自己破産の申立においては、過去に受け取っている退職金や受け取る予定のある退職金がある場合には申立書にその詳細を記載し、退職金に関する書類を申立書に添付しなければなりません。
これは、退職金はすでに受領している場合だけでなく、受領する予定のものであっても、「資産」としての価値が認められますし、一般的に退職金は高額となる場合が多いことから、裁判所が資産としての価値を正確に把握しておかなければならないためです。
自己破産申立書の資産説明書(資産目録・財産目録)にも「退職金」を記載する欄が独立して設けてあり、その欄に退職金の金額を記載しなければならないことになっています。
そこで、ここでは自己破産申立書の資産説明書(資産目録・財産目録)にある「退職金」の欄の記載方法(書き方)について考えていくことにいたしましょう。
なお、自己破産申立書の作成方法についてはこちらの目次ページから必要な書類のページに移動してご確認をお願いします。
退職金を受け取っている場合
既に勤めていた会社を退職し、退職金を受け取っている場合には、その受領した退職金の金額を記載します。
この場合、会社から支払われた退職金の金額が分かる書類などを添付する必要があります。
退職したものの、まだ退職金を受け取っていない場合
退職してから退職金の支払いがなされるまでの間に自己破産の申し立てをするような場合は、退職金の見込額を記載します。
この場合は退職金の見込み額を証明するために、退職金の計算方法などが記載されている就業規則の写しや、勤め先の会社から「退職金の見込み額証明書」などを作成してもらって申立書に添付しなければなりません。
※後述しますが、東京地裁の申立書では、退職後未だ退職金を受領していない場合は「退職金の見込み額」の「総額」と「4分の1」の金額の2つを記載することになっています。
退職する前で退職金をまだもらっていない場合
退職する前の場合は、いまだ退職金の支払いがなされていませんので、このような状態の場合も、前述の「退職金の見込み額」を記載します。
申立書に添付する書類も就業規則や会社から発行してもらう見込み額証明書となります。
退職金の制度がない場合
勤めている会社に退職金の制度がない場合は退職金そのものが存在しないわけですから、自己破産申立書の資産説明書(資産目録・財産目録)にある「退職金」の欄には何も記載する必要はありません。
ただし、「退職金の制度がない」ということを証明するために、「退職金の支給規定がない」と記載されている「就業規則」の写しや、会社から「退職金がないことの証明書」を書いてもらい、自己破産申立書に添付する必要があります。
勤続5年未満・アルバイト・パートの場合
正社員であっても入社して5年未満の場合には、たとえその勤めている会社に退職金の制度があったとしても、自己破産申立書の資産説明書(目録)にある「退職金」の欄には何も記載する必要はありません。
また、アルバイトやパートなどの場合にも、「退職金」の欄には何も記載しなくて構いません。
資産説明書(目録)の「退職金」の欄の様式
自己破産の申立書は各裁判所によってその様式に若干の違いがあります。
ここでは、東京地裁と福岡地裁で使用されている自己破産申立書の資産説明書(資産目録)の「退職金」を記載する欄の様式を参考までにあげておくことにいたしましょう。
≪東京地裁で使用されている資産目録の「退職金」の欄の様式≫
5 退職金請求権・退職慰労金
*退職金の見込み額を明らかにするため、使用者又は代理人作成の退職金計算書を添付します。
*退職後に退職金を未だ受領していない場合は4分の1相当額を記載します。
種 類 総支給額(見込額) 8分の1(4分の1)相当額 円 円 円 円
≪福岡地裁で使用されている資産説明書の「退職金」の欄の様式≫
4 退職金請求権、退職慰労金(年金受給型を含む)
(今退職するとした場合の支給見込み額又は過去に受給した額)
□ない(その理由 □退職金制度がない □パート、アルバイト、派遣 □勤続年数が短い)
□次のとおり(添付書類:退職金支払(見込)額証明書、退職金のないことの証明等)
種 類 金 額 支給日等 円 □平成 年 月 日受領
□まだ受領していない円 □平成 年 月 日受領
□まだ受領していない受領した退職金を使ってしまった場合は、その使途の内訳を詳しく書いてください。
資産説明書(目録)の「退職金」の欄の具体的な記載例
例えば、退職した後、退職金の受領前に自己破産の申し立てをする場合で、退職金の見込み額が800万円である場合の記載例(申立書は東京地裁のもの)は次のようになります。
種 類 総支給額(見込額) 8分の1(4分の1)相当額 退職金 800万円 200万円 ~