自己破産の申し立てにおいては、給料や自営収入などの「収入」がある場合には、その金額や支給日などを資産説明書(資産目録・財産目録)の「収入」の欄に記載しなければなりません。
※ただし、給料の未払いが生じている場合は「求償金」などと同列の「請求権」として扱われますので、その未払いになっている未払い賃金(未払い給料)の部分については「収入」の欄ではなく「請求権(貸金・求償金)」の欄に記載することになり、通常受け取るべき給料の金額を「収入」の欄に記載することになります。
これは、自己破産する人がどのような経済状態に置かれているのかを判断する資料にもなりますし、給料などの収入も「資産」として裁判所が把握しておかなければならないからです。
そこで、ここでは自己破産申立書の資産説明書(資産目録・財産目録)の記載事項のうち、「収入など」を記載する欄の書き方について考えていくことにいたしましょう。
なお、自己破産申立書の作成方法についてはこちらの目次ページから必要な書類のページに移動してご確認をお願いします。
資産説明書(目録)に記載すべき「収入など」とは?
自己破産申立書の資産説明書(資産目録・財産目録)に記載しなければならない「給料など」には、月々にもらう給与だけでなく、賞与(ボーナス)や取締役などの役員報酬も含まれます。
自営業者の収入もこの欄に記載しなければなりません。
また、アパートやマンション、借家などを貸していて、賃料収入がある場合などもこの「収入」の欄に記載する必要があります。
副業をしている場合
本業の仕事とは別にアルバイトなどの副業をしている場合は、その収入についても記載しなければなりません。
家業を手伝っている場合であっても、その労働の対価としてお金をもらっているような場合はその金額を記載しなければならないでしょう。
≪ワンポイントアドバイス≫
家業を手伝っていてその見返りに「お小遣い」程度のお金をもらっている場合であっても、念のためその金額を記載しておいた方が無難でしょう。
お小遣い程度のお金であれば裁判所が問題にすることはないと思いますが、裁判官によっては少額のお金であっても「資産」として申告することを求めてくる場合もあります。
そのような裁判官にあたってしまった時に記載しておかなかったとすると、後で「資産を隠すために記載しなかったんじゃないか?」とあらぬ疑いをもたれる可能性があります。
そのような不測の事態を招かないためにも、お小遣い程度の少額の報酬であっても記載しておく方が良いと思います
月々の収入が異なる場合
会社員で月々の収入が異なるような場合には、自己破産の申立の前2~3か月間の給与の平均を記載しても良いでしょう。
「2~3か月」としたのは、裁判所によって申立書に添付する給与明細の月数が異なるからです。
東京地裁などでは申立前2か月分の給与明細を添付すればよいですが、福岡地裁では申立前3か月分の給与明細の添付が必要となります。
そのため、東京地裁に申し立てる場合は申立前2か月間の給与の平均を、福岡地裁に申し立てる場合は申立前3か月間の給与の平均を記載すればよいと思います。
なお、このように「平均額」を記載する場合は、どのようにしてその金額を算出したかを明らかにするために、収入を記載する欄の余白などに「※申立前2か月分の給与を2で除した金額」などと記載しておく方が良いでしょう。
「申立前2か月分の給与を2で除した金額」と書いた付箋を貼りつけておくのも良いと思います。
≪ワンポイントアドバイス≫
申立前の給与の平均を記載しなければならないというわけではありません。
申立前直前の月の給与の額を記載しても問題ないと思います。気になる人は、申立する裁判所で確認しても良いでしょう。
自営業者で月々の収入に幅がある場合
自営業者の場合は、月々の収入に大きく幅が出る場合があります。
その場合には、前年度の確定申告書の写しなどを参考にして、年収を12で割った金額を書いても問題ないでしょう。
ただし、どのようにしてその金額を算出したかを明らかにするために、収入を記載する欄の余白などに「※前年度の確定申告書の年収を12で除した金額」などと記載しておく方が良いでしょう。
「前年度の確定申告書の年収を12で除した金額」と書いた付箋を貼りつけておくのも良いと思います。
なお、自営業者の場合は、東京地裁の場合は過去2期分(2年分)の、福岡地裁の場合は過去3期分の確定申告書の写しを添付しなければなりません。
不動産の賃料収入がある場合
前述したとおり、アパートやマンション、借家などを持っている場合は、その賃料収入についても「収入」として記載しなければなりません。
アパートやマンションの部屋が複数あるような場合には、その賃料の合計額を記載しておけば問題ないでしょう。
なお、後述しますが、「収入」を記載する欄には、その収入の「支給日」を記載する欄が設けられています。
賃料収入の場合は、賃料の受取日を「支給日」の欄に記載すればよいですが、複数の部屋を貸している場合は、その部屋を借りている店子によって「賃料の支払日」もまちまちになってくると思います。
そのような場合は、「賃料の実際の受取日」ではなく、「賃料の支払い期限の日」を記載しておいても問題ないでしょう。
ただし、このように記載する場合には、記載欄の余白などに「賃料の支払い期限の日を記載」などと記載するか、付箋を貼っておいた方が良いでしょう。
資産説明書(目録)の「収入」を記載する欄の様式
自己破産の申立書は各裁判所によってその様式に若干の違いがあります。
ここでは、東京地裁と福岡地裁でそれぞれ使用されている申立書の資産目録の「収入」を記載する欄を参考として挙げておきます。
≪東京地裁で使用されている資産目録の「収入」を記載する欄の様式≫
4 報酬・賃金(給料・賞与など)
*給料・賞与等の支給金額だけでなく、支給日も記載します(月払いの給料は毎月〇月とし、賞与は直近の支給日を記載します)。
*最近2か月分の給与明細及び源泉徴収票又は過去2年度分の確定申告書の各写しを提出します。源泉徴収票のない人、確定申告書の控えのない人、給与所得者で副収入のあった人又は修正申告をした人はこれらに代え又はこれらとともに課税(非課税)証明書を提出します。
種 類 支給日 支給額 年 月 日 円 年 月 日 円
≪福岡地裁で使用されている資産説明書の「収入」を記載する欄の様式≫
3 給料、報酬、賃料収入等
□ない
□次のとおり(添付書類:給与明細書等)
種 類 金 額 支給日 番 号* 給料、報酬 円/月 毎月 日 事業収入 円/月 毎月 日 不動産賃料 円/月 毎月 日 *「番号」のところには、上記給料等が振り込まれる金融機関について、上記2の「預金、貯金口座」の表の番号を記載してください。なお、手渡しの場合は、「手渡し」と記載してください。
資産説明書(目録)の「収入」を記載する欄の具体的な記載例
例えば、正社員としての毎月の給料が20万円(支給日は20日)、副業として引越屋で週末にアルバイトをしている(日給8000円、支給日はその日払いで毎月平均6日出勤している)場合の記載例は次のようになります(申立書の様式は東京地裁のもの)。
種 類 支給日 支給額 給与 毎月20日 20万円 給与 当日払い
(毎月6日程度出勤)8000円
(月48000円程度)
≪ワンポイントアドバイス≫
なお、収入の種類が多く、申立書の欄に記載できないような場合は、A4用紙を利用して適宜に記載し、申立書に「別紙に記載」などと記入しておけばよいでしょう。