自己破産の申立の際、退職金がある場合には自己破産の申立書にその金額などを記載しなければなりません。
なぜなら、自己破産の手続きにおいては、自己破産の申立をする人が所有する財産(資産)は全て取り上げられて売却され、お金に換えられて債権者に分配(配当)されるのが原則とされているからです。
この点、退職金も例外ではなく、自己破産の申立をする人の資産「財産」と考えられますから、自己破産の申立書に記載して裁判所に報告する必要があるのです。
もっとも、退職金がある場合には必ず裁判所に取り上げられて債権者に分配されるというものでもなく、受け取った退職金が少額であったり、退職金以外の財産を考慮しても債権者に分配するほどの「資産(財産)」と言えないような場合には、退職金があっても取り上げられない場合もあります。
そこで今回は、自己破産の申立の際、退職金がある場合にはどのような取り扱いを受けるのか、といった点について考えてみることにいたします。
退職金の「1/8」は取り上げられるのが原則
自己破産の手続きにおいては、退職金の8分の1にあたる金額については裁判所に取り上げられて、債権者に分配(配当)されるのが原則となっています。
たとえば、平成28年5月に自己破産の申立をする人が、平成27年12月に勤務先の会社を退職して200万円の退職金を受け取っている場合であれば、その受け取った200万円の8分の1にあたる25万円については、自己破産の手続きで裁判所に取り上げられて、債権者に分配されることになります。
退職前でも退職金を受け取る予定があれば取り上げられる
前述したように、自己破産する人に退職金がある場合には、その8分の1は裁判所に取り上げられて債権者に分配されることになります。
これは、自己破産の申立をする時点では未だ退職していない人についても当てはまります。
自己破産の申立をする時点では未だ退職していない場合であっても、その勤務している会社に退職金の支給規定がある場合には、将来的に退職金が支払われることは確実となっています。
そのため、自己破産の申立時点で未だ退職金を受け取っていない場合であっても、その受け取る予定となっている退職金の8分の1にあたる金額については裁判所に取り上げられて債権者に分配されることになります。
もっとも、自己破産の申立時点では未だ退職金は支給されていませんから、裁判所は自己破産の申立人から退職金を取り上げることができません。
そこで、このような場合には、自己破産の申立人が現金を所有している場合にはその所有している現金から退職金の8分の1にあたる金額を裁判所(破産管財人)に納付させ、それが債権者に分配されることになります。
もし、手元に現金が用意できない場合は、数か月間の猶予が与えられ、その間に受け取る予定とされている退職金の総額の8分の1にあたる金額を積み立てさせて、その退職金の8分の1にあたる金額が積み立てられた時点で裁判所に取り上げられて債権者に分配されることになります。
なお、このような場合には、すでに退職金の8分の1にあたる金額は裁判所に取り上げられていることになりますので、将来受け取る退職金については全て自分が受け取ることができることになります。
ちなみに、退職金を受け取る予定があるからといって、裁判所が勤務先に対して退職金を請求することはありませんので安心してください。
すでに退職金を使ってしまっていても取り上げられる
受け取った退職金をすでに使ってしまっている場合にも、受け取った退職金の8分の1にあたる金額については裁判所に取り上げられることになります。
この場合、手元にお金がなく、その取り上げられるべき金額を用意できない場合には、数か月間の猶予が与えられて、その間に積み立てすることになるのが通常です。
退職金の8分の1が20万円を超えない場合は原則として取り上げられない
前述したように、受け取った(または受け取る予定の)退職金の8分の1は裁判所(破産管財人)の取り上げられてい債権者に分配されるのが原則です。
しかし、たとえ退職金がある場合であっても、その受け取った(または受け取る予定の)退職金の8分の1にあたる金額が「20万円」を超えない場合には、基本的に裁判所に取り上げられることはありません。