債権者一覧表の書き方(11)債務額等が分からない場合の対応

債権者一覧表の基本的な記載手順については(1)~(10)に記載してきたとおりですが、これまでご紹介した記載方法は債権者が債権調査に応じてもらえた場合を想定したものになります。

しかし、債権者の中には債権調査に応じてくれなかったり、そもそも廃業して連絡の取りようがない業者もあったりすることがあります。

このような場合、債権者一覧表にはどのように記載すればよいのでしょうか?

ここでは、債権者が債権調査に応じてくれなかった場合など、借金の額や取引の状況などの詳細が分からない場合の債権者一覧表の作成方法について考えてみたいと思います。

なお、自己破産の他の書類の作成方法についてはこちらの目次ページから必要な書類のページに移動してご確認をお願いします。

自己破産申立書作成マニュアル(目次)

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債務額などの詳細が分からない場合でも、分かる範囲で記載する

債権者が既に廃業して連絡が取れなかったり、取引履歴の開示や債権調査票の返送をお願いしても、協力してくれないというようなことが稀にありますが、そのような場合であっても、債権者一覧表にはわかる範囲で記載するようにしましょう。

「分からないから」といってその債権者を記載しないでおくと、その債権者に対する債務は自己破産の免責が認められても返済義務が免除されませんので、内容が不明でも「この債権者に借金がある」ということを裁判所に申告するために債権者一覧表に記載しておかなければならないのです。

 

分からないところは「不明」と記載する

債権調査をしても内容が全く分からない項目があるところは「不明」と記載して問題ありません。

分からない項目を「空欄」にしてしまうと、裁判所で申立書をチェックするときに「単なる記載忘れ」と判断されてしまう恐れがありますので、「この項目について調査しても分からなかった」ということを裁判所に伝えるために「不明」と記載しておきましょう。

なお、「不明」以外にも「調査したが分からなかった」とか記載しても大丈夫でしょう。

 

少しでもわかる場合は「およそ」や「頃」などの文言を入れて記載する

少しでも内容が判明する場合は「およそ」とか「頃」などの文言を入れて記載しておきましょう。

例えば、「借入・購入等の日」の欄について、債権調査しても債権者から明確な回答が得られなかったが、自分の記憶や預金通帳の入出金履歴からおおよその日付が分かるような場合には「平成○年○月〇日頃~平成〇年〇月○日頃」などと記載しておきます。

 

「不明」や「頃」と記載した項目については別途「上申書」を作成する

前述したように、内容が分からない項目については「不明」や「頃」と記載して問題ありませんが、「不明」や「頃」と記載したままでは裁判所はその債務の内容が「なぜわからないのか」が分かりません。

そこで、債権者一覧表に「不明」や「頃」と記載した項目については、債権者一覧表とは別に「上申書」というものを作成し、そこに「なぜ不明なのか」「どこまで調査したのか」などを記載して提出するようにしましょう。

「上申書」とは、自己破産の申立書に記載する項目を補足するために提出する書類ですが、「上申書」に定められた書式は有りませんので、適宜な様式の書類で構いません。

裁判所の申立書は「A4」の用紙で統一しているようなのでA4の用紙を使っておけば問題ないでしょう。

なお、上申書の記載例についてはこのページの文末に掲載しています。

 

不明な項目がある場合の債権者一覧表の具体的な記載例

以上のことを踏まえて、債務額などが分からない場合の債権者一覧表の具体的な記載例を考えてみると、以下のようになります。

債権者一覧表の記載例

X金融・・・債務額が不明

Yローン・・・最初の借入日が不明

Zクレジット・・・債権者名以外の項目全てが不明

P(兄)・・・債務額・取引期間が不明

番号債権者名住所債務額借入・購入等の日
A銀行*******円***~***
X金融****不明***~***
Yローン*******円〇〇頃 ~***
B信用組合*******円***~***
Zクレジット不明不明不明
****不明不明

上申書の記載例

平成〇年〇月〇日

上申書

申立人 破産太郎 ㊞

債権者一覧表に「不明」等と記載している項目について

1.X金融について

債権者番号2番のX金融の債務額を「不明」と記載しておりますが、これは平成〇年〇月〇日、申立書作成のためX金融に債権調査を依頼しましたが、申立書提出日までにX金融より債権調査票の返送が得られなかったことによるものでございます。
同年〇月〇日にX銀行に問い合わせしたところ、〇月〇日までには提出いただけるという回答がございましたので、債権調査票が届き次第裁判所に提出する予定にしております。

2.Yローンについて

債権者番号3番のYローンの最初の取引日を「〇〇頃」と記載しておりますが、これはYローンに債権調査を依頼したところ、Yローンでは平成〇年以前の取引履歴については全て廃棄処分にしているということで正確な年月日が分からなかったことによるものでございます。

自分の記憶ではYローンの借入は平成〇年〇月頃だったと記憶しておりますので、「〇〇頃」と記載しております

3.Zクレジットについて

債権者番号5番のZクレジットの項目を全て「不明」と記載しておりますが、これはZクレジットは既に貸金業を廃業しており債権調査をすることが出来なかったことによるものでございます(※以前送付されていた請求書の住所に債権調査の依頼書と債権調査票を同封して送付しましたが宛先不明で返送されました)。

なお、平成〇年〇月〇日、東京都庁の金融課(電話番号03-****-****、担当者〇〇氏)に問い合わせしたところ、貸金業の廃業日は「平成〇年〇月〇日」、廃業時の住所は「東京都品川区***」、廃業時の登録番号は「東京都知事(5)第****号」ということでございました。

4.Pについて

債権者番号6番のPの住所以外の項目を全て「不明」と記載しておりますが、これは実兄であるPに債権調査を依頼したところ、「兄弟の縁は切ったから自己破産でもなんでもやってくれ、債権調査など協力するつもりはない」との返答により債権調査の協力が得られなかったことによるものでございます。

以上

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