ヤミ金や振り込め詐欺の被害者が、ヤミ金などの犯罪者集団の利用する預金口座にお金を振り込んだ場合には、「被害回復分配金」の支払い申請をすることで、振り込んだお金が戻ってくる場合があります。
この被害回復分配金の支払い申請は、犯罪に利用されていることを理由に凍結された預金口座について行うことができるもので、申請する場合は申請書に必要事項を記載して、対象となる銀行に郵送しなければなりません。
そこで、ここではヤミ金や振り込め詐欺にお金を振り込んでしまった場合に利用される被害回復分配金の支払いを申請する方法について解説していくことにいたしましょう。
振り込め詐欺救済法に基づく被害回復分配金の支払手続とは
まず、前置きとして「振り込め詐欺救済法に基づく被害回復分配金の支払手続」の説明を行っておきましょう。
この「被害回復分配金の支払い手続」とは、ヤミ金や振り込め詐欺の被害者(お金を振り込んだ人)が、騙されたり脅されたりして振り込んだお金を取り戻す手続きのことをいいます。
具体的には、まずヤミ金や振り込め詐欺のグループが使用している預金口座を凍結し、入出金ができないような状態にします。
その後、預金保険機構という国の機関が、「この凍結した預金口座にお金を振り込んだ人はいませんか?」という公告を出し、一定の期間その口座にお金を振り込んだ人が名乗り出てくるのを待ちます。
公告期間となる一定期間が経過したら、その口座にお金を振り込んだと名乗り出た人全員に、その口座に預け入れてあるお金をその振り込んだ金額の比率に応じて分配されることになります。
通常は、口座が凍結される前にヤミ金や振り込め詐欺のグループがお金を引き出しているため数百円~数千円程度の残高しか残っていないことが多く、分配されるお金も実際の被害額には満たないことが多いのが現状です。
しかし、稀に数十万円残されている口座もありますし、お金を振り込んだと名乗り出る人が自分しかいない場合には分配されるお金も多くなることがありますから、支払い申請をしないよりはする方が良いと思われる手続きとなっています。
1 お金を振り込んだ預金口座が凍結されているか確認する
被害回復分配金の支払い申請を行うためには、その対象となる預金口座が凍結(強制的に入出金ができない状態になっていること)されていることが必要です。
そこで、まず自分がお金を振り込んだ銀行口座が凍結されているかいないか確認することが必要です。
口座が凍結されているかは、預金保険機構のサイトで確認することが可能です。
口座が凍結されていないような場合は、そのままでは被害回復分配金の支払い申請はできませんので、対象となる預金口座の銀行に対してその口座が犯罪行為に利用されていることを電話や書面で通知し、口座を凍結して貰う必要があります。
2 被害回復分配金の支払申請書を作成する
被害回復分配金の支払申請書のひな形のダウンロード方法
被害回復分配金の支払い申請は、実際にお金を振り込んだ銀行(支店ではなく本店に専属部署がある場合が多い)に郵送で行うことが多いです。
申請書のひな形は預金保険機構のサイトの振り込め詐欺救済法に基づく公告のページの左側にある支払申請書等のダウンロードのページからダウンロードすることが可能ですので、各自ダウンロードしてプリントアウトしておきましょう。
被害回復分配金の支払申請書への記入のしかた
被害回復分配金の支払申請書は記載する欄が多くて、どこに何を記入すればよいか分かりづらいかもしれませんが、実際に記入が必要となる欄は、特別な事情がない限り主に次の3カ所だけです。
1項目目の「申請人」の欄
3項目目の「被害等に関する情報」の欄
4項目目の「被害回復分配金の支払いを受けるために必要な情報」の欄
「申請人」の欄の書き方
申請人の欄には、自分の住所と電話番号、氏名と生年月日を記載すればOKです。
「被害等に関する情報」の欄の書き方
被害等に関する情報の欄は「公告番号」「振込先の口座名義人」「被害額」「被害にあわれた状況」の4つの項目を記載しなければなりません。
「公告番号」
広告番号の項目には、預金保険機構のサイトの振り込め詐欺救済法に基づく公告のページで凍結された口座を検索した際に表示される凍結された口座の「公告の種類」の欄に記載されている「****-****-****」と表示されている12ケタの数字を記載します。
「振込先の口座名義人」
振込先の口座名義人の欄には、お金を振り込んだ口座の名義人の名前を記載します。
また、ヤミ金の名前が分かる場合は、そのヤミ金の名前も併せて記載しておきます。
例えば、「ホンダ」というヤミ金が指定する「X銀行 △支店 普通預金 口座番号1234567 口座名義人:ヤマダタロウ」の預金口座に返済金を振り込んでいるような場合は「口座名義人:ヤマダタロウ ヤミ金の名前:ホンダ」などと記載すればOKです。
「被害額」
被害額の欄には、ヤミ金などに実際に振り込んだ金額を記載します。
たとえば、前述の例でヤミ金の「ホンダ」から10万円を借り入れ、3万円を5回にわたってヤマダタロウ名義の口座に振り込んでいる場合は「150,000円」と記載しておけばOKです。
【法的な「被害額」と被害回復分配金支払申請における「被害額」の違い】
出資法の上限金利(年20%)を大幅に超える高金利で貸付を行っているヤミ金に対しては元利金の一切を支払う必要がありませんので、この事例では「法的」には振り込んだ15万円の全てが被害額と考えられます。
しかし、被害回復分配金の支払申請においては、基本的に実際に被害が発生している金額を「被害額」として認定する傾向が多くみられます。
例えば、この事例では実際に振り込んだ15万円全てではなく、実際に振り込んだ15万円からヤミ金から受け取った10万円を差し引いた残りの5万円が、「被害額」として認定されることが多いです。
そのため、この事例で被害額を「15万円」と記載しても、後で銀行から電話が入り、「実際に損をしているのは5万円だから被害額は5万円になります」といわれたり、場合によっては申請書の書き直しなどを求められる場合もあります。
もっとも、銀行によっては、法的に権利のある振り込んだ金額の全額(この事例では15万円)を被害額として認定してくれる場合もありますので、このページの記載方法では振り込んだ額の全額を記載することとしてご紹介しています。
「被害にあわれた状況」
被害にあわれた状況の欄には、ヤミ金との取引を時系列で記載しておけばOKでしょう。
具体的には、前述のヤミ金の「ホンダ」との取引を記載すると次のような記載例となります。
平成〇年〇月ごろ、○駅前の電柱に貼ってあった090金融の広告を見て、広告に記載してある090-****-****の番号に電話し、「ホンダ」と名乗る人物から、1週間で3万円の利息(1週間後の3万円支払えばさらに1週間返済期間が延びる)という約束で金10万円を借り入れ(自分の口座への振込)、金3万円を同年〇月○日、同年〇月○日、同年〇月○日、同年〇月○日、同年〇月○日の計5回にわたってホンダの指定するヤマダタロウ名義の口座に振り込んだ。 |
「被害回復分配金の支払いを受けるために必要な情報」
「被害回復分配金の支払いを受けるために必要な情報」の欄には、被害回復分配金が支払われる場合の、その分配金の受取口座を記載します。
具体的には、自分名義の銀行口座を記載しておけばOKです。
被害回復分配金の支払申請書の記載例
被害回復分配金の支払申請書の書き方については上記に記載したとおりですが、上記の説明で分からないという人は、楽天銀行のサイトで記載例をダウンロードすることができますので参考にしてみてください。
≫振り込め詐欺被害の救済について | セキュリティ | 楽天銀行
なお、この楽天銀行のページでは「振り込め詐欺救済法に基づく被害回復分配金の支払手続」の全体の流れなども分かりやすく説明してありますので、一度見ておくとよいと思います。
申請書を銀行に郵送する
上記の手順で被害回復分配金の支払申請書が作成できたら、銀行の指定する係りに郵送しましょう。
郵送先の住所は、申請書を受け取る際に指定されている場合はそこに郵送すればいいと思いますし、わからない場合はその銀行に直接電話して聞いてください。
支払申請書を郵送後、早ければ3か月程度で自分の口座に分配金の振り込みがなされますが、分配金が無かったり(凍結された口座の残高が1000円未満の場合は分配手続きがなされません)被害金額が認定されなかったような場合には、分配金の送金がなされないこともあります。