自己破産すると携帯電話は解約されてしまうのか?

借金の返済が滞る人の中には、家賃や光熱費だけでなく携帯電話の使用料も滞納しているという人も少なくありません。

自己破産をする際に携帯電話の料金に滞納があると「携帯電話の契約はどうなってしまうのだろう」と心配になる人は多いのではないかと思います。

そこで今回は、携帯電話の通話料などに滞納がある人が自己破産の申し立てをすると、強制的に携帯電話を取り上げられたり、強制的に解約されたりしてしまうのか、といった点について考えてみることにいたしましょう。

なお、携帯料金の滞納がある場合に自己破産の手続きによって携帯電話が強制的に解約されるか否かは、携帯料金の「通話料」に滞納がある場合と「携帯の機種代金の分割払い分」に滞納がある場合とで若干異なってきますので、それぞれ分けて説明していくことにいたします。

携帯電話の「通話料」に滞納がある場合

(1)原則的な取り扱い

携帯電話の通話料や料金に滞納がある場合は、原則として携帯電話の滞納料金も「負債(借金)」として自己破産の手続きに含めなければなりません。

自己破産の手続きでは、一部の負債(借金)だけを除いて手続きを進めることは禁じられていますので、携帯料金の滞納分も負債(借金)として手続きに含める必要があるからです。

具体的には、申立書の債権者一覧表に「NTTドコモ」や「au」「ソフトバンク」などの携帯電話会社を銀行や消費者金融などと同列に”債権者”として記載することになります。

なお、携帯電話の通話料について自己破産申立書の債権者一覧表に記載する方法についてはこちらのページで解説しています。

≫ 債権者一覧表の書き方(2)債権者名の記載方法

自己破産の”債権者”として携帯電話会社を挙げるということは、自己破産が認められるとその携帯料金の滞納分は自己破産の免責(借金の返済が免除されること)によって支払いが免除される(合法的に踏み倒すことができる)ということを意味します。

そのため、携帯電話会社の側からしてみれば料金を踏み倒すような顧客と契約を継続したくないと考えるのが通常ですから、自己破産の免責が出た時点で強制的に契約が解除されることもあり得る話です。

しかし、自己破産の手続きを規定している「破産法」という法律では、毎月継続的に提供がなされるような契約については、たとえ自己破産の免責によって料金の滞納分が回収できなくなったとしても、その滞納分の回収ができなくなったことを理由に契約を解除することは出来ないと規定されています(破産法55条)。

【破産法55条1項】

破産者に対して継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、破産手続開始の申立て前の給付に係る破産債権について弁済がないことを理由としては、破産手続き開始後は、その義務の履行を拒むことができない。

この破産法55条は、電気・ガス・水道など人の生活に必要不可欠なものを想定して作られた規定であって携帯電話がそれに含まれるかという点については若干の議論の余地があると思いますが、現代社会では携帯電話の所有は社会生活を営む上で必要不可欠な存在といえますので光熱費などに準じて扱ってよいものと考えられます。

そのため、たとえ携帯料金の滞納があり、その滞納分が自己破産の免責によって支払いが免除されたとしても、携帯会社側はそのことを理由として携帯電話の契約を解約することができないと思われます。

以上のように、携帯電話の「通話料」に滞納がある場合には携帯電話の契約が強制的に解約されてしまうという心配は基本的に”無い”と考えて良いでしょう。

※ただし、前述したような法律(破産法55条)をすべての携帯会社が熟知しているとは限らず、顧客の契約を管理する携帯会社の個々の担当者(社員)がそのような法律を理解したうえで処理しているかというとそうではないことも多いので、自己破産の手続き中あるいは手続き後に携帯電話の契約が強制的に解除される可能性は否定できません。

仮に自己破産したことを根拠に携帯電話の契約を解除されてしまった場合には、携帯会社に連絡して破産法55条で携帯電話の契約を解除することは違法であることを説明し理解を求めていくほかないでしょう(※法律に違反して契約を解除した場合の罰則はありませんが、正当な根拠なく解約されてしまうことによって慰謝料などの損害賠償請求ができると考える余地もあります)。

(2)例外的(実務上の)取り扱い

もっとも、上記のように携帯電話の滞納分を自己破産における「負債」として申立を行うのはあくまでも「原則的」に取り扱った場合にはそうなるというだけであって、実務上は携帯電話料金に滞納があってもその金額がよほど高額にならない限り、自己破産の申立前にある程度支払って滞納を解消させてしまうのが通常です。

弁護士や司法書士に自己破産を依頼した場合には債権者は債務者本人に借金の返済を請求することが禁止されますから、弁護士や司法書士に依頼した日以降は債権者に一切返済する必要がありません。

また、弁護士や司法書士が依頼を受けてから裁判所に申立書を提出するまでは債権調査や本人からの聞き取りなどで最低でも2~3か月を要するのが通常ですから、弁護士や司法書士に依頼してから2~3か月の間はそれまで返済に回していたお金の分だけ家計に余裕が出ることになります。

