるよう説得してもらいましょう。

 

生命保険や医療保険などは解約させられるか?

基準は解約返戻金が20万円以上あるかないか

生命保険や医療保険についても、解約返戻金(解約したときに戻ってくるお金)がおおむね20万円以上あるかないかで判断されることが多いようです。

解約返戻金が20万円以上ある場合は資産価値が認められることになり、強制的に解約させられ解約返戻金が債権者に分配されることになるでしょう。

解約返戻金が20万円に満たない場合には、資産価値が認められないと判断されてそのまま契約を継続していくことが可能となることが多いようです。

もっとも、自己破産に至った理由が過剰な生命保険の契約にあるような場合には(特に生命保険の販売員の仕事をされている人に多く、知り合いの販売員と互いに生命保険を契約し合うなど自爆営業しているケース)、解約返戻金が20万円に満たない場合であっても解約を促されることがあるかもしれません。

契約者貸付を利用している場合

ちなみに、契約者貸付(生命保険の解約返戻金の範囲内で保険会社からお金をかりられる制度)を利用している場合には、解約返戻金から契約者貸付の金額を差し引いた金額が20万円を上回るかどうかで判断されると思いますので、事前に生命保険会社で確認することも必要でしょう。

持病や疾病があり生命保険や医療保険が欠かせない場合

なお、解約返戻金が20万円以上ある場合であっても、持病や何らかの疾患があり入退院を繰り返しているような状態で生命保険や医療保険の保険金が利用できるような場合には、保険を解約しないほうが自己破産後の生活再建に役立つ可能性があり裁判所も解約しない方向で調整してくれることもありますので、依頼する弁護士や司法書士に相談して裁判所を事情を説明してもらうようにお願いしてみましょう。

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