自己破産の申立を考えている人の中には、ヤミ金からお金を借りている人もいるのではないでしょうか?
ヤミ金などの違法業者からは絶対にお金を借りてはいけませんが、もしもヤミ金との取引がある人が自己破産する場合には、そのヤミ金との取引の詳細を裁判所に申告しなければなりません。
しかし、ここで問題となるのは、”ヤミ金”を銀行や消費者金融などの金融機関と同じように「債権者」として扱っていも良いかという点です。
ヤミ金は犯罪行為であり犯罪集団ですから、その犯罪者を銀行や消費者金融と同列に扱って「債権者」とするのは、どう考えても納得がいかないようなきがします。
そこで、ここでは自己破産の申し立ての際に、ヤミ金を「債権者」として扱ってよいのか、またヤミ金を「債権者」として扱うべきか否かという点について考えてみたいと思います。
ヤミ金の定義
まず、自己破産手続におけるヤミ金の処遇を考える前に、どのような借り入れが「ヤミ金」に該当するのかというヤミ金の「定義」を考えなければなりませんが、ヤミ金であることを確認する方法についてはヤミ金であることを確認する4つの方法のページに記載していますので、そちらでご確認ください。
ヤミ金は「債権者」と言えるか?
ヤミ金は法律の上限を超えた利息でお金を貸し付けるのを生業としており、その目的は不当に高額な利息を請求するところにあります。
そのため、出資法の上限金利(年率20%)を著しく超える利率(具体的には年利数百~数千%)の利息を請求するような契約は、貸付契約自体が公序良俗に反し無効となりますので、ヤミ金から借りた借金は利息のみならず現金についても返済する必要がないと判断される可能性があります(最高裁平成20年(受)第569号)。
最高裁平成20年(受)第569号
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ヤミ金融業者に係る最高裁判決の概要について:金融庁
そして、090金融などに代表されるヤミ金の貸付利率は通常、年利数百~数千%を超えていますから、ヤミ金から借りたお金は利息だけでなく元金(元本)も返済する必要がないと考えることが可能といえるでしょう。
※なお、ヤミ金の利率の計算方法についてはこちらのページで解説しています。
そうすると、ヤミ金からお金を借りていても、その契約自体が無効となって利息も元金(元本)も返済する必要がないとなりますから、ヤミ金に対する「債務(借金)」が存在しないということになります。
そのため、ヤミ金との間では債権債務関係が発生しませんから、ヤミ金からお金を借りていた場合であっても、ヤミ金は「債権者」にはならないということになります。
ヤミ金は「債権者」ではないけれども、自己破産申立書には「債権者」として記載する方が良い
前述のとおり、出資法の上限金利を著しく超える利率で貸付を行っているヤミ金は、「債権者」とはなりません。
しかし、自己破産の申立書を作成するうえでは、「債権者」として債権者一覧表に挙げておく方が良いです。
なぜなら、前述のように「出資法の上限金利を著しく超える利率」かどうかの判断は個別の案件によって異なりますので、たとえ自分の取引しているヤミ金が「出資法の上限金利を著しく超える利率」で貸付を行っているからと思っていても、裁判所の判断では「出資法の上限金利を著しく超える利率」と判断されない可能性も無いとは言えないからです(※ただし闇金との契約が有効と判断されることはほぼ皆無です)。
自己破産申立書の債権者一覧表に挙げておかなかった債権者については、自己破産が認められ免責(借金の免除)の対象となりません。
そのため、もしも「出資法の上限金利を著しく超える利率」で貸付をしていると判断したヤミ金を債権者一覧表に記載せず、自己破産の後で、そのヤミ金との契約が裁判所で「出資法の上限金利を著しく超える利率」ではないと判断されてしまった場合には(※通常はそのようなことはありえませんが・・・)、そのヤミ金から借りたお金の元本や利息を返済しなければならないといことになってしまいます。
このような不測の事態を避ける意味もあるので、たとえ「出資法の上限金利を著しく超える利率」で貸付を行っているヤミ金であっても、自己破産申立書の債権者一覧表には「債権者」としてそのヤミ金を記載する方が安全でしょう。
≪補足≫
前述したとおり、「出資法を著しく超える利率で貸付を行っているヤミ金」に対しては借りたお金の利息も元金(元本)も返済する必要はありませんので、基本的にこのようなヤミ金に対しては「負債」は存在しません。
そのため、自己破産申立書の債権者一覧表にヤミ金を「債権者」として記載しないとしても間違いではなく、弁護士や司法書士が作成する申立書でもヤミ金を「債権者」として記載しない場合が多いかもしれません。
しかし、万が一ヤミ金との契約が有効とされた場合のリスクも考慮して、このページではヤミ金についても債権者一覧表に記載するべきというふうに解説しています。
なお、闇金から借り入れがある場合の申立書への具体的な記載方法はこちらのページを参考にしてください。