自己破産の添付書類(4)退職金に関する書類

自己破産の申立書には、退職金を証明する書類を添付する必要があります。

退職金は、すでに受け取っている場合だけでなく、まだ受け取っていない場合であっても退職時に受け取ることになっている場合には、将来的に確実に資産となる見込みのあるものと言えますので、「資産」として自己破産の申立の際に裁判所に申告しなければならないことになっています。

資産説明書(目録)の作成手順(6)退職金の欄の記載方法

そして、その受け取った(または受け取る予定の)退職金の金額が何円になるかということを裁判所が把握しなければならないことから、退職金に関する書類が自己破産申立書の添付書類となっているのです。

もっとも、退職金を証明する書類といっても、退職金を受け取った「後」か受け取る「前」かで必要となる証明書に若干の違いが出てきます。

そこで、ここでは自己破産申立書に添付が必要となる退職金を証明する書類の取得方法などについて考えてみたいと思います。

なお、自己破産申立書の作成方法についてはこちらの目次ページから必要な書類のページに移動してご確認をお願いします。

自己破産申立書作成マニュアル(目次)

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退職金に関する証明書が必要となる場合

勤務している(または勤務していた)会社に退職金制度がある場合だけでなく、退職金制度がない場合にも、退職金に関する書類の添付(提出)が必要となります。

退職金制度のある会社に勤務している場合は、退職金を既に受け取っている場合だけでなく、退職前の段階であっても(退職前に自己破産する場合など)退職金に関する書類が必要となりますので注意してください。

ただし、勤続5年未満やパート・アルバイトの場合には、たとえ勤務している会社に退職金制度がある場合であっても、退職金に関する証明書の添付(提出)は必要はありません。

これは、勤続5年未満やパート・アルバイトの場合は退職金が支払われることはないと考えられるので、自己破産の手続き上は退職金に関する証明は不要とされているためです。

なお、後述しますが、努めている会社に退職金の制度自体が存在しない場合は「退職金がないことを証明する書類」の提出が必要となります。

 

退職金をすでに受け取っている場合

自己破産の申し立てをする段階で既に会社を退職し、退職金をすでに受け取っている場合は、退職金を受け取ったときに発行してもらった退職金支払い明細書を添付(提出)します。

退職金支払い明細書は公的な機関が発行する証明書ではありませんので、原本ではなく写し(コピー)を添付(提出)すればOKです。

退職金支払い明細書を受け取ったが紛失してしまったというような場合は、務めていた会社に連絡して再度発行してもらうほうが良いでしょう。

それができないような場合は、退職金が振り込まれた銀行通帳の写し(コピー)など、受け取った退職金の金額を証明することができるような何らかの書類を添付するしかないでしょう。

そのような書類をすべて紛失し、何の書類も提出することができないような場合は、上申書を作成して退職金支払い明細書を紛失した経緯や再発行が受けられない事情を裁判所に説明するしかないでしょう。

 

退職金制度はあるがまだ受け取っていない場合

退職金の見込額証明書

務めている会社に退職金制度はあるが、まだ勤続中で退職金を受け取っていないような場合は、「退職金の見込額証明書」を添付(提出)します。

「退職金の見込額証明書」とは、退職した場合にいくら退職金が支給されるかを証明する書類で勤務先の会社が発行する書類です。

「退職金の見込額証明書」は、通常は経理や総務に頼めば発行してもらえるはずですが、「ひな型がないから発行できない」などと言われる場合は、こちらのページで公開しているひな型をワードなどの文書作成ソフトで作成し、記入してもらってください。

≫ 退職金の見込み額に関する証明書のひな型

 

退職金規定の記載されている就業規則

「退職金の見込額証明書」を発行してもらうように会社に頼むと、「何に使うんですか?」と詮索されて、自己破産することがばれてしまうような恐れもあるかもしれません。

そのような心配がある場合には、「退職金の見込み額を算出できる計算式などが書かれた就業規則」の写し(コピー)を添付(提出)してもかまいません。

退職金が支給される会社では、必ず就業規則に退職金がいくら支払われるかなどが記載されているはずです。

一般的には、勤続○年で○万円とかいう表形式になっていたり、退職金を算出するための計算式が記載されていたりしますので、その部分の就業規則をコピーして提出すればOKでしょう。

なお、就業規則のコピーもとれないような場合は上申書を作成して就業規則のコピーもとれないという事情を説明するしかないでしょう。

ちなみに、常時10人以上の労働者を使用する使用者(会社)は就業規則を作成し労働基準局(監督署)に届け出を出さなければなりません。
そして、労働基準局に届け出を出した際にはその控えが使用者(会社)に渡されているはずですので、会社に就業規則の控えが必ずあるはずです。
また、使用者(会社)は就業規則を労働者(従業員)に周知させることが法令で義務づけられており(労働基準法106条)、

①就業規則を常時みやすい場所に掲示するか備え付ける
②労働者(従業員)に就業規則を書面で交付する
③就業規則をPCなどで自由に閲覧できるような状態にしておく

の3通りの方法のうちいずれかの方法で就業規則を常時確認できるようにしておかなければなりません(労働基準法施行規則52条の2)。

そのため、法令上は会社に「就業規則を見せてください」と頼まなくても、自由に確認できる状態にしてあるはず(※あくまでも法令上の話です)なので、就業規則をコピーできないとか、確認できないといったことは本来あり得ないことになっています。

なので、もしも就業規則の確認ができないような会社であれば、その会社は労働基準法に違反しているといえる状態にありますが、そのような会社であることを理由に就業規則の確認ができないような状態であるならば、最終手段として上申書を作成して裁判所に就業規則の添付ができないことを説明するしかないでしょう。

 

退職金制度がない場合

退職金制度がない会社の場合には、「退職金がない」という証明書の提出が必要となります。

具体的には、会社の総務部や経理の人にお願いして「退職金がないことの証明書」を発行してもらい、その証明書を提出することになります。

もっとも、「会社に対して「退職金がないことの証明書」を発行してください。」とお願いすると、「何に使うの?」と詮索されて勤務先に自己破産することがバレてしまう可能性もあります。

そのような心配がある場合や、会社が「退職金がないことの証明書」を発行してくれないような場合は、就業規則などの「給与」に関する規定の部分をコピーして提出します。

通常、退職金制度がない会社の場合は、就業規則などの「給与」に関する規定の部分に「退職金の支払いはない」などという文言が記述されていると思いますので、その部分の就業規則を提出することで「退職金がない」ということの証明になります。

※前述したように、常時10人以上を雇用する事業所では就業規則の作成が義務付けられており、従業員に交付するか見やすい状態にしておかなければならないと法律で定められていますので(労働基準法106条)、就業規則は誰でもコピーを取ることができるはずです。

なお、勤務先の会社が「ひな型がないから証明書は出せない」などと言う場合は、こちらのページで「退職金の制度がない旨の証明書」のひな型を公開していますので、ワードなどの文書作成ソフトで作成して会社に記名捺印してもらってください。

≫ 退職金の制度が無いことの証明書のひな型

※退職金制度はあるけれども、その時点で退職金の受給資格がないという場合(勤続年数が少なくその時点での退職金支給額が0円の場合)には、前述した「退職金見込額証明書」の「支給額」の欄に「0円」と記載してもらえばよいでしょう。

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