友人や知人、親兄弟などの家族からの借金であっても、自己破産の手続きにおいては他の銀行や消費者金融などの貸金業者からの借金と同様に、「債務」として裁判所に届け出なければなりません。
なぜなら、自己破産の手続きにおいては特定の借金だけを手続きから除外することはできず、すべての借金を自己破産の手続きに含めて申し立てをしなければならないからです。
友人や親族・親兄弟などの家族からの借金だけを自己破産から除外して返済することを認めてしまっては、自己破産によって借金の返済が受けられなくなってしまった他の銀行や貸金業者に対して不公平な結果となってしまいます。
そのため、たとえ友人や家族、親族からの借り入れであっても、すべての借金を自己破産の手続きで処理しなければならないと決められているのです。
ところで、ここで疑問に思うのは、「友人や知人、家族などからの借金だけしかない場合でも自己破産することはできるのか?」という点です。
銀行や消費者金融からの借金が1円もない代わりに親や友人からの借金だけがある人がいたとして、その人はその親や友人からの借金が返せなくなった時に自己破産の申立をすることができるものなのでしょうか?
友人等だけにしか借金がない場合でも自己破産することはできるが…
この点、理論的に考えると、友人や親兄弟からの借金だけしかない状態でも自己破産することは可能です。
なぜなら、親兄弟や友人などからの借金だけしかない人が行う自己破産の申立を制限する法律は存在していないからです。
ただし、これはあくまでも法律の理論的な話で、実際にはそれほど簡単には自己破産の免責(借金の返済が免除されること)は認められないのではないかと思います。
友人や親兄弟からの借金は、たいていの場合無利息なものが多いと思いますし、借金の返済が難しくなっても返済を延期してもらったり、場合によっては借金の返済を免除してもらえることも可能な場合が多いと考えられます。
そのため、友人や親兄弟からの借金だけしかない人が自己破産の申立書を裁判所に提出したとしても、裁判所(裁判官)としては、
「なぜ、話し合いで返済期日の延期や返済の免除が得られないのか」
「通常は銀行や貸金業者などからの借金を返済できなくなってから親や友人から借金をすることが多いのに、なぜ銀行などからの借金が全くないのに親や友人などからの借金だけがあるのか」
などといった点に疑問が生じるのではないかと思います。
銀行や消費者金融からの借金が1円もないのに、親や親族、友人や知人などからの借金だけしかないというのは、一般的にみると「不自然」と思われることもあるので、自己破産の申立をしたとしてもその「不自然」な点に納得のいく説明がつくまで詳細に調べれられるのではないでしょうか。
もちろん、「返せない借金」は自己破産でしか処理することができませんから、裁判所が納得できるような説明ができるのであれば、親兄弟や友人などからの借金しかない状況であっても自己破産の免責は認められることになるでしょう。
しかし、「銀行やサラ金から1円も借金がないのに、返せないほど多額のお金を親兄弟や友人から借りている」という状況は、自己破産の事例としては極めて珍しい特異な事例といえますので、自己破産の申立手続きにおいては裁判所から詳細な調査がなされると考えておいた方がよいのではないかと思います。