そうすると、その余裕のできた分のお金を使って携帯料金の滞納分を支払ってしまうことができますから、通常は裁判所に申立書を提出するまでの2~3か月間の間に携帯電話の滞納分を全て解消させ、滞納がない状態にしたうえで裁判所に自己破産を申し立てるのが一般的な実務上の取り扱いとなります。

こうしておけば携帯料金の滞納分という「負債」が自己破産の申立時点で存在しないことになり債権者一覧表に携帯会社を「債権者」として挙げる必要がなくなりますので、携帯会社から携帯電話の契約を解約されてしまうリスクがなくなります。

もちろん、このような携帯会社という一部の債権者を特別扱いしてその債権者にだけ返済をしてしまうことは「偏波弁済」として理論上は破産法的に問題になるのですが(※原則的には偏波弁済は免責不許可事由となり自己破産しても借金の返済が免除されないことになります)、実務上は数か月分の携帯料金の滞納分の支払は裁判所も問題にしません。

現在の社会では携帯電話は生活に必要不可欠なツールとなっていますから、僅か数か月分の滞納分も返済することを認めないとしてしまったのでは、その申立人は携帯会社から携帯電話の解約をさせられて携帯電話が利用できなくなってしまうことになり生活に大きな障害を生じさせてしまうことになるからです。

もっとも、滞納分が数年分になったり他の債権者に対する借金に比較して高額になるような場合には裁判所としてもそのようは弁済を問題視する可能性もありますし、担当する裁判官や書記官、あるいは管財事件になった場合の破産管財人の思想や裁判所の方針などによっては滞納分の金額によっては弁済を認めないこともありますので事前に弁護士や司法書士によく相談しておくことが必要でしょう。

 

携帯の「機種購入代金の分割払い分」に滞納がある場合

(1)原則的な取り扱い

前述したように、携帯料金の滞納分がある場合であっても携帯電話の料金(通話料)は「継続的に供給されるものの料金」と考えられますので、たとえ自己破産の免責が認められて滞納分を踏み倒すことになったとしても携帯電話の契約を強制的に解約されてしまうということはないと考えられます。

ただし、これはあくまでも携帯電話の「通話料」に滞納があった場合の話であって、携帯電話の「機種購入代金の分割払い分」に滞納がある場合には、携帯会社が自己破産を理由に契約を強制的に解約することは制限されないものと考えられます。

なぜなら、携帯電話の「通話料」は「携帯電話で通話する」という携帯会社が継続的に提供(供給)するシステムを利用したことに対する料金である点で「継続的給付」の対価と考える余地がありますが、携帯電話の「機種購入代金」は単に購入した携帯電話の機種の代金が分割払いになっているに過ぎず、携帯電話会社が継続的に提供するシステムの対価(継続的給付の対価)とは言えないからです。

前述の破産法55条で保護されるのはあくまでも「継続的給付」に関する契約であって、携帯の機種購入代金は「継続的給付」とは言えませんから、その滞納分が自己破産で免責されてしまった場合には、それを理由に携帯会社が携帯電話の契約を強制的に解約することも認められると考えられます。

そのため、仮に携帯電話の滞納料金に「携帯電話の機種購入代金」や「機種変更代金」などが含まれている場合(機種購入代金が分割払いで毎月通話料と合算して請求されている場合)には、自己破産に伴って携帯電話の契約が強制的に解約(解除)されてしまうこともあると考えておいた方がよいでしょう。

以上のように、携帯電話の契約とはいっても、「通話契約」だけの場合と「機種代金が分割払いになっている契約」の場合とでそれぞれ結論が異なってきますので注意が必要です。

なお、自己破産をすると携帯電話の契約ができなくなってしまうのか、という点についてはこちらのページを参考にしてください。

≫ 自己破産すると携帯電話の契約ができなくなるの?

(2)例外的な取り扱い

もっとも、このように携帯の「機種購入代金の分割払い分」を含む通信料に滞納がある場合に携帯会社を自己破産の債権者として挙げて手続きを進めるのは、あくまでも原則的にはそうなるというだけで、実際の実務においては仮に「機種購入代金の分割払い分」を含む通信料に滞納がある場合であっても携帯会社を自己破産の債権者に含めずに申立をするのが一般的ですから、自己破産を申し立てたことを理由に携帯会社から携帯電話の契約を解除されることはありません。

理由は前述したとおり、実務上は弁護士や司法書士に依頼して裁判所に申し立てをするまでの2~3か月間の間に携帯の料金の滞納分をすべて支払って延滞状態を解消させてしまうのが一般的ですから、実務的には自己破産の申立において携帯会社を債権者として記載することはないからです。

ですから、「機種購入代金の分割払い分」を含む携帯電話の通信料の滞納が数か月間しかないような場合には、携帯電話の契約が強制解約されることはないといえます。

もっとも、前述した携帯電話の通信料の滞納の場合と同様に「機種購入代金の分割払い分」を含む携帯電話の通信料の滞納金額が他の債務と資格して多額にのぼるような場合には、裁判所の方針や裁判官、破産管財人などの考え方によっては滞納分を弁済することが問題にされる場合も有りますので、事前に依頼する弁護士や司法書士よく相談しておくことが必要でしょう。

 


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