自己破産すると銀行の預金口座は利用できなくなる?

自己破産の申し立てを行うと、銀行に預けている預金が全て引き出せなくなったり、給料の振り込みや光熱費の引き落としが出来なくなるといった話を聞くことがあります。

しかし、本当にすべての銀行との取引が出来なくなったりするものなのでしょうか?

そこで、ここでは自己破産したときに銀行口座などはどうなるかなど、自己破産と銀行取引について考えてみることにいたしましょう。

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利用できなくなるのはお金を借りている銀行の預金口座だけ

例えばA銀行からお金を借りている状態で自己破産をすると、A銀行に開設している預金口座は利用できなくなります。

「利用できなくなる」というのは、預金の払い戻しや口座の引き落としなど一切の取引が出来なくなるということですので、A銀行が給料の振込口座になっている場合は給料が振り込まれても引き出すことが出来なくなってしまいます。

これは、貸したお金を返してもらえないA銀行が、「お金を返してもらえないなら、お前がうちの銀行に作った預金口座をストップして、預金口座に預金しているお金で支払ってもらうぜ!」

といって、預金口座の現金を引き出せない状態(口座の凍結)にして返済金額に充当してしまうからです。

では、お金を借りていないB銀行やC銀行に開設している預金口座はどうなるのでしょうか?

この点、お金を借りていない無関係のB銀行やC銀行の預金口座は全く問題なく利用できます。

借入がない銀行の預金口座は自己破産の申し立てによって利用できなくなるというようなことはありません。

B銀行やC銀行はお金を貸していないので、口座を凍結する必要がない(その権利もない)からです。

 

保証会社が代位弁済すると再び利用できるようになる

前述したように、自己破産の申し立てを行うとお金を借りている銀行の預金口座は凍結され、預金を引き出せなくなったり光熱費の引き落としなどが出来なくなってしまいます。

では、その預金口座が利用できなくなるのはいったいいつまでなのでしょうか?

どれくらい時間が経つと、元のように口座の利用が出来るようになるのでしょうか?

通常、銀行からお金を借りる場合には、その銀行の系列会社が保証会社として契約に絡んでいます。

この保証会社は、銀行が貸したお金を回収できなくなった場合に補填するのが業務なので、例えば前述の例でA銀行からお金を借りた状態で自己破産の申し立てを行うと、A銀行の保証会社であるX保証株式会社が自己破産した人の代わりにA銀行に借金の返済を行います。

そうするとA銀行の借金はゼロになり、A銀行の代わりにX保証株式会社が自己破産した人の債権者となります(これを「代位弁済」といい、お金を借りているのがA銀行からX保証株式会社に変更される状態になります)。

A銀行の借金はゼロになり預金口座を凍結しておく必要性がなくなりますので通常は、A銀行は凍結した預金口座を元の状態に戻すことになります(預金口座が元の状態に戻れば、従来どおり光熱費の引き落としや給料の振込先として利用できるようになります)。

もっとも、保証会社が代位弁済する時期や銀行が口座の凍結を解除する時期はそれぞれの保証会社や銀行の取り扱いによって異なるので、自己破産の申立後すぐに預金口座が復旧するかどうかはわかりません。

早ければ自己破産の申し立てをする前に代位弁済を行い、口座の凍結が解除されることもありますし、遅ければ自己破産の申立後数か月してからしか口座の復旧が認められない場合もあります。

そのため、借入をしている銀行の預金口座を光熱費の引き落としや給料の振込先に指定している状態で自己破産の申し立てを行う場合は、申し立ての前に光熱費の引き落とし口座や給料の振込口座を変更しておくことが肝要です。

【ワンポイントアドバイス】

免責が下りて自己破産の手続が終了した場合は、保証会社の代位弁済の有無にかかわらず、口座の凍結は解除されます。

自己破産の免責が裁判所から出されると、銀行その他の債権者は「お金を返せ!」と主張する法律的な権利を失います。

そのため、銀行側は預金口座を凍結し続ける根拠を失うことになりますから、仮に保証会社が代位弁済をしていない場合であっても口座の凍結をする権利を失い、もとどおりに口座の凍結を解除することになります。

ただし、口座の凍結が解除される時期については各銀行によって異なりますから、気になる場合は銀行に電話して聞いてみたらよいでしょう。

 

自己破産申立中に預金口座を開設することは可能か?

では、自己破産の申立前や申立中に、新たに銀行の預金口座を開設することは可能でしょうか?

お金を借りている銀行の口座を給料の振込先に指定していたり、光熱費の引き落とし口座にしている場合には、自己破産の申立によってその口座は凍結されてしまうので、給料の振込や光熱費の引き落としを別の口座に移動する必要があります。

そのような場合、別の預金口座を新たに開設することはできないでしょうか?

結論はYESです。開設できます。

ただし、お金を借りているのがA銀行の場合は、A銀行については自己破産の債権者となってしまうため、A銀行に開設してもすぐに凍結されてしまう恐れがあります。

そのため、自己破産の債権者とならない(お金を借りていない)別のB銀行やC銀行で開設する必要があるでしょう。

なお、自己破産の手続きが終了した後(免責を受けた後)であればお金を借りていた銀行であっても(同一支店でも)新たに預金口座を開設することは可能です。

免責を受けて自己破産の手続が終了した後は、たとえ同一の銀行から借入があったとしても、免責によって銀行側は「お金を返せ!」と主張する法律的な権利を失います。

そのため、口座を凍結する根拠を失うことになりますから新たに口座を開設することも問題ありません。

【ワンポイントアドバイス】

「自己破産をすると銀行口座を開設できない」と勘違いしている人がいますが、「口座の開設」と、いわゆる「ブラックリストに載ること」は全く概念が別のものです。

自己破産を行うと、信用情報機関に”事故情報”として報告されるため最低5年間はカードローンなど新たな借り入れが出来なくなります(これをいわゆる”ブラックリストに載る”といいます)。

しかし、銀行に預金口座を開設するということは、”銀行からお金を借りる”ことにはなりませんから(口座を開設するということは”銀行にお金を預けること”になるので、逆に”銀行にお金を貸している”状態となります)、いわゆるブラックに載っていたとしても口座の開設は問題なく行えます。

 

支店が違うなら凍結されない?

自己破産申立書の債権者一覧表に銀行を挙げる場合、債権者名の欄にはその銀行の名称と支店名を記載することになります。

債権者一覧表の書き方(2)債権者名の記載方法

例えば、A銀行の東京駅前支店で開設した預金口座を給料の振込口座にしている場合に、そのA銀行の東京駅前支店から銀行のカードローンを利用して100万円借りているとしましょう。

その状態で自己破産すると「A銀行」の「東京駅前支店」を自己破産申立書の「債権者」として記載しなければなりません。

そして、前述のように債権者となった銀行の預金口座は自己破産の申立の際に凍結され利用できなくなりますから、「A銀行」の「東京駅前支店」に開設している預金口座はすべて凍結されることになります。

ここで疑問に思うのが、「A銀行」「東京駅前支店」が債権者となるのなら、たとえば「A銀行」の「秋葉原駅前支店」で開設した預金口座は凍結されないのではないか?ということです。

自己破産の申立書に記載した債権者はあくまでも「A銀行」の「東京駅前支店」であって、同じ「A銀行」ではあっても支店の違う「秋葉原駅前支店」は債権者として挙げていないから、「秋葉原駅前支店」の預金口座は凍結されないのではないか?とも思えます。

この点は、少々微妙なところですが、私の過去の経験上、A銀行のa支店を自己破産の債権者としてあげている場合であっても、直ちにA銀行のb支店の口座が凍結されるということはないと思われます。

銀行は、支店ごとに決済を行っているらしく、支店が異なれば同じ銀行であっても口座を凍結して相殺するということはしないことが多いです。

もっとも、法律上は支店が異なる預金口座であっても、凍結して預金を借金と相殺することも問題ありませんから、前述の例で言えばA銀行の東京駅前支店で借り入れを行っている状態で自己破産の申立を行うと、秋葉原駅前支店に開設している口座が凍結されるということもあり得ます。

また、A銀行の東京駅前支店からお金を借りている状態で自己破産の申し立てを行った場合、東京駅前支店で新しい預金口座を開設することはできませんが、お金を借りていない秋葉原駅前支店で預金口座を開設することも可能と言えます。

しかし、この場合でも秋葉原駅前支店で開設した口座が凍結されないかというとそういうわけでもありませんので注意が必要です。

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