資産目録の作成手順(14)不動産(土地・建物)の記載方法

自己破産の申し立てにおいて、土地や建物など不動産を所有している場合は、その不動産を資産目録(資産説明書・財産目録)に記載しなければなりません。

これは、住宅(家屋・建物)や土地(田畑・山を含む)は、一般的には比較的高額な値段で売却できるのが通常であり、そのような財産は基本的に売却し、その売却代金を債権者に配当(分配)しなければならないというのが自己破産における基本的な処理手順となっているためです。

そこで、ここでは自己破産申立書の資産目録(資産説明書・財産目録)の「不動産」の欄の記載方法(書き方)について考えてみたいと思います。

なお、自己破産申立書の作成方法についてはこちらの目次ページから必要な書類のページに移動してご確認をお願いします。

自己破産申立書作成マニュアル(目次)

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資産目録(資産説明書)に記載が必要となる「不動産」とは

不動産とは、土地や建物などをいい、土地には山や田畑も、また建物は一軒家だけでなくマンションも含まれます。

自己破産する人が所有権者として名義人になっている不動産は全て記載する必要があります。

なお、不動産の名義人は法務局で発行されている不動産登記事項証明書で誰でも簡単に調べることが出来ます。

 

共有の不動産であっても記載する

自己破産の申し立てをする人が単独で名義人となっていない不動産であっても記載が必要となります。

例えば、A・Bの1/2づつの共有になっている土地であっても、Aが自己破産する場合にはその不動産を記載する必要があります(ただし、共有であることも記載します)。

 

オーバーローンであっても記載する必要がある

オーバーローンとは、その不動産の現在の価格が住宅ローンの残額を下回っている場合をいい、不動産を売却したとしても住宅ローンが残ってしまうような状態のことを意味します。

例えば3000万円で一軒家(土地と建物)を30年ローンで購入し、10年間で1000万円の返済を終わっているとします。このとき、不動産屋さんに自宅の評価額(査定額)を調べてもらったところ、「1500万円ぐらいでしか売れない」と言われたとすると、住宅ローンの残額は2000万円ありますから、たとえこの時に自宅を売却しても住宅ローンが500万円残ってしまいます(住宅ローンの残額2000万円ー査定額1500万円=500万円)。

このように、オーバーローンとなっている不動産は、資産的な価値がマイナスになっていると言えますが、自己破産の申立書には記載する必要があります。

 

他の都道府県の不動産であっても記載する必要がある

たとえば、沖縄に不動産を所有している人が、現住所のある東京地方裁判所に自己破産を申し立てる場合であっても、沖縄にある不動産を記載しなければなりません

 

資産目録の「不動産」の欄の様式

自己破産の申立書は各裁判所によってその様式が異なっています。

ここでは、東京地裁と福岡地裁で使用されている資産目録(資産説明書)の「不動産」を記載する欄を参考として挙げておきましょう。

≪東京地裁で使用されている資産目録の「不動産」の欄≫

● 不動産(土地・建物・マンション)
*不動産の所在地、種類(土地・借地権付建物・マンションなど)を記載します。
*共有などの情報は、備考欄に記載します。
*登記簿謄本を提出します。
*オーバーローンの場合は、提携の上申書とその添付資料を提出します。
*遺産分割未了の不動産も含みます。

不動産の所在地種 類備 考

≪福岡地裁で使用されている資産説明書の「不動産」の欄≫

13 不動産(土地、建物、マンション等)(配偶者(過去1年以内に離婚した者も含む。内縁も同様)、同居の親・子所有分を含む。)
□ない
□次のとおり(添付書類:不動産の全部事項証明書等)

番号不動産の所在地種類所有者
□家屋 □土地
□マンション
~

 

相続後遺産分割前の不動産も記載する

上に挙げた様式例を見てもわかるように、東京地裁の申立書では、相続した不動産で遺産分割前のものも記載するようになっています。

例えば自宅の土地と建物の所有権者が父親Aの名義になっているような状態で父親Aが死亡し、母親Bと兄弟C・D2人の計3人が相続人であるような事例では、B・C・Dの3人で遺産分割協議を行い、A名義の土地と建物を相続人であるB・C・Dのうちの一人の名義にするか、B・C・D(又はそのうちの二人)の共有名義にするか話し合いが必要となります。これを遺産分割協議といいますが、その話し合いをする前に兄Cが自己破産するような場合には、兄CもAの土地と建物の暫定的な所有者と言えますから、自己破産の申立書にその相続した土地と建物を記載しなければなりません。

福岡地裁の場合

ただし、福岡地裁などでは「遺産分割が済んでいない相続財産」を記載する欄が別途設けてありますので、遺産分割が済んでいない不動産があるような場合は「不動産」の欄ではなく「遺産分割が済んでいない相続財産」の欄に記載するようになっています。

このように、裁判所によって記載方法に若干の違いがありますので注意してください。

15 遺産分割が済んでいない相続財産
□ない(過去2年以内の遺産分割協議  □ない □ある)
□次のとおり
(添付書類:本人の戸籍謄本、被相続人の除籍謄本、不動産の全部事項証明書、固定資産評価証明書等)

被相続人続柄相続時期相続財産
~
~

 

資産目録の「不動産」の欄の具体的な記載例

例えば、自己破産をするAが、大阪市東淀川区淡路一丁目〇ー〇にある土地と建物を所有している場合(建物は妻Bとの共有)は次のような記載例となります(様式は東京地裁のもの)。

不動産の所在地種類備考
大阪市東淀川区淡路一丁目〇-〇土地・建物建物は妻Bとの共有
~

 

福岡地裁の資産説明書の「不動産」の欄の記載例

前に挙げた記載例のとおり、福岡地裁で使用されている資産説明書では、「抵当権の被担保債権額」を「固定資産評価額」で除した金額が固定資産評価額の1.3倍を超えているかを記載する必要があります。

これは、住宅ローンの残っている不動産は自己破産に際して住宅ローン会社が競売に掛けるか任意売却するのが基本ですが、その際に設定される最低売却価格は通常、固定資産評価額の1.3倍より大きい価格となることが多いためです。

「抵当権の被担保債権額」を「固定資産評価額」で除した金額が固定資産評価額の1.3倍を超えない場合は、住宅ローン会社が競売による売却代金を弁済に充当した後に売却代金が残ることになりますから、競売にかけてもなお資産的な価値があると判断されることになります。

反対に、1.3倍を超える場合は、いわゆるオーバーローン状態となっており、競売によって売却代金を住宅ローン会社が弁済にあてた後にはお金が1円も残らないことになりますから、資産的な価値はないと言えます。

資産的な価値がある場合は、裁判所は破産管財人を選任して詳しく調査する必要がありますから(そのため、1.3倍を超えない場合は添付書類として査定書の提出が求められている反面、1.3倍を超える場合は査定書の提出が義務付けられていない)、その判断材料とするために、1.3倍を超えるか超えないかを記載することとなっているのです。

前置きが長くなりましたが・・・

例えば、前述の例と同じく、大阪市東淀川区淡路一丁目〇ー〇にある土地と建物(購入価格は3000万円)を所有しているAが(建物は妻Bとの共有)、福岡地裁に自己破産を申し立てる場合に、申立前に不動産で査定してもらった金額が土地建物合計で1300万円、市役所で発行してもらった固定資産評価証明書に記載されている評価額が1000万円(土地500万円・建物500万円)、住宅ローンの残額が1200万円の場合の記載例は次のようになります。

番号不動産の所在地種類所有者
大阪市東淀川区淡路一丁目〇-〇☑家屋 ☑土地
□マンション
~
番号( 1 )について
抵当権の被担保債権の残債務額
( 12,000,000 円)
_________________ = ( 1.2  )
固定資産評価証明書の額
( 10,000,000 円)
□ 1.3倍を超えています。
☑ 1.3倍を超えていませんので、査定書を提出します。
査定書での評価額は( 13,000,000 円)です。
